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君恋ふる18



昼間の不破との遭遇を思い出して、不愉快になった。

不破のことは追い払えたけど、琴南さんでは庇いきれない相手が似たような事をしてこないとも限らない。

彼女の記憶を取り戻すためとは言っても、TV局への見学とかは、控えた方がいいのかもしれない。

社さんは社長に呼ばれて、一足先に事務所に行った。

仕事を終えた俺も事務所に寄った。





気分転換に階段を使ったら、人気のない場所で座り込んでいる彼女を見つけた。

「キョーコちゃん、こんなところで何をしてるの?」

以前も屋上で同じ事を聞いたなぁ。

「あ、敦賀さん、こんにちは。先程はありがとうございました」

彼女は立ちあがって微笑みかけてくれた。

「もう『こんばんは』だよ?」

「え?」

俺の言葉に彼女はキョロキョロと見渡した。

もしかして、ずっとこんな人気のない所に座っていたから電話に出られなかったのか?

ほんとに、君はもう少し危機感を持った方がいいよ。

携帯も持たずにこんなところに座りこんで、何かあったらどうするつもりなんだ。

「ずっとここにいたの?」

彼女が小さく頷いた。

そして照れ臭そうに手に握りしめたものを見せてくれた。

「これを見ていたんです」

それは、昔俺があげた石だった。

「この石を見ていると、まるで魔法をかけてもらったみたいに心が癒されるんですよ」

こういうところは、記憶が無くなる前と変わってないと思うと、笑いがこみ上げてきて、こらえきれずに吹き出してしまった。

俺が笑ったのがお気に召さないようで、彼女が拗ねたように見上げてきた。

「いいんです。モー子さんにも笑われましたから」

「笑ってごめんね。でも俺が笑ったのは、記憶がなくても変わらないなと思ったからだよ」

俺の言葉に彼女は不思議そうな顔をした。

「魔法って言葉に笑ったんじゃないんですか?」

「違うよ。記憶をなくす前にも君は俺に魔法の話をしてくれたんだよ」

かつて社長に落ち込む事を言われたんじゃないかと心配して、俺を元気づけようとして、その宝物を俺に貸してくれた。

そして俺に魔法をかけてくれようとしていた。

あの時の事を思い出して、余計に愛しさがこみ上げてきた。

「記憶をなくす前の私は、敦賀さんとそんな話をしていたんですか?」

「そうだよ?その石をくれた人のことも話してくれたよ?貸して貰ったこともあったよ。キョーコちゃんはその石に、石をくれた人の名前をつけていたよ」

「なんて名前なんですか?」

「『コーン』と呼んでいたよ」

「コーン………」

小さく彼女が呟いたら、突然ボロボロと泣き出した。

「ごめんね………ごめんね………」

泣きながら謝る彼女に狼狽してしまった。

「キョーコちゃん?」

「………忘れててごめんね、コーン………」

その言葉に彼女の記憶が戻ったんだと思った。

「思い出したの?」

彼女は俺を見つめて、礼儀正しくお辞儀をした。

「ありがとうございます、敦賀さん。どうして私こんなに大事な人のこと忘れていたんでしょうね」

彼女は涙をぬぐってニッコリと笑った。

「コーンのことだけですけど、思い出しました。コーンのことを想うだけで、胸が暖かくなります」

彼女の言うコーンは昔の俺だから、自然と顔が緩んできた。

「よかったね。少しでも思い出せて」

彼女に微笑みかけると、不思議そうに見つめられた。

「俺の顔に何かついてる?」

まさか、そんなににやけてたのか?

それとも俺がコーンだと気付かれたのか?

黙って見つめられると不安が掻き立てられた。

「素朴な疑問なんですけど、聞いても良いですか?」

躊躇いがちに彼女が聞いてきた。

彼女にコーンが俺だと隠しているから、彼女の聞きたい事に警戒してしまう。

今はまだ、コーンが俺だとバレるわけにいかなかった。

「何かな?」

「記憶をなくす前の私と敦賀さんってどういう関係だったんですか?」

彼女の質問を聞いてホッとした。

その反面、こたえに詰まってしまった。

「事務所の先輩と後輩って関係だよ」

これは本当のこと。

でも、君は俺が好きになった人だから、俺にとって君は特別な人なんだよ。

「それだけで、私にとってこんなに大事な人―――コーン―――のことまで話すんですか?親友だっていうモー子さんだってこの石のことは知らなかったのに………」

その一言は意外だった。

彼女のことだから、親友の琴南さんには打ち明けていて当然だろうと思っていた。

「琴南さん、知らなかったの?」

「そうです。だから敦賀さんがこの石のことご存じなのが不思議なんです。」

彼女はじっと俺を見つめていた。

「前にね、落ちていたその石を拾ってあげた事があるからだよ」

彼女は首をかしげていた。

宝物を落とすなんて考えられないんだろうな。

あの時も椹さんにびっくりしてつい落としてしまったらしかったし。

「キョーコちゃんが泣きながらその石を探していてね、見つけてあげた時にその石の話を教えて貰ったんだよ」

彼女は思案気に呟いた。

「記憶をなくす前の私にとって、敦賀さんはとっても大事な人だったんじゃないでしょうか」

思いがけない言葉に、思わず固まってしまった。

それは本当?

「だって、コーンはホントに私にとって大事な人なんです。いくら石を拾って貰ったからと言って貸したりするなんて………余程敦賀さんを大事に思っていないとしないと思いますけど?」

いや………俺に聞かれてもね………

君の心の中を知りたいのは俺の方だから。

「記憶をなくす前のキョーコちゃんが、俺のこと大事に思っていたってほんとかな?」

もしそうだったなら………

もしもの仮定を想像したところで、過去が変わるわけじゃない。

それでも、もしもそうだったなら、今の彼女にとっても大事な人になれるだろうか。

もしもそうなったら、彼女の記憶が戻った時は、彼女にわかってもらうまでこの気持ちを告げよう。

いつかのようにあっさり流されても、何度でもわかってもらえるまで。

「そうだと思いますよ?やだ、私何話しているんでしょうね」

彼女の頬がうっすらと赤く染まっていた。

「可愛いね」

つい正直に吐露してしまった。

俺の言葉に、彼女は真っ赤になって俯いてしまった。

「ほんとに可愛いよ」

出来れば抱き締めたいぐらいだ。

無粋な携帯が着信を告げるまで、ささやかな幸せに浸っていた。

17へ   つづく

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