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恋のため息 序章

妖精の隠れ家さんの、変態蓮盟のお題「香り」に、投稿していたものです。


「好きだよ」

ラブミー部の部室で二人きりになったチャンスを生かして、愛しい彼女に告白した。

唐突に告げられた言葉に、彼女は目を見張って俺を見つめていた。

俺は息も止まりそうなぐらい緊張して、彼女の返事を待っていた。

彼女は何も言わず、ただ黙って俺を見つめていた。

呼吸すらもはばかられるような沈黙に、自分の鼓動の音だけは大きく聞こえていた。

ダークムーンの撮影も終わってしまうと、俺も彼女もそれぞれ別の仕事に忙しく、今までのように会うことも出来なくなっていた。

彼女のことを好きだと自覚する前にはなかったのに、自分の想いを自覚してしまうと、会えない時間に頭の中にはいつも彼女がいた。

忙しさに面倒になって食事を抜こうとすると、彼女が憤慨している姿が浮かんでしまう。

そんな時は決まって現実の彼女に会いたくなり、一目姿を見るだけでもと事務所に足を運んでも彼女も忙しくて事務所で姿を見かけることも出来なかった。

こうしている間にも彼女に近づく他の男がいるのではないか。

ラブミー部員の彼女にまさかとは思ったが、彼女の心を射止める存在が出てくるのではないか。

そんなことを考え始めると、嫉妬でおかしくなりそうだった。

他の誰にも渡せない。

その想いに気づいて、黙っていられなくなった。




 『恋のため息 序章』




実際にはそんなに時間は経ってなかったのかもしれない。

たった数分でも緊張しまくっている俺には永遠に等しいぐらいの時間に感じられた。

「最上さん?」

沈黙に耐えられなくなって彼女に呼びかけた。

彼女は、ハッと我に返ったように瞬きをした。

「今一瞬、私の耳がおかしくなったみたいです」

彼女の一言に呆然としてしまった。

俺の告白はなかったことにされてしまうのか?

「俺が最上さんを好きだって言ったの聞こえた?」

「そうなんですよ。そんなことあり得ませんよね」

彼女が笑って告げた。

「なんであり得ないの?」

「演技の練習ならともかく、芸能界一いい男の敦賀さんが、地味で色気がなくて、芸能人として華がないとかって言われる私になんてあり得ません。あ、そうか、告白の演技の練習だったんですか?急に始められるとびっくりしちゃいますよ。私ごときでよろしければ、いつでも演技の練習に付き合いますから、始める前にはちゃんとそうおっしゃって頂かないと困ります」

そう言って、少し拗ねたように彼女は俺を見上げてきた。

「今度はどんな役柄なんですか?」

彼女はあくまでも芝居の練習だと思っているようだった。

勇気を振り絞って言ったのに、真剣にとってもらえなくて、とっさに言葉は出てこなかった。

ずっと黙っている俺を、彼女は訝しげに見つめていた。

「敦賀さん?どうかされましたか?」

「いや、演技の練習じゃないんだ」

「じゃあ、意中の方に告白する練習ですか?」

「いや、だから練習なんかじゃなくて」

「エイプリルフールはまだ先ですよ?」

「だからそういうのでもなくて」

不毛な会話を繰り広げていると、社さんがノックと共にドアから顔をのぞかせた。

「れ~ん、時間だよ~」

後ろ髪ひかれつつも、社さんに急かされてラブミー部の部室を出た。





「キョーコちゃんと何かあったの?変な雰囲気だったけど」

社さんが不思議そうに聞いてきた。

「何もないですよ」

弄ばれたくなくて、早口で告げた。

「駄目だな~せっかく二人きりにしてやったのに、チャンスとみて『好きだよ』って告白ぐらいしろよ」

ズバリ言い当てられて、思わず立ち止まってしまった。

見てたんですか、社さん。

「何?もしかして図星?で、で?キョーコちゃんの返事は?」

社さんが、女子高生のように背後にハートを飛ばしているように見えるのは、目の錯覚だろうか。

「本気にされませんでしたから。演技の練習、告白の練習、果ては嘘をついたとかそんな反応でしたね」

思わずため息が出た。

「お前って、世間では芸能界一いい男なのに、キョーコちゃんには通じなくてかわいそうな奴だな」

同情されてるのか、弄ばれてるのかわからないその口調が、面白くなかった。

「放っておいてください。急がないと置いていきますよ」

社さんを無視して、次の仕事に向かうべく足を動かした。





「最上さん、君が好きだよ」

先日の仕切り直しとばかりに、二人きりになった楽屋で彼女に告白をした。

「その手にはのりませんよ?カメラはどこですか?」

彼女はキョロキョロと周囲を見回した。

「なんで?」

カメラって何のことだ?

「だってドッキリなんですよね?つい先日もTVで見たばかりですから」

ドッキリ?そんな番組があるのか?

「いや、違うよ」

「違うんですか?」

彼女は不思議そうに首を傾げた。

そんな様子が可愛すぎる。

大きく息をついて、誤解を解くべく一気に告げた。

「練習とか、嘘とか、ドッキリとかじゃないよ。俺は本当に最上さんが好きなの」

これ程はっきり告げているのに、なぜ通じないのか不思議でたまらない。

何度告げても、なかったことのように振舞われて面白くなかった。

「からかってるんですよね?」

俺が不機嫌になったのを察知したのか、心持青ざめながら問いかけられて、尚更面白くなかった。

「からかってるんじゃないよ。俺はホントに最上さんが好きなの」

ムードがどうとか言ってられない。

「敦賀さん、私が世話が焼ける後輩だからそんな風に勘違いしちゃってるんですよ」

どういう勘違いだと言うのか。

「なんで俺の気持ちを最上さんが決めつけるの?」

勝手に完結する彼女に、怒りがこみ上げてくる。

「だって……敦賀さんにはわかりませんよ」

彼女が怯えているのはわかっていたが、怒りは収まらなかった。

「最上さんだってわかってないよね」

時間が来たので、会話をそこで打ち切り、気まずい雰囲気のまま、収録のあるスタジオに移動した。





ブリッジロックというLMEのマルチタレントが司会をするやっぱきまぐれロックに出演していた。

同じ事務所とはいえ、日頃顔を合わせることのない彼らなのに、年が同じせいかバラエティが苦手な俺も打ち解けて話をすることが出来た。

「敦賀さんぐらいいい男だと、女性も放っておかないでしょうね。ダークムーンの嘉月の恋心なんか見てて気持ちがすごく伝わってきたんですけど、やっぱり実体験に基づいた演技だったんですか?」

よくあるお決まりの質問だった。

普段だったら、彼女の言う嘘吐きスマイルでかわしていただろう。

でも、、何度も告げても本気にしてくれない彼女のことがあって、ここで告げれば今度こそわかってもらえるだろういう思いがわいてきて俺は素直に心情を吐露していた。

「子供の頃からふられてばかりで、残念ながらもてないんですよ。つい最近も好きな人に真剣に告白したのに、全然本気にしてもらえなくて」

あっさりと告げる俺にブリッジロックの彼らの方が慌てていた。

「え?言っちゃっていいんですか?これ生放送ですよ?」

「何度告げても本気にしてもらえないので、さすがにここで告げたら俺の気持ちを信じてもらえると思いまして」

ニッコリ笑うと、彼らは呆然としていた。

視界の隅に青ざめている社さんが見えたが、彼女が俺の告白を信じてくれなくて自棄になっていた俺は気にも留めなかった。

相手が誰だか聞かれたが、俺は自業自得としても、俺の言葉のせいで彼女がマスコミに追いかけまわされるのは避けたかったので、そこは笑ってごまかした。

この時のやり取りはしばらくワイドショーを賑わし、俺の片想いは日本中に知れ渡った。





収録の後、すぐに社長に呼び出されて、事務所に向かった。

社長室に向かう間も、彼女の姿が見れないかと辺りを見回してしまった。

「よう、来たか。面白いことになってるそうじゃねぇ~か」

妙に陽気な社長に、ため息が出た。

「ホントの恋ってみっともねぇ~だろ」

ニヤリと笑って告げられた言葉に、ぶすっと答えた。

「そうですね」

「松島君が慌ててたけど、お前が暴走しすぎるまで止めるなって言っといたから気のすむようにやってくれ」

思いがけないことを言われて、まじまじと社長を見つめてしまった。

「お前にとっても最上君にとってもいい傾向だと思ってるよ。例えどんな結果になってもな。だけど、最上君の同意もなしに襲うなよ?俺がお前に注意するのはそれだけだ」

行けと笑って手を振る社長に、軽く頭を下げて社長室を出た。

おおぴらに彼女を口説けるお墨付きをもらって、愛しい彼女の姿を探して回った。

人気ない階段の踊り場で、膝を抱えて座り込む彼女を見つけた。

「こんなところで何をしてるの?」

声をかけると彼女の肩が小さく反応したのに気づいた。

礼儀正しい彼女にしては、俺の方を見ようともしない。

彼女の肩に手をかけようとしたら、彼女は震えていて、とっさにどうしていいかわからずに、手が宙に浮いてしまった。

「最上さん?」

待ってても顔を上げそうにない彼女を覗き込もうと近づけば、彼女は近づいてくる俺の気配に怯えているようだった。

「俺が怖い?」

彼女がますます小さく縮こまってしまった。

「何か言ってくれないか?」

自分でもどうしていいかわからずに、怯えた彼女にかける言葉が出てこなかった。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

彼女は繰り返し謝っていた。

「最上さんが、謝ることじゃないんじゃない?俺が最上さんを怯えさせてるんだから」

これ以上彼女を刺激しない方がいいと思い、彼女から少し下がろうとしたら、彼女は思いがけず俺の袖を掴んできた。

「違うんです。今の関係がなくなってしまうことが怖いんです」

やっと俺の顔を見つめてくれた彼女の目は、涙で濡れていた。

「敦賀さんのことは嫌いじゃありません。誰よりも尊敬してます。でも、私はまだ……」

「無理しなくていいよ」

「ちが……敦賀さんがいなくなることの方が嫌なんです!」

彼女に一番近い男だと、少しは自惚れてもいいんだろうか?

「どこにも行かない。最上さんの傍でずっと見てるよ。だからゆっくりでいいから、真剣に俺の告白を考えてくれる?」

俺の言葉に彼女が小さく頷いた。

待ってるよ。

君が俺を受け入れてくれる日を。

俯く彼女の頬を流れ落ちる涙を、指でぬぐった。


つづく

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