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それは誰のため?4

キョーコ

「キョーコがいれば、目覚まし時計がいらないね」

すこぶるご機嫌な笑顔で、敦賀さんが言った。

私の悲鳴で起きたにしては、いやにスッキリとした顔してませんか?

もしかしなくても私より先に起きてましたね?

ということは、ずっと寝顔を見られていた?

いや~!

「ひどい!寝顔をずっと見てたんですね!?」

恥ずかしさのあまり、布団にもぐりこみたくなったけど、敦賀さんが私をしっかりと抱きしめたままだったので、身動きもままならなかった。

私が敦賀さんの腕から逃れようとしても、敦賀さんは放してくれなかった。

「キョーコ?どうして怒ってるの?」

「ずっと寝顔見てて、からかうつもりで抱きしめてるんですよね?」

恥ずかしいのと、抵抗してもなんともないように私を抱きしめたままなのが悔しくて、目に涙が浮かんできた。

「誤解しないで欲しいけど、キョーコがすり寄ってきたんだよ?」

思いがけないことを言われて、敦賀さんの腕から逃れようともがいていたのが止まってしまった。

「寒いって俺にすりよってきて、温かいってニッコリ笑ってたじゃないか」

ソンナコト記憶ニゴザイマセン。

ホントに私が?

考えてみても、敦賀さんが私に嘘をつくメリットがわからなかった。

「まだ早いから、もう少しは寝かせてあげれるなと思ってキョーコが寒くないようにと抱きしめてあげてたのに」

恨めしそうに言われて、申し訳なく思った。

「す、すみません」

いたたまれなくて謝ったら、私を抱きしめる腕に力が込められた。

あやすように背中をポンポンと叩かれて、敦賀さんに与えられる温もりに、少し落ち着きを取り戻した。

「恥ずかしかっただけってちゃんとわかってるから、謝らなくていいんだよ」

『お父さん』ってホントにこんな感じなのかな?

大きくて、温かくて。

心地よさにすっぽりと覆われていた。





「それじゃあキョーコ、ちゃんと連絡頂戴ね?」

敦賀さんはそう言って出かけて行った。

朝食の時に、移動の度に連絡を入れることを敦賀さんに約束させられた。

「連絡くれないと、誘拐されたって捜索願出すからね?」

そんな風に念押しされて、否応なくマメに連絡を入れないといけない気になった。

世の中のお父さんは、自分の娘のことをそんな風に心配しているのかと思うと、感銘してしまった。

敦賀さんのお父さんを通して、昨日から知らなかった世界を随分垣間見ることが出来たと思う。

戸惑うことも多いけど、敦賀さんのお父さんは、すごく勉強になっていた。

他のお父さんの話も聞いてみたいと思い、こんな時に思い浮かべるのは親友のモー子さんで、後で電話して聞いてみようと思った。

まだ早いと後回しにしてたけど、学校に着いた頃にはもういいかなと、校庭の片隅で電話をかけたけど、モー子さんは出なかった。

たまたま電話に出れないだけかもしれないと思い、忘れないうちに敦賀さんに学校に着いたことをメールしておいた。

午後からは料理番組のアシスタントでテレビ局に向かった。

楽屋について、まず敦賀さんにメールをして、その後でモー子さんに電話をかけた。

「只今電源が入っていないか、電波の届かない所に……」

そんなアナウンスが聞こえてきた。

朝は普通に呼び出ししてたから、移動で電波が届かないだけなのかな?

モー子さんにメールしようと思ったけど、なんて書いたらいいのかわからなくて、結局書きかけのメールは削除した。

もしかして事務所で会えるかもと思い、収録を終えてから事務所に向かった。

ラブミー部の部室にも、モー子さんの姿はなかった。

部室に落ち着いてからモー子さんに電話をかけてみたけど、昼間と同じアナウンスが聞こえてくるだけだった。

モー子さんは仕事が忙しいだけよね?

まさか事故にあったとかないわよね?

留守番電話になってるのなら気にしなかったのに、電源が入ってないというアナウンスが、悪いことを想像させて、不安になった。

もしかして、着信拒否?

いや~モー子さんに嫌われちゃったの?

ど、ど、どうしよう……

不安に耐えきれなくて、他に誰もいなかったこともあって、思いきり泣いてしまった。





泣き疲れていつの間にか寝ていたみたいで、荒々しく開いたドアの音に飛び起きた。

「キョーコ!」

私の名前を呼んで、痛いぐらい私を抱きしめてるのは敦賀さんで……

どうしたのかしら?

「敦賀さん?」

「キョーコちゃん、心配したよ~」

社さんが苦笑していた。

「何かあったんですか?」

「キョーコちゃんから家に着いたって連絡が入らないって蓮が騒ぎ出してね」

意味がわからなくて呆然としてしまった。

「どうして敦賀さんが、騒いだんです?」

思わず聞き返したら、敦賀さんが嘘吐きスマイルで私を見つめていた。

「移動の度に連絡入れるって約束したよね?」

モー子さんと連絡が取れないことで不吉なことばかり考えてしまって、敦賀さんとの約束をすっかり忘れていた。

モー子さんと連絡が取れなかったことも思い出したら、また悲しくなってきて、あふれ出る涙を我慢出来なかった。

突然泣き出した私に、敦賀さんも、社さんも仰天していた。

「キョーコちゃん?どうしたの?」

「キョーコ?何があったの?」

敦賀さんは私を抱きしめて、あやしてくれた。

「モー子さんに……今朝から電話してるのに、連絡が取れないんです……何度電話しても、電源が入ってないってアナウンスが流れて……」

泣きながら説明したら、社さんが部室から出て行った。

「大丈夫。キョーコが心配してるようなことは何もないよ」

私の不吉な考えなんてお見通しのように、敦賀さんが慰めてくれた。

少し涙が治おさまった頃に社さんが戻ってきて、モー子さんがロケに行ってることを教えてくれた。

私の目の前でモー子さんに電話をかけてくれて、黙って私に携帯を貸してくれた。

「もしもし?」

おそるおそる電話に出たら、電話の向こうからモー子さんの声が聞こえた。

「あんた何泣いてたのよ。全く、ちょっと連絡取れなかったぐらいで恥ずかしい子ね。あんたに教えてた番号は、私が個人的に持ってた携帯の番号だったんだけど、ロケに持ってくるの忘れちゃったみたいなのよ。事務所で支給された携帯は持ってきてるから不便はないんだけど、こっちにはあんたの番号登録してなくて、その上覚えてないからあんたに連絡出来なくて悪かったわよ。もうしばらくしたらロケも終わって帰るから、何か話があるならその時に聞くからいいわね?もう泣かないでよ?」

一方的に話して、モー子さんは電話を切った。

切れた電話を握りしめたまま、私が心配していたようなことは何もなくてよかったと、安心した。

社さんにお礼を言って、携帯を返した。

「心配かけて、申し訳ありませんでした」

「キョーコちゃんも、琴南さんも何事もなくてよかったよね」

そう言って社さんは笑ってくれた。

「『娘』の心配するのは当然だろ?」

敦賀さんも優しく微笑んでくれた。





敦賀さんが飲み物を買いに行ってくれてる間に、社さんが笑いながら言った。

「蓮が『お父さん』してることは知ってたけど、ほんとに過保護の父親みたいだね」

「私には『お父さん』がいないからよくわからないんですけど、敦賀さん見てたら凄いなぁ~って思います。私はちゃんと『娘』になれなくて、申し訳ないぐらいです」

「そんな風に考えないでいいんじゃない?もっと気楽に楽しめばいいと思うよ」

社さんの言葉に、考え込んでしまった。

私、楽しんでるとは言えないのかな?

「社さんは、お父さんとどんな風に過ごされたんですか?」

楽しむためにどうすればいいのかわからなくて、社さんの親子のふれあいを参考にしようと思った。

「ん~男の子だったしね~子供の頃はヒーロー番組にハマっては父親を悪役にして本気で倒しにいったりしてたな~」

懐かしそうに目を細めて話してくれる社さんが、羨ましかった。

「男の子って、みんなそんな遊びをするんですか?」

「みんな似たり寄ったりだと思ってたら、蓮は『ヒーローごっこはしたことない』って言うんだよ」

「敦賀さんはどんな遊びをされたって言われてました?」

社さんは少し考え込んでいた。

「そうそう、しりとりとかしたって聞いたかな?」

意外な言葉にびっくりしてしまった。

「しりとりですか?」

「うん。おとなしめな子供だったんだなって話した記憶があるよ」

しりとりなら、私でも『お父さん』と出来るなぁと思った。

3へ   つづく

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