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恋のため息2

「柚子を使った料理が食べたかったのなら、素直にそうおっしゃればいいじゃないですか。それなのに『お持ち帰り』とか変なこと言い出して……」

ぶちぶちと文句を垂れながら、キッチンで手際よく料理をする彼女を見つめていた。

「素直に言えば作ってくれたの?」

「当たり前じゃないですか。変に言われるより断然いいですよ」

確かに頼めばいつも手料理を振舞ってくれるけど、片思い中の俺としては、君がどういうつもりで手料理をご馳走してくれるのか量りかねてるんだけど。

「恋人でもない男のために?」

「だって敦賀さんですから。いつもお世話になってますし」

お世話になってるとかって言葉が聞きたいわけじゃない。

「俺以外の男に頼まれても、最上さんは作りに行くの?」

今一番気になっていることを口に出してしまった。

「例えばどんな方ですか?私に『料理を作って』なんておっしゃる方はいらっしゃらないと思いますけど」

君のことを好きな男だったら、誰でも君の手料理を食べたいと思うんじゃないのかな?

「社さんとか」

社さんは俺のこと応援してくれてるけど、俺より彼女と親しく感じるし。

「社さんなら頼まれたら作るかも知れませんね。その時仕事がなければという意味ですけど」

何を押しても駆けつける程ではないってことは、ちょっとは安心出来るのかな?

でも仕事に真面目な君だから、”仕事がなければ”っていうのは俺が頼んでもそうなんだろうけどね。

「緒方監督とか」

緒方監督も、妙に君と仲が良く見えるからね。

「緒方監督なら、手料理を食べたくなったら麻生さんにお願いしそうですけど」

麻生?聞き覚えのない名前だな。

「貴島君とか」

俺が君に告白したことを知ってから、妙に貴島君が君のことを口走るから、君が彼をどう思ってるのかもとっても気になるよ。

「貴島さんとは一緒に食事をしたことがないから、あり得ないと思います」

一緒に食事をしたことがあるというのが、手料理を振舞ってもらえる基準だったのか?

「ってことは、緒方監督とは一緒に食事に行ったんだ」

「誤解のないよう言っておきますけど、ダークムーンの制作発表の時に、倒れた監督に私だけが付き添ってましたよね?監督はお財布もお持ちでなかったので、監督に頼まれてご友人の麻生さん――私が監督の目に留まるきっかけになったPVの時にお世話になった方なんですけど――を呼んだんです。その時麻生さんに誘われて三人で食事しただけですよ?」

誤解のないようにとか言いながら、俺の知らない男と食事に行ったという事実に胸の中がモヤモヤしてきた。

「男二人と行くなんて」

小さな声だったのに、しっかり彼女の耳に届いていたようだった。

「麻生さんは女性ですよ」

即座に自分の勘違いが正されて、ちょっと気分が上昇した。

「ってことは、社さん同様最上さんに食事を作ってもらえる俺は、他の人よりは特別な存在なんだ」

「社さんにはまだ作ったことはないですけどね」

「じゃあ、俺だけ?最上さんの手料理を個人的に食べてるのは」

「後は、マリアちゃんやモー子さんやだるま屋の大将と女将さんぐらいですね」

「最上さんにとって、俺はその人たちと同じ位置にいるの?」

彼女にとって、彼らがどんなに大事な人なのかは十分理解しているつもりだったから、嬉しい返事だった。

「敦賀さんがマリアちゃんとモー子さんと大将と女将さんと一緒なんてことありませんよ。おこがましいですけど、マリアちゃんは妹で、モー子さんは親友で、大将と女将さんは両親なんですから」

「その言葉、クー・ヒズリが聞いたら泣きそうだよね。『俺は?』って」

つい話題に出ない父さんが可哀想になって口走ってしまったけど、彼女は特に疑問を感じた風はなかった。

「先生は先生です。勿論お父さんのように慕ってますけどね」

「じゃあ俺は?」

「敦賀さんは先輩です」

即答で出た言葉にちょっと物足りなく思った。

「先輩ってだけ?他には?」

拗ねたように言うと、彼女は苦笑していた。

「もう、ホントにいじめっ子ですね」

「俺は最上さんの心が欲しいの。だから無理強いなんてしたくないし、待つとは言ったけど、ただ待ってるだけじゃ欲しいものは手に入らないでしょ?努力しないと」

「先輩以上です」

恥ずかしそうに告げられた言葉に、自然と顔がゆるんでしまう。

「恋人には?」

「自分に自信がないから信じられないんです。敦賀さんが遊びであんなとこであんなこと言える人じゃないってわかってますけど……ごめんなさい」

最初の頃のように、「冗談はやめてください」とか「またからかってますね」とか言われるよりは、俺の告白を真剣に受け止めてもらえてるようで嬉しかった。

「最上さんと一緒に食事をとると、食に関心が薄い俺でも美味しく食べられるんだ。食事の湯気の向こう側で最上さんが笑ってると幸せで、いつも一緒に御飯が食べられたらと思うよ」

真剣に彼女の瞳を見つめて告げた。

「呼ばれた時はいつも作りに来てますよ?なんとかインゼリーじゃなくて食べたいって言われると嬉しいですしね」

彼女の言葉に思わず脱力してしまった。

勿論嬉しくなかったわけじゃないけど、俺の意図した返事ではなかったことに苦笑してしまう。

「いや、そういう意味じゃなくて」

「?」

不思議そうな彼女に、やっぱり回りくどくなくストレートに言えばよかったと後悔してしまった。

「ごめん。俺の気持ちが信じられないって言うからプロポーズのつもりで言ったんだけど、わからないよね」

夢見がちな彼女の為に、ありきたりでない言葉を選んだつもりが徒になってしまった。

「は?」

彼女は唖然としていた。

「だから、俺は最上さんが好きで、君と結婚したいと思ってます」

「まだ付き合ってもいないのに?」

「最上さんのことはよく知ってるつもりだし。普通はお付き合いしてお互いを知っていくものだけど、よく知ってるからこそ、最上さん以外一生寄り添って生きていきたいって思う人はいないんだ」

ずっと彼女を見てきたからこそ、プロポーズにためらう理由なんてなかった。

「え、でも……えっと……」

彼女にとっては話が飛躍しすぎているんだろう。

うろたえる彼女を見て、もっとはっきり告げるべきだと自分の中で何かが囁いていた。


「最上さんにイエスと言ってもらうまでは言うつもりはなかった。でも、信じられないというのなら、俺の気持ちを信じてもらうように尽くすべきだと思った。後で何と詰ってくれてもいいよ。俺は10歳の時に会った女の子を忘れられなかった。ずっと俺を妖精だと信じ切ってくれてた彼女を悲しませたくなくて妖精のふりをしたけど、まさか今でも信じてるなんて思ってもみなかった。そんな純粋な最上さんが好きだよ。テストで100点取れなかったからって泣いてた彼女。泣いた後には『今度こそ』と意欲を持って立ち上がる、そんな直向きで一生懸命な最上さんが好きだよ。あの時あげた石を、ずっと宝物だと大事に持ってくれているそんな最上さんが愛しいよ。これでも信じられない?」

俺の言葉に、彼女は目を見張っていた。

「ホントにコーン?」

直ぐに信じられないのも無理はないと思った。

「ちょっと待ってて、証拠を見せてあげる。髪は染めてるから今すぐは無理だけど、瞳はコンタクトだからすぐに昔の色に戻れるよ」

洗面所に行こうとしたら、彼女が俺の服を掴んでいた。

「ホントにコーンなの?」

頷いてみせたら、彼女のほうから俺に抱きついてきた。

「会いたかったの。ずっと、会いたかったの」

俺にしがみついて泣いてる彼女を優しくあやしてやった。

「信じてもらえた?俺の気持ち」

彼女がコクリと頷いた。

「黙ってたこと怒ってない?」

黙ってたことを怒ると思ってたのに、彼女の口から出た言葉は、とても可愛らしいものだった。

「時々はコーンに戻ってデートしてくれたら許してあげます」

「『勿論』と言いたいところだけど、ホントの姿でのデートはもっと先になるかも」

「事情があって、コーンだということ隠してるんですね」

ごめんね、君にはもう一つ黙ってることがあるけれど、俺がホントの姿に戻るときには打ち明けるから許してね。

「そう。でもいつかちゃんとコーンだということは打ち明けるつもりだから、そしたらいくらでもホントの姿でデート出来るよ。それまでは、敦賀蓮の姿でのデートで許して?キョーコちゃんとのことは隠すつもりないから、堂々とデートもしよう?」

「二人の時は『コーン』って呼んでいいですか?」

「じゃあokしてくれるの?」

彼女が恥じらいながら頷いてくれた。


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