スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

君恋ふる11

キョーコ

「メモよし、お財布よし、携帯よし!」

バックの中をチェックして、ラブミー部の部室を出た。

事務所から出て行こうとした所で名前を呼ばれた。

「キョーコちゃ~ん」

声が聞こえてきた方向に振り向くと、社さんが手を振っていた。

社さんの後ろには敦賀さんの姿も見えた。

敦賀さんと目があって優しく微笑まれると、こないだのことを思い出して、頬がほてってきた。

よかった……怒ってはいらっしゃらないみたい。

「どこ行くの?」

「こんにちは、敦賀さん、社さん。モー子さんとTV局で待ち合わせしているんです」

社さんに問いかけられて、挨拶をして、これからの予定を答えた。

「あぁ、そういえば、今日は琴南さんと一緒にTV局を回る日だったね」

社さんが得心がいったという感じで頷いた。

「だったら今から蓮も行くから、乗せていって貰えばいいよ」

社さんは、当たり前のことのように言った。

一人でTV局に行くのは心細かったし、すごく緊張していたけど、でも、それはあまりにも図々しいわよね?

「でも………ご迷惑ですよ」

「そんなことないよ。行先は同じなんだから、送るよ」

私の言葉を、敦賀さんはすぐに笑って否定してくれた。

敦賀さんの笑顔はとっても眩しくて、見つめていられなくて俯いてしまった。

頬が熱い。

「蓮、キョーコちゃんと先に行ってて。俺まだ用事があるから、後から行くよ」

社さんはそう言ったかと思うと、唐突に走り去って行った。

あんなに急いでたのに、私のことまで気遣ってもらって、申し訳なさと、感謝の気持ちでいっぱいになった。

社さんの背中を見送って、敦賀さんに促されるままに駐車場に向かった。





敦賀さんの車の前まで来て、車に乗るのを躊躇してしまった。

この車に乗るのは、敦賀さんと私だけなのよね………?

車の中で敦賀さんと二人きりなんて何を話せばいいのかしら。

あ、でも、話しかけると敦賀さんの運転の邪魔になるのかしら。

それにしても運転席と助手席ってすごく近くて、車の中なんだから当たり前なんだけど、敦賀さんとこんなに近くに座るのって、近すぎるというか………

「どうしたの?」

敦賀さんに、問いかけられて、私が乗らないと車を出せないことに気がついた。

こないだは抱きしめられといて、こんなこと考える私がおかしいのかしら?

「乗らないの?」

「えっと………お邪魔します」

小さく呟いて、ためらいがちに助手席に座った。

「様子が変だけど、どうかしたの?」

敦賀さんが、探るように見つめてきた。

「え?そ、そうですか?」

「そういう態度気になるよ?こないだのこと怒ってるの?」

笑顔なんだけど、なんとなく敦賀さんが不機嫌になったように感じた。

さっきは怒ってらっしゃらないと思って安心してたけど、社さんがいたから怒りを面に出さなかっただけかしら?

まだ謝っていなかったことを思い出し、慌てて謝った。

「ごめんなさい。怒るだなんてとんでもないです。敦賀さんの方が怒ってらっしゃるんじゃ?」

「じゃあどうして?」

笑顔で問われてるのに、すごく怒っているようで怖かった。

「敦賀さんの笑顔怖いんですけど………」

「怒ってないよ」

そう言った時の敦賀さんは、とても優しく笑っていて、怒っていないというのが感じられてホッとした。

敦賀さんは、私が助手席に座ってても何とも思わないのかしら?

私はこんなに落ち着かないのに………

そう思ったら聞かずにはいられなかった。

「あ、あの。記憶をなくす前の私って、よく敦賀さんの車に乗せてもらってたんですか?」

敦賀さんは、私の唐突な質問に不思議そうにしつつも答えてくれた。

「社さんの代マネしてもらったこともあるし、同じドラマに出てたりしたしね。何度か一緒に移動したことあるよ」

今の私には初めてだけど、以前も乗せてもらったことがあったんだ………

「それって敦賀さんと二人きりで車に?」

「もしかしてキョーコちゃん、俺と二人っきりっていうのが嫌なの?」

どうしてそう思うのかしら。

いつも優しくしてくれる人を嫌がる人なんていないと思うのだけど。

私が嫌がってるように見える態度とってるのかしら?

「え………嫌って言うんじゃなくてですね………車の中に二人っきりって言うのが………私には経験がないので、恥ずかしいというか、照れ臭いというかですね………落ち着かないんです」

「俺と二人きりって嫌?」

「そんなことはありません」

どんなに今は落ち着かなくても、敦賀さんの傍もマリアちゃんの傍にいる時のように、心地いいんだもの。

「敦賀さんは、いつも親切にして下さって感謝してます。ありがとうございます」

敦賀さんは、優しく微笑んでくれた。





ついでだからと、待ち合わせの場所まで送ってもらった。

本当は、右も左もわからない場所で心細かったのを見透かされているような気がして、ちょっぴりくすぐったいのと、嬉しいのとで、何て表現していいのかわからなくて、お礼を言うのが精一杯だった。

敦賀さんの後ろを少し遅れて歩いていたら、敦賀さんは時々振り返って立ち止った。

「迷子になるんじゃないかと心配だから、隣を歩いてくれない?」

優しく微笑んで言われて頷いたけど、その笑顔が眩しくて、顔が見られなかった。

視界の先にモー子さんを見つけた時はホッとした。

モー子さんがいなかったら、一人で待ってないといけないと思ってたから。

送って連れてきてもらって、その上「モー子さんが来るまでいて下さい」なんて言えないもの。

モー子さんが駆け寄ってくるのが見えた。

「モー子さん、敦賀さんに送ってきてもらっちゃった」

甘えすぎだと怒られるかしら?

自分が甘えてる自覚があって、照れくさかった。

「よぉ、キョーコお前記憶喪失なんだってな」

突然話しかけられて、声がした方を向くと、派手な格好をした人がニヤニヤしながら立っていた。

誰?

私の知り合いだったのかしら?

敦賀さんとモー子さんを見つめたら、二人とも険しい顔をしていた。

どうしてこんなに険しい顔をしているのかしら?

「やぁ、不破君。彼女は君のことも覚えていないようだけど、不可抗力だから問い詰めないでやってくれないか」

敦賀さんの背中に隠れるように、そっとモー子さんに腕を引かれた。

「恋人の俺のことも忘れたのか?」

そういうその人の顔は、とても大事な存在を見つめているようには見えなかった。

「キョーコちゃんに恋人がいたなんて聞いた事がないね」

笑っているのに、敦賀さんから光の矢が飛び出ているような気がした。

「そりゃぁ~ただの先輩には報告する義務なんてないでしょ」

「キョーコの親友の私もそんな話は聞いた事がないわよ」

「俺は今、恋人のキョーコと話してるんだよ。ただの先輩も親友も普通だったら席を外すのがマナーってもんじゃないのか?」

その人の言葉は、今の私にはとても大事なことを教えてくれた。

ホントに私はここにいたんだ………

『先輩』の敦賀さんと、『親友』のモー子さんのいるこの場所に………

「普通の状態だったら遠慮するけどね。記憶がないキョーコちゃんを嘘つきと二人きりにさせるわけにはいかないからね」

記憶を無くす以前の私も、こんな風に『先輩』や『親友』に甘えて過ごしていた?

そう思ったら、敦賀さんとモー子さんの存在にホッとして、二人の上着の裾を掴んでいた。

「あの方の言われること本当なんですか?」

「嘘に決まってるでしょ。あんたの記憶がないからからかわれてるだけじゃない」

からかってるだけ………なんだ、よかった。

「だから親友でも知らないだけだろってさっきから言ってるじゃないか」

「オートロックが解除出来なくて、使えない携帯今も持ってるならバックから出してみて」

モー子さんに囁かれて、すぐに携帯を取り出して見せた。

携帯2つ持っているなんて、贅沢で分不相応な感じはするのだけど、今は使えないこの携帯は、私の大事なものだった。

オートロックが解除出来たら、自分の記憶も戻るんじゃないかと思って、お守り代わりに持ち歩いていた。

「ほんとに恋人だったら、キョーコの携帯でやりとりしてるはずよね。だったら電話かけてみなさいよ」

しばらくすると、手の中の携帯が、着信を知らせて震えだした。

モー子さんはすぐに携帯を取って、恐る恐るといった感じで電話に出た。

「もしもし………」

「ほれ、かけたぜ」

目の前の人はニヤリと笑った。

「メールは?恋人だったら、メールだってやりとりしてるはずよ」

呆然としていたモー子さんが、その人の言葉に弾かれたように問いかけた。

「メールはキョーコが使えないから送らねぇんだよ」

その人は少し焦ったように言った。

モー子さんは私に携帯を返してくれると、自分の携帯を取り出して、メールを開いて見せてくれた。

受信ボックスに連なる名前は『最上キョーコ』………これって私よね?

「残念だったね、不破君。君の演技はまだまだ役者の俺達を騙せる程じゃなかったみたいだね」

その人が舌打ちして立ち去ると、モー子さんに言われた。

「いい?キョーコ。ほんとにキョーコの恋人だったら、ほら私の携帯みたいに、キョーコから電話がかかってきてたり、メールが送られてきてたりするのよ。こうやって見せて貰えばわかるでしょ?だから今みたいなこと他の誰かに言われたら、今と同じように聞いてみなさい。こっちの電話に電話かけてメールしてみてって」

私はモー子さんの携帯を凝視していた。

メール……受信ボックスに連なっている名前『最上キョーコ』……私、こんな風にモー子さんと交流があったんだ………

さっきのあの人の言葉は、私がここにいたことを教えてくれたけど、今ここに表示されているものは、私がモー子さんと交流していた証だった。

嬉しくて、敦賀さんを見上げたら、敦賀さんも自分の携帯を開いて、メールの受信ボックスを見せてくれた。

そこに確かに『最上キョーコ』と表示されているのを見て、敦賀さんとの交流の証が見れて、ホントに嬉しかった。

敦賀さんもモー子さんも、確かに私が交流していた人なんだって実感出来て、マリアちゃんが『信頼して大丈夫です』って言ってた意味がよくわかった。

10へ   つづく

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

バナー
バナー 花のうてな みなみなみ様から頂きました。
バナー 桃色無印 きゅ。様から頂きました。
プロフィール

瑞穂

Author:瑞穂

最新記事
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新コメント
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
参加してます
実行委員長のAKI様のお宅にリンクしています。
フリーエリア
光の箱庭 惣也様主催
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。