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君恋ふる10




事務所から出ていこうとしている彼女が視界に入った。

「キョーコちゃ~ん」

社さんが、彼女に呼びかけると、こちらを振り向いて無邪気にニッコリと笑う。

俺と目があうと、はにかんでうっすらと頬を染める彼女が可愛らしい。

「どこ行くの?」

彼女に駆け寄った社さんが、聞いていた。

「こんにちは、敦賀さん、社さん。モー子さんとTV局で待ち合わせしているんです」

「あぁ、そういえば、今日は琴南さんと一緒にTV局を回る日だったね」

この前マリアちゃんに頼まれた例の件かと思いだした。

「だったら今から蓮も行くから、乗せていって貰えばいいよ」

社さんが自然に彼女を誘った。

「でも………ご迷惑ですよ」

そうやってすぐ遠慮してしまうところも以前のままの彼女だった。

「そんなことないよ。行先は同じなんだから、送るよ」

彼女に笑いかけたら真っ赤になって俯いてしまった。

そんな彼女と俺の顔を見比べた社さんが、変に気をまわして言った。

「蓮、キョーコちゃんと先に行ってて。俺まだ用事があるから、後から行くよ」

そして社さんは、そそくさとその場を後にした。

そんな社さんに唖然としたが、彼女を促して駐車場に向かった。



運転席に乗り込もうとしたら、車の前でもじもじと恥じらって、彼女はなかなか助手席に座ろうとしなかった。

「どうしたの?」

不審に思って問いかけると、彼女はハッとしたように俺を見て、そしてまた真っ赤になって俯いた。

こないだのことが尾を引いているんだろうか。

彼女に嫌がられているんじゃないかと心配になってきた。

「乗らないの?」

「えっと………お邪魔します」

小さく呟いて、彼女がためらいがちに助手席に座った。

少なくとも嫌われているわけではなさそうだと思った。

エンジンをかける前に気になったので彼女に聞いてみた。

「様子が変だけど、どうかしたの?」

「え?そ、そうですか?」

どことなく落ち着きがなく見えた。

「そういう態度気になるよ?こないだのこと怒ってるの?」

「ごめんなさい。怒るだなんてとんでもないです。敦賀さんの方が怒ってらっしゃるんじゃ?」

「じゃあどうして?」

「敦賀さんの笑顔怖いんですけど………」

記憶をなくしていても、俺の機嫌には敏感らしい彼女に苦笑してしまう。

「怒ってないよ」

彼女に笑いかけたら、彼女もホッとしたように笑った。

「あ、あの。記憶をなくす前の私って、よく敦賀さんの車に乗せてもらってたんですか?」

唐突な質問に面喰いつつも返事をした。

「社さんの代マネしてもらったこともあるし、同じドラマに出てたりしたしね。何度か一緒に移動したことあるよ」

事実を端的に述べたのに、彼女は不思議そうにしていた。

「それって敦賀さんと二人きりで車に?」

彼女の言葉が気になってしまった。

「もしかしてキョーコちゃん、俺と二人っきりっていうのが嫌なの?」

こないだ抱き締めたのがいけなかったのか?

彼女が俺から遠ざかってしまうようで不安になった。

「え………嫌って言うんじゃなくてですね………車の中に二人っきりって言うのが………私には経験がないので、恥ずかしいというか、照れ臭いというかですね………落ち着かないんです」

もしかして、今俺は異性として意識されているのか?

記憶をなくす前にはそんなことを仄めかされた事もなかったので、ちょっと期待してしまった。

「俺と二人っきりって嫌?」

「そんなことはありません」

落ち着かないというから、ちょっと不安になったことを聞いてみると、即座に否定の言葉が返ってきて安心した。

「敦賀さんは、いつも親切にして下さって感謝してるんです。ありがとうございます」

真面目にお礼を言う彼女に微笑んで、車を走らせた。




琴南さんと待ち合わせしているという場所まで彼女を送って行った。

照れながら俺の横を歩く彼女に、愛しさが募る。

待ち合わせの場所で立っている琴南さんの近くを通り過ぎようとしている人物が視界に入って、不快になった。

TV局だから仕方のない事とは言え、どうしてここであんな奴に会うんだ。

琴南さんも、彼女とあいつを会わせたくないらしい。

こちらに気付くと走ってきた。

このままあいつに気付かれずに済むかと思っていたのに………

「モー子さん、敦賀さんに送ってきてもらっちゃった」

彼女がはにかんで琴南さんに話しかけると、彼女の言葉にあいつが振り返った。

琴南さんも、しまったという顔をしている。

俺達の葛藤には気付かずに、彼女は琴南さんに無邪気に笑いかけていた。

「よぉ、キョーコお前記憶喪失なんだってな」

不破が彼女に問いかけた。

彼女は不破のことも覚えてないようで、不思議そうにしている。

マリアちゃんの一言が聞いているのか、琴南さんと俺の顔を窺うように見つめてきた。

「やぁ、不破君。彼女は君のことも覚えていないようだけど、不可抗力だから問い詰めないでやってくれないか」

琴南さんは、不破から彼女を守るように不破から距離をとるように彼女を誘導していた。

「恋人の俺のことも忘れたのか?」

何を言い出すんだこいつは!

自分で彼女を捨てておいて勝手な事を言う不破に猛烈な怒りがわいてきた。

敦賀蓮の仮面もかなぐり捨てそうになった。

それでもTV局でほかに人目もあることなので、必死になって耐えた。

「キョーコちゃんに恋人がいたなんて聞いた事がないね」

「そりゃぁ~ただの先輩には報告する義務なんてないでしょ」

不破が不敵に笑う。

記憶のない彼女を丸め込んで、彼女を自分の元に戻そうというのか?

そんな事は許さない!

「キョーコの親友の私もそんな話は聞いた事がないわよ」

琴南さんが不破を睨みつける。

「俺は今、恋人のキョーコと話してるんだよ。ただの先輩も親友も普通だったら席を外すのがマナーってもんじゃないのか?」

不破が彼女に近寄ろうとするから、不破と彼女の間に割って入った。

琴南さんも、不破から彼女を隠すように立っている。

「普通の状態だったら遠慮するけどね。記憶がないキョーコちゃんを嘘つきと二人きりにさせるわけにはいかないからね」

不破を睨みつけていたら、上着の裾が引っ張られた。

振り向くと、彼女が俺の上着を掴んでいた。

不穏な空気が怖いのか?

彼女は琴南さんの上着も掴んでいた。

安心させるように彼女に笑いかけた。

「あの方の言われること本当なんですか?」

「嘘に決まってるでしょ。あんたの記憶がないからからかわれてるだけじゃない」

彼女の問いに、琴南さんが即答する。

「だから親友でも知らないだけだろってさっきから言ってるじゃないか」

琴南さんが、彼女の耳に何か囁くと、彼女はバックから携帯を取り出した。

あれは………オートロックが解除出来なくて使えない方じゃなかったのか?

「ほんとに恋人だったら、キョーコの携帯でやりとりしてるはずよね。だったら電話かけてみなさいよ」

琴南さんの言葉に、不破は勝ち誇ったように笑ってポケットから携帯を出すと、どこかに電話をかけ出した。

そして、彼女の手の携帯が震えだした。

琴南さんが携帯を彼女から取り上げて開いてみると、非通知になっていた。

「もしもし………」

「ほれ、かけたぜ」

目の前でニヤリと不破が笑った。

君は………いつの間に不破と電話をするような間柄になってたんだ?

思わず彼女を疑ってしまった。

「メールは?恋人だったら、メールだってやりとりしてるはずよ」

琴南さんも今起こったことが信じられないようだった。

琴南さんの一言に不破の顔から笑みが消えた。

「メールはキョーコが使えないから送らねぇんだよ」

その一言に、彼女が自分で番号を不破に教えたわけじゃないと確信出来た。

不破とは対照的に、琴南さんが不敵に笑った。

彼女に携帯を返すと、自分の携帯をバックから取り出して、メールの受信記録を開いて見せた。

受信ボックスに連なる名前は「最上キョーコ」。

これ程親友の彼女にメールを送ってきている彼女が、仮にも恋人だったらメールを貰わないわけがない。

琴南さん程ではないけれど、俺だって彼女からのメールはもらったことがある。

「残念だったね、不破君。君の演技はまだまだ役者の俺達を騙せる程じゃなかったみたいだね」

俺が笑って告げると、不破は舌打ちして立ち去って行った。

この先も今の不破のように彼女に言いよってくる奴がいるかもしれない。

いつも今みたいに庇ってあげられるとは限らない。

彼女が心配になった。

琴南さんが自分の携帯を開いて彼女に言い聞かせていた。

「いい?キョーコ。ほんとにキョーコの恋人だったら、ほら私の携帯みたいに、キョーコから電話がかかってきてたり、メールが送られてきてたりするのよ。こうやって見せて貰えばわかるでしょ?だから今みたいなこと他の誰かに言われたら、今と同じように聞いてみなさい。こっちの電話に電話かけてメールしてみてって」

彼女が俺を見上げてきたので、俺も携帯を開いて彼女に見せた。

彼女からメールが送られてきた事実があることを彼女に見せることで、マリアちゃんの『信頼して大丈夫』って言葉の証拠になると思ったから。

自分が送った証を見て、彼女は琴南さんと、俺にほんとにうれしそうに笑った。

その無邪気な笑顔につられるように、俺も彼女に微笑みかけた。

9へ   つづく

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Re: No title


さらさんも一緒に守ってもらえたら、心強いと思います。
するどいつっこみにちょっとドキッとしちゃいました(^_^;)
チズさんのお話素敵だったでしょ?≧▽≦
おねだりしてよかった♪
そんな嬉しいお言葉頂いちゃうと、何度もおかわりしちゃいますよ?w
リンクはお好きになさってくださいね〜
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