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君恋ふる14




休憩中に何気なく携帯を覗いて時間を確認した。

もう彼女は事務所に戻っている頃だろうか。

不破との遭遇の後は何事もなかったか心配になって、彼女に電話をかけずにはいられなくなった。

何度呼び出しても、愛しい彼女は電話に出ない。

彼女に何かあったんじゃないかと思うと、落ち着かなくなった。

俺の横でニヤついていた社さんも、段々意地悪い笑みが消えていった。

「蓮、キョーコちゃん電話に出ないのか?」

社さんの問いかけに、ため息をついて電話を切った。

「出ません。留守電にもなってません。何かあったわけじゃないですよね?」

八つ当たり気味に社さんに詰め寄ったら、社さんが慌てて言った。

「事務所に確認してやるから落ち着けって」

「すみません。さっきの不破みたいな輩が他にもいたんじゃないかと思うと心配で……」

「不破?不破尚がどうかしたのか?」

「記憶がない彼女に『恋人の俺のことも忘れたのか?」と嘘ついて騙そうとしてましたね」

「なんだって?当然その嘘はちゃんとキョーコちゃんにも嘘だって認識されたんだろうな?」

「大丈夫だと思います。琴南さんが言い聞かせてましたから」

撮影が再開されて呼ばれた俺の背中を励ますように叩いて、社さんはスタジオから出て行った。





「蓮、安心しろ。無事に事務所に戻ってたぞ」

社さんのその一言で自分の緊張が解けた。

「ま~蓮と別れた後も色々あったみたいだけどな」

「色々って?不破がまた何かしたんですか?」

「いや、貴島君と遭遇したり、瑠璃子ちゃんとひと騒動あったり、アカトキのアイドルと遭遇したりしたそうだ」

「ひと騒動?遭遇って何があったんです?ホントに大丈夫なんですか?」

「今はラブミー部の部室にいるそうだから、大丈夫だったんだろ。今日のことで話があるって呼ばれたから、俺今から事務所に行くよ」

それだけ告げると社さんは出て行った。

もっと詳しい話が聞きたくて、彼女に電話したけどまたしても呼び出し音がむなしく繰り返されるだけだった。

ふと思い出して、この前聞いた琴南さんの番号に電話をかけてみた。

「もしもし、琴南です」

「敦賀です」

勢いで電話したけど、なんと切り出そうかと言葉に迷った。

「社さんに聞いたんだけど……」

「敦賀さん、あの子ラブミー部員であって、ラブミー部員じゃないんです」

俺の言葉を遮って、琴南さんが話し始めた。

「記憶をなくす前のあの子と、今のあの子は違うんですよ。落ち着きはらってると誰かにさらわれても知りませんよ」

琴南さんの言葉はわかるけど、今の俺と彼女では何もしようがないと思った。

「今日、貴島さんに会いました。あの子に聞いたら『また会いたい』って言うし……いいんですか?このままで。仮に敦賀さんはよくても、私は嫌ですよ。だって、あの子の記憶が戻った時にどうなると思います?記憶をなくす前、あの子、貴島さんのアプローチに気づいてもなかったんですよ?あの子の記憶が戻った時に、そんな人と恋人になってたなんて知ったら……あの子どうなると思います?新人女優の私が、あの子を守ってたってしれてるんですよ。私じゃあの子を守りきれないんですよ」

電話の向こうですすり泣く声が聞こえた。

「俺で出来ることなら何でもするよ」

「あの子を守ってください。お願いします」

そう言うと、琴南さんは電話を切った。

ダークムーンの時の貴島君とのやりとりが思い出された。


  *  *  *


「京子ちゃんって不破尚と付き合ってるの?」

唐突に貴島くんに問いかけられて、不破の名前を聞いただけで不快になった。

「付き合ってないと思いますよ?急にどうしたんですか?」

貴島君は何も知らないから仕方がないと思い、不快を押し隠して笑って問いかけた。

「何度か撮影現場まで京子ちゃんに会いに来てたって聞いたし、でっかい花束持ってきて、こないだここでキスしてたって話も聞いたしさ~」

思い出すだけでも不快なこと極まりない。

「それ、あの子の前で言わないであげてくださいよ」

俺の前でも言わないでくださいよと、心の中で付け足した。

「俺が女の子にそんなこと聞くわけないでしょ。敦賀君が気にするなんて珍しいね。いつもなら”俺は関係ありません”って態度なのに」

貴島君の指摘にドキッとした。

そんなにあの子に対する態度が違うのか?

「あの子は俺の後輩ですからね」

内心を悟られないように、更に笑って告げた。

「京子ちゃんの彼氏が不破尚じゃないなら、もう一つの方が信憑性がありそうだな~」

もう一つ?

貴島君の呟きが、俺を落ち着かなくさせて、思わず問いかけた。

「何の話です?」

「京子ちゃんって、敦賀君のマネージャーさんと付き合ってるの?」

「えっ!?」

社さん?

そんな噂があるのか?

「だってさ~俺はいなかった軽井沢ロケで、敦賀君ほっぽって先に現場入りして京子ちゃん捜してたって聞いたしさ~食事休憩とか、必ず京子ちゃん誘ってるしさ~君も色々と京子ちゃんの面倒みてるのは、そのせいじゃないかって噂聞いてね」

話だけ聞くとそれらしく聞こえるが、全て俺を思ってしてくれてる行為なのでホッとした。

「社さんは、彼女にマネージャーがついてないから面倒みてるだけですよ」

「それだけでわざわざ沖縄から軽井沢へ来るかな?特別な何かがあったんじゃないの?」

「軽井沢は色々事情があったんですよ。その事情というのは、社さんとあの子の間がどうこうというものでないことだけは言っておきますよ」

俺が頼んだからですとは言わない。

「じゃあ敦賀君と付き合ってるの?」

「付き合ってないですよ」

慌てずさらりと返した俺を、貴島君は疑わしそうに見つめていた。

「妙に面倒見がいいって聞いてるよ?」

「あの子は後輩ですから」

疑われないためにも、ここで一瞬でも躊躇するわけにはいかなかった。

「それだけ?一人だけ本名で呼んでるのに」

「あの子のデビュー前から知ってますからね。事務所では結構本名で呼んでる人多いですよ」

「デビュー前から知ってるから、余計特別で大事ってこと?」

否定しても、貴島君は納得してくれないようだった。

「そんなんじゃないですよ」

「おはようございます」

噂をすれば影で、ひょっこりと愛しい彼女が挨拶にきた。

「おはよう、京子ちゃん」

「おはよう」

「私、お二方のお話の邪魔しちゃいました?」

貴島君と俺の変な雰囲気を察したのか、彼女が訊ねてきた。

「いや、今最上さんの話をしてたからびっくりしてね」

「私また何かしちゃいました?」

彼女が不安そうに見つめてきた。

「京子ちゃんってさ~今付き合ってる人いるのかな?って敦賀君に聞いてたんだよ」

貴島君が意味ありげに笑っているのを、彼女は気づいていないようだった。

「なんでそんな話が……」

彼女が不思議そうに呟いた。

「俺が気になってるから」

貴島君の言葉に、彼女はポカンとしていた。

「へ?」

「京子ちゃん、今好きな人いるの?」

「好きな人はモー子さんです!」

彼女は満面の笑みを浮かべて即答した。

彼女の背後に花が飛んで見えるのは、俺だけだろうか。

「それって琴南さんのことだよね?」

貴島君と彼女の『好き』の違いに気づいてこみ上げてきた笑いを、必死で押し隠した。

「そうですよ?大好きな親友です!」

彼女は誇らしげに宣言した。

「いや……男性限定だったら、好きな人って?」

「先生です!」

今度も彼女は躊躇せずに答えた。

思いがけない返事に、貴島君が唖然としていた。

「え!?」

ラブミー部員だからこそ心動かされないと思っていたけど、この場合異性としてとらえているのかわからなくて不安になった。

「学校の先生?」

貴島君が不思議そうに訊ねてきた。

「敦賀さんにはお話しましたからご存じですよね?」

彼女はニッコリと笑っている。

「あぁ……クー・ヒズリ?」

『先生』が誰なのかはわかる。

でも、異性として『好き』なのかはわからなかった。

「はい。先生みたいな人がお父さんだったらいいなって思ったし、実は先生にもそう言っちゃったんですよ」

照れながら笑う彼女。

『お父さん』という意味での『好き』にホッとした。

「いや、俺が聞いてるのはそういう意味じゃなくて」

話がかみ合わなくて、貴島君が困っていた。

「あ、すみません。あちらにもごあいさつしてきますね」

こちらのことなどお構いなしに、彼女は他の共演者に挨拶に行った。

「あの子ってどんな子?」

彼女の背中を見つめながら、貴島君が聞いてきた。

「今見たまんまですよ」

「ふぅ~ん。あんなまっさらな子、男だったら自分の色に染めてみたくなるよね」

ニヤリと笑うその横顔を、思わず睨みつけた。

「あんな子だからこそ、みんながあの子を心配するんですよ」

「それにしても、あの子クー・ヒズリと知り合いって何者?」

ハリウッドスターと新人タレントが知り合いだなんて、普通だったらあり得ない。

貴島君の疑問も尤もなことだ。

「あの子の属してるセクションがそういうところなんですよ。それで俺もあの子に代マネしてもらったこともあるし」

「だからあの子と敦賀君って、ただの先輩以上の関係に見えるのか。あの子がまだ誰のものでもないなら、ちょっとアプローチしてみようかな~」

「あの子を傷つけるのは許しませんよ」

効果があるかどうかは定かでないが、釘をさした。

「俺が女性に優しいこと知ってるでしょ?そんなことしないよ」

じゃあと手を上げて、貴島君が彼女の方に歩いて行った。


  *  *  *


例え貴島君が本気だったとしても、彼女は譲れない。

13へ   つづく

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