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君恋ふる17

キョーコ

いつになったら戻るのかわからない記憶のせいで、いろんな人に迷惑をかけて、申し訳なかった。

事務所の人気ない階段で、小さなガマ口から取り出した、きれいな青い石を見つめていた。

記憶を無くしてからこの青い石を最初に見たときに、まるで魔法がかかってるんじゃないかと思った。

ただ、見つめているだけなのに、不思議と心が癒されていったから。

「キョーコちゃん、こんなところで何をしてるの?」

不意に呼びかけられて、声の主を発見した。

「あ、敦賀さん、こんにちは。先程はありがとうございました」

いつも優しくしてくれる人に、お礼を言った。

「もう『こんばんは』だよ?」

「え?」

言われてはじめて、薄暗くなっていることに気がついた。

「ずっとここにいたの?」

問いかけに頷いて、手に握りしめていたそれを、敦賀さんに見せた。

「これを見ていたんです」

時間も忘れるぐらいそんなものにって、呆れられるかしら?

「この石を見ていると、まるで魔法をかけてもらったみたいに心が癒されるんですよ」

私の言葉に、敦賀さんが吹き出した。

やっぱり、敦賀さんも笑うんだ……

「いいんです。モー子さんにも笑われましたから」

例え誰にもわかってもらえなくても、この石には、魔法がかかってるって、私には感じるのに。

「笑ってごめんね。でも俺が笑ったのは、記憶がなくても変わらないなと思ったからだよ」

敦賀さんからは馬鹿にされたような感じはなく、私を見つめる目はとても優しかった。

「魔法って言葉に笑ったんじゃないんですか?」

「違うよ。記憶をなくす前にも君は俺に魔法の話をしてくれたんだよ」

私って、敦賀さんといろんな話をしてたんだ………

親友だというモー子さんには呆れられたのに、敦賀さんは、今と同じで、こんな話を真面目に聞いてくれていたの?

「記憶をなくす前の私は、敦賀さんとそんな話をしていたんですか?」

「そうだよ?その石をくれた人のことも話してくれたよ?貸して貰ったこともあったよ。キョーコちゃんはその石に、石をくれた人の名前をつけていたよ」

眩しくて、じっと見つめていられないような微笑みを向けてくれるこの人は、ホントにただの先輩だったの?

「なんて名前なんですか?」

「『コーン』と呼んでいたよ」

「コーン………」

その名前を口にした途端に、太陽の光にキラキラ輝く髪を持った少年が脳裏に浮かんだ。

『キョーコちゃん』と私の名前を呼ぶ彼。

泣いている私を慰めてくれた彼。

あぁ、この石には、彼の魔法がかかっていたんだ。

私、どうしてこんなに大事な彼のことまで忘れてしまってたんだろう………

「ごめんね………ごめんね………」

彼のいろんな顔が、次々と頭に浮かんでは消えていき、私の目からはとめどなく涙がこぼれ落ちた。

「キョーコちゃん?」

うろたえる敦賀さんの姿が目に入ってきたけど、私の頭は思い出の彼に占領されていて、何も返事が出来なかった。

「………忘れててごめんね、コーン………」

「思い出したの?」

その時間は長かったのか短かったのか、自分でもよくわからないけど、私が落ち着くまでじっと待ってくれた敦賀さんの顔を見つめてお礼を言った。

「ありがとうございます、敦賀さん。どうして私こんなに大事な人のこと忘れていたんでしょうね」

涙をぬぐって、敦賀さんに微笑みかけた。

「コーンのことだけですけど、思い出しました。コーンのことを想うだけで、胸が暖かくなります」

私にとって大事な思い出の君。

敦賀さんもそれは知っているのか、とても優しく微笑んでくれた。

「よかったね。少しでも思い出せて」

その眩しい笑顔に、いつもなら俯いてしまうけど、どうしても気になることがあって、敦賀さんの顔を見つめ返していた。

「俺の顔に何かついてる?」

聞きたい……聞いてしまってもいけなくはないわよね?

「素朴な疑問なんですけど、聞いても良いですか?」

私の問いかけに、妙に警戒されているように感じるのは何故?

でも、どうして『先輩』が、私の思い出の君――コーン――を知っているの?

「何かな?」

「記憶をなくす前の私と敦賀さんってどういう関係だったんですか?」

じっと敦賀さんの顔を見つめて聞いた。

「事務所の先輩と後輩って関係だよ」

敦賀さんは、柔らかく微笑んで答えてくれた。

「それだけで、私にとってこんなに大事な人―――コーン―――のことまで話すんですか?親友だっていうモー子さんだってこの石のことは知らなかったのに………」

私の言葉に、敦賀さんは驚きに目を瞠っていた。

「琴南さん、知らなかったの?」

「そうです。だから敦賀さんがこの石のことご存じなのが不思議なんです。」

敦賀さんの些細な表情の変化も見逃さないつもりで、凝視していた。

「前にね、落ちていたその石を拾ってあげた事があるからだよ」

私、こんなに大切なものを落としたの?何故?

「キョーコちゃんが泣きながらその石を探していてね、見つけてあげた時にその石の話を教えて貰ったんだよ」

もしも今、この石を落してしまったとしても、やっぱり泣いて探すと思う。

落としたことを考えたら怖くなって、強くコーンの石を握りしめた。

「記憶をなくす前の私にとって、敦賀さんはとっても大事な人だったんじゃないでしょうか」

意識せず、言葉がこぼれ落ちた。

「だって、コーンはホントに私にとって大事な人なんです。いくら石を拾って貰ったからと言って貸したりするなんて………余程敦賀さんを大事に思っていないとしないと思いますけど?」

ねぇ、コーン。

記憶を無くす前の私は、コーンと同じ位、敦賀さんのことが大事だったのかな?

コーンに問いかけてみても返事はなかった。

「記憶をなくす前のキョーコちゃんが、俺のこと大事に思っていたってほんとかな?」

囁くような小さな声が、耳に聞こえてきた。

「そうだと思いますよ?やだ、私何話しているんでしょうね」

自分がとんでもない事を口走ってるような気がして、慌ててしまった。

敦賀さんに変な子だと思われちゃう?

「可愛いね」

ポツリと呟かれた言葉に、敦賀さんを見つめた。

「ほんとに可愛いよ」

敦賀さんが、とても甘やかな微笑みでそんなことを言うから、尚更顔が火照ってきた。

16へ   つづく

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