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それは誰のため?7

最終話です。

奏江

「で?泣くほど私に聞きたかった事って何なのよ」

ロケの最中に、先輩俳優のマネージャーさんからかかってきた電話に、驚いた。

電話がかかってきたということではなく、親友が私と連絡が取れずに泣いているというその用件に。

ついうっかり親友の番号を登録してある私個人の携帯を部屋に置いてロケに行ってしまったために、親友が電話をかけたところで、私が出られるはずもなかった。

たったそれだけで泣いているなんて……

ほんとに恥ずかしい子。

そんな風に思う反面、くすぐったさも感じていた。

予定より長引いたロケも終わり、部屋に帰るなり速効で親友に連絡をとってしまった。

誰にも聞かれたくない話しだと言うから、私の部屋で話すことにした。

満面の笑顔でやってきた親友に、苦笑してしまった。

「モー子さんのお父さんってどんな感じなのかなぁと思って」

何か困って相談にでも乗って欲しいのかと身構えていた私は、拍子抜けしてしまった。

「あんたね~そんなくだらない用事で私と連絡がとれないとかって泣いて、社さんの手を煩わせたりしてたわけ?」

思わず睨みつけたら、親友はすごい勢いで首をぶんぶん横にふった。

「今ね、敦賀さんに『お父さん』ってどういうものか教わってるんだけど、ほら、私って『お父さん』がいないじゃない?だから敦賀さんの言う『お父さん』ってちょっとよくわからなくて。説明されるとそうなのかなって納得もするんだけど、やっぱり他の『お父さん』の話も聞いてみたくて」

つまり比較対象が欲しいわけね。

でも、どんな経緯で、敦賀さんに『お父さん』を教わるようになったのかしらねぇ~

この子の次の仕事が、家族愛がテーマのドラマとかだったりするのかしらねぇ~

まぁ、そんなことはどうでもいいけど。

「具体的にどんなこと聞きたいわけ?」

こんな会話のどこが人に聞かれたくない話しなんだか……

「家の父親の話なんて面白くもなんともないと思うけど」

「モー子さんは、『お父さん』と一緒に寝るの?」

「あんたね~家に遊びに来たことあるからわかるでしょ?あんな大家族でプライベートスペースなんてあるわけないでしょ?みんなで雑魚寝よ、雑魚寝。全く冗談じゃないわよね。だからこそこうやって一人暮らししてるんじゃないの」

も~私の家に来た時に、何を見てたのよ。

「モー子さんは、『お父さん』と一緒にお風呂に入るの?」

「家に来た時に見てなかったの?大体あんたが泊まりに来た時だって、あんたの入浴中に姪を押し付けられてたじゃないの」

この子、あんなに騒がしい姪も甥も弟も妹も、記憶に残ってないとか言わないわよね?

「モー子さんは、『お父さん』に『はい、あ~ん』とかって食べさせてあげるの?」

「さっきも言ったけど、家が大家族なの知ってるでしょ?だから何か食べてたらよく横取りされてたわね」

何やら考え込んでいる親友に、さっき気になったことを聞いてみた。

「ところで、どういう経緯で、敦賀さんに『お父さん』を教わるようになったの?あんたの次のドラマが家族愛のテーマでもあって、また演技指導でもしてもらってるの?」

親友は不思議そうな顔をしていた。

「モー子さんが言ったんじゃないの?」

「どうして敦賀さんに言うのよ。私と敦賀さんはあんたを通してしか接点ないわよ?」

「あ、ううん、敦賀さんにじゃなくて、マリアちゃんに。正確にはモー子さん→マリアちゃん→敦賀さんって感じに話が来たんだと思ってたんだけど」

マリアちゃんね~そういえば、今月に入った頃にこの子の誕生日プレゼントに何がいいか聞かれたわね~

ん?誕生日プレゼント?

自分の考えに、不吉なものを感じて、ドキドキしてきた。

「あんたまさか、敦賀さんが『お父さん』として、さっき私に聞いたようなことを強要してるとかじゃないわよね?」

「強要はされてないわよ?『俺の家はそうだった』って言われただけだもの」

「それで、『そうなのか~』って納得して、敦賀さんに『はい、あ~ん』って食べさせたり、一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりしてるとか言わないわよね?」

「え?えーっと……」

真っ赤になって黙ってしまった親友に、自分の想像が間違っていないことを確信した。

「あの似非紳士……どこが温厚な紳士よ。なんのことはないただのセクハラ野郎じゃないの」

怒りに震えていたら、おびえたような親友に声をかけられた。

「ホントに強要なんてされてないのよ?」

「でも、したんでしょ?」

じっと見詰めると、親友は視線を泳がせた。

「仮にね、敦賀さんが、本当に自分のお父さんにやってたことをあんたに話して聞かせただけだとしても、敦賀さんは男の人で、あんたは女なのよ?一緒にお風呂に入るとか、一緒に寝るとか不自然でしょうに!」

冷静になれば、肉親に縁の薄いこの子が、言われた言葉をうのみにして、そういうものだと思い込んでも仕方がないことなんだということは理解出来る。

だからこそ、これ幸いと日頃抑え込んでる欲望を、この子を丸めこんで実行したんだろう先輩俳優に、怒りがこみ上げてくる。

「でも……」

泣きそうになりながら、何かを訴えたそうな親友の言葉を待った。

「嫌じゃなかったの」

親友のその一言に、不意を突かれた。

私の怒りの波が引いていくのを感じたんだろう。

親友はここぞとばかりに畳みかけるように話しだした。

「最初はね、敦賀さんが『お父さん』だなんて思えなかったの。だってたった4つしか違わない『お父さん』持ってる人っていないじゃない?だからすごく躊躇ったんだけど、何故だか敦賀さんがとっても楽しそうに『お父さん』してるように見えたのね」

そりゃ~楽しいでしょうね。

日頃抑えてる欲求を『お父さん』だからってやりまくったんだったら。

「『はい、あ~ん』って食べさせてって言うのも、最初はとっても恥ずかしかったんだけど、あ、今でも勿論恥ずかしいのよ?食事の時は別に食べさせたりしないわよ?でも朝食はね毎日一緒に作ってって、味見してもらうときに食べさせてるんだけど、隣で敦賀さんが笑ってくれて、それだけでなんだか胸が温かくなって、全然嫌じゃないの」

何それ……一緒に朝食って、もしかしなくても一緒に暮らしてるの?

「一緒にお風呂はやっぱり恥ずかしいから、どうしても無理で、一緒に入ったことはないのよ?でもね、寝るときにはベッドの端で寝てるのに、毎朝目を覚ますのは敦賀さんの腕の中っていうのも、恥ずかしいけど安心しちゃうの。最初は悲鳴上げちゃうぐらいびっくりしたけど、今でもびっくりはするけど、悲鳴はあげなくなったのよ?」

もしかしなくても、一緒のベッドで寝てるってこと?

で、こんなに真っ赤になりながらも話してるってことは、手は出されてないってこと?

「メールもね、最初はそういう習慣なかったから大変だったけど、今はもう忘れたりせずちゃんと出来るようになったのよ?そりゃあ移動の度に連絡入れるのは大変だけど、忘れちゃうと、モー子さんと連絡が取れなくて、敦賀さんにメール入れるのを忘れて社さんまで巻き込んでドタバタしちゃった時みたいになっちゃうし……」

つまり、あの時の電話はそういう訳だったってことなのね。

「お膝だっこも、お姫様だっこも、恥ずかしかったけど、全然嫌じゃなかったの。『男性に付きまとわれて困ってたらいつでも追い払ってあげるからちゃんと話してね?』って敦賀さんに言われた時も、ちょっぴり嬉しかったのよ?」

お膝だっこに、お姫様だっこ?

何バカップルみたいなことしてるんだか。

そりゃ~あの人にしたら、キョーコ狙ってる馬の骨を公然と退治出来て張り切るでしょうよ。

「だからそんなセクハラ野郎ってことはないと思うの」

「嫌じゃなかったの?」

私の問いに、親友はコクリと頷いた。

「嫌じゃないって以外に何か思ったことはないの?」

そんなに色々されてて”もしかして私のこと好きなのかしら?”ぐらいは考えないのかしらね?

「えっとね、今月いっぱい『お父さん』やってもらうみたいなんだけど、毎日楽しくて、もうちょっとでこんな生活が終わるのかと思うと、ちょっと寂しいかな」

終わりが見えて、寂しいねぇ~

つまり無意識なんだけど、この子も敦賀さんが好きってことよね?

「それ敦賀さんに言ったことあるの?」

「どうして?」

不思議そうに首を傾げる親友に、苦笑してしまった。

「敦賀さん『お父さん』熱演してくれてるんでしょ?」

コクリと頷く親友。

「だったら、それをねぎらう言葉を言ってあげた方がいいんじゃないの?」

「え?でも後輩の私が、先輩の敦賀さんの演技をどうこう言えないわよ」

「馬鹿、違うでしょ?今の『今月で終わりと思うと寂しい』って言葉をそのまま言えばいいのよ」

「『寂しい』って?」

頷いたら、親友はとってもかわいらしく笑った。

馬鹿ね、そんなとっておきの笑顔は私じゃなくて敦賀さんに見せたらいいのに。





親友を送り出して、机の上につっぷしてしまった。

こみ上げてくる笑いを我慢出来なくて、一人で笑っていた。

ホントに世話のやける二人だわ。

予期してなかったけど、あの子にとってはクリスマスと誕生日のいいプレゼントになったみたいね。

あの時の会話が、こんな結果をもたらすとはねぇ~

あの人も、さっさと男らしく告白すればよかったのよ。

あ~でもあの子のことだから、告白されてもわからないとか、告白されたことを理解しても逃げるとかありそうで言えなかったのかもだけど。

ホントに『お父さん』になってやりたい放題してたみたいだしねぇ~

キョーコへのプレゼントなんだか、先輩俳優へのプレゼントだかわかんないわよ。

落ち着いたら、ゆっくり『お父さん』とのことを聞き出してみても面白そうよね。

敦賀さんと、ラブミー部員のあの子がねぇ~

さっきまで親友が使っていたマグカップを見つめた。

自分のマグカップを持ち上げて、乾杯する。

それ程大きくもないコツンという音が、私の中に響いた。

「ラブミー部卒業おめでとう、キョーコ」


6へ   おわり

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