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君恋ふる 19



ラブミー部の部室にキョーコちゃんを迎えに行った琴南さんから電話がかかった。

「社です」

なんだろうと思いつつ、慌ててゴム手袋をして電話に出た俺に、琴南さんが叫んだ。

「キョーコがいないんです!携帯も部室に置きっぱなしで…あの子に何かあったら……」

「落ち着いて、とにかく俺も探すから。荷物はそこにあるなら、まだ事務所内にいるはずだからね」

動揺してる琴南さんをなだめて、電話を切った。

社長にも事情を話し、蓮に電話をかけた。

キョーコちゃんに恋してる蓮に、余計な心配をかけるとは思ったが、一人でも手はある方がいいし、何かあった時にのけものにされてたとかって責められるのも勘弁して欲しかったから。

「蓮、俺。社だけど、お前今どこにいる?」

「事務所ですよ」

「事務所なら、丁度よかった。今、琴南さんから電話があって、キョーコちゃんがラブミー部の部室からいなくなったそうなんだ。それで、お前もキョーコちゃんを探してくれないか?」

早口で蓮に告げると、のんびりとした返事が聞こえてきた。

「キョーコちゃんなら俺の目の前にいますよ?階段で座り込んでたので、話してました」

キョーコちゃんに想いをよせてる誰かに、密かに連れて行かれたんじゃないかという心配がなくなって、ホッとした。

蓮にキョーコちゃんを社長室まで連れてきてくれるように告げて、琴南さんにも安心させるために電話を入れた。

社長も俺と蓮の会話から何事もなかったことを察して、安心したようだった。





「も~あんたって子は!どれだけ心配したと思ってるよの!昼間のTV局みないなことでもあったんじゃないかと心配したのよ?こんなことは二度とごめんだからね?次から携帯だけは常に持ち歩いてなさい。何かあった時にすぐ連絡出来るようにね?明日から敦賀さんや社さんに迷惑かけないようにね?一人でふらついて迷子にならないこと。わかった?」

蓮に連れられて社長室に入ってきたキョーコちゃんに、琴南さんは機関銃のように言い聞かせていた。

その勢いに、誰も口をはさむことは出来ず、話しが見えていない感じのキョーコちゃんは一つ一つの言葉に頷いていた。

「それじゃあ私は失礼します」

琴南さんは、言いたい事だけ告げて、社長室を出て行った。

キョトンとして、琴南さんが出て行ったドアを見詰めているキョーコちゃんは、文句なく可愛らしい。

誰が見ても護ってあげたくなると思う。

「最上君」

存在を忘れられた社長が、苦笑していた。

「キョーコちゃん、社長が呼んでるよ?」

小声で告げたら、キョーコちゃんは慌てて社長に向き直った。

「明日から最上君には記憶が戻るまで蓮の付き人をやってもらうことになった」

「付き人ってどんなことをすればいいんですか?」

「なに、難しく考えなくていい。何がきっかけで最上君の記憶が戻るかわからんからな。TV局の見学とかは続けさせたいんだが、いろいろと不埒な輩がいるそうじゃないか。そんなんじゃあ安心して送り出すわけにいかないからな。そこでだ、うちで一番忙しいのは蓮だ。蓮の仕事についてまわってれば必然的にあちこち出入りするようになる。移動中の心配もしなくていいと思うと、いいことだらけだろ?蓮と社なら最上君も気心が知れてて、他の奴の付き人よりはいいんじゃないかと思ったんだよ。以前代マネしたこともあるしな。蓮にくっついて回って、いろんなことろを見学してきなさい。最上君にやってもらいたい仕事はただ一つ。蓮に三食食事をとらせてくれ!」

「え?」

「こいつ食欲中枢まひしてるのか、ほっとくと一日一食とかでも平気らしいからな。最上君は料理も得意だし、その点は安心して任せられるからな。ということで、今晩から蓮のマンションに引っ越してもらう。あぁ、追い出すわけじゃないからな?いつでも家に帰ってきてくれていい。ただ、蓮はスケジュールめちゃくちゃ詰め込んでるから早朝から夜も遅くまで忙しくしてるんだ。そんな奴の食事を作るのに、家から通うと最上君も何かと大変だろうと思ってな。少しでも最上君の負担を減らすために、蓮と一緒に住んでもらおうと思ってな」

「一緒に!?蓮と同じマンションじゃなくて、蓮の部屋にですか?」

黙って社長とキョーコちゃんの会話を聞いていたが、つい、口を挟んでしまった。

さっきの口ぶりじゃあ、てっきり蓮と同じマンションの下の階の部屋だと思ってたから。

同居なんて言葉出てなかったじゃないですか!

同居と知ってたら、椹さんだって琴南さんだって、納得しなかったでしょうに。

まさか、そのために曖昧にしてたとか?

「あ?こいつの部屋広いからな。最上君一人住まわせるぐらい問題ないだろうが」

なんてことないかのように、社長が告げた。

問題は部屋の広さじゃないでしょうに。

「何考えてるんですか!」

俺は心の中で突っ込んだけど、蓮は感情のままに叫んでいた。

お前、その言い方は拙いって。

「本気で言ってるんだぜ?」

「たちのわるい冗談にしか聞こえませんよ」

「そんなにいやなのか?」

「そういう問題じゃないでしょ」

だから、そんな会話をキョーコちゃんの前でするなよ。

「社長」

キョーコちゃんにこれ以上聞かせたく無くて、二人の会話に割って入った。

「キョーコちゃんへのお話は済んだんですよね?」

しょんぼりと俯いてるキョーコちゃんに視線を投げた。

社長は俺の言いたい事を酌んでくれたようだった。

「あぁ、社と最上君はもういいぞ」

その言葉に、一礼して、キョーコちゃんを連れて社長室を出た。

エレベーターに乗る前に、キョーコちゃんがポツリと言った。

「私、あんなに嫌がられるぐらい、敦賀さんに嫌われてたんですね……」

やっぱり……

蓮の不器用さにため息が出る。

「違うからね?」

俺の言葉にやっとキョーコちゃんは顔を上げてくれた。

「そんな風に考えないでね?蓮はね、キョーコちゃんを心配してるんだよ」

「心配?」

キョーコちゃんはすごく不思議そうに首を傾げた。

可愛すぎる。

妹をネコかわいがりする奴等の気持ちが実感出来た。

「私にちゃんと食事の支度が出来るのか…とか?」

キョーコちゃんに食事の支度云々の心配をするやつなんて、いるわけがない。

「キョーコちゃんの料理の腕前は知れ渡ってるからそんな心配じゃないよ」

「どうしてですか?」

記憶のないキョーコちゃんに、マリアちゃんと主催したパーティの話をしてあげた。

パーティの思い出話を聞かせながら、ラブミー部の部室に移動した。

「だからね、キョーコちゃんの料理上手は知れ渡ってるんだよ」

部室に入って、改めて問われた。

「それで、敦賀さんが心配されることってなんですか?」

まだ気になってたんだ。

どう言えばわかってもらえるのか、俺にはわからなかった。

「逆にキョーコちゃんに聞きたいんだけど」

「なんでしょう?」

「キョーコちゃんは、蓮と一緒の部屋で暮らすことに不安はないの?」

「どんな不安ですか?」

答えに詰まってしまった。

「蓮と毎日一緒って嫌じゃない?」

「どうして嫌なんですか?」

質問に疑問を返されて、告げる言葉が出なくなった。

キョーコちゃんは蓮と一緒にいて不安に感じることは何もないっていうのはいい傾向なのか?

毎日一緒にいることが嫌じゃないのはいい傾向だと思うけど。

「あの……」

黙り込んだ俺に、躊躇いがちに声をかけるキョーコちゃん。

でも、ごめんね、俺にはキョーコちゃんの疑問に返せる言葉がないんだ。

蓮の気持ちも、応援団の思惑も告げるわけにはいかない。

「ごめんね。松島主任に報告しないといけないことがあるから、ちょっと行ってくるね。どこにも行かないでここで蓮を待っててね?それと、携帯は服のポケットにでも入れといてね?」

返す言葉のなかった俺は、キョーコちゃんから逃げた。

ホントにごめんね。

きっとキョーコちゃんは、俺が逃げたことも誤解してるだろな。

ため息がこぼれ落ちた。

18へ   つづく

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Re: No title


毎日寒いですね〜
私は元気ですよ〜ご心配下さってありがとうございますm(__)m
さらさんは大丈夫ですか?
可愛いキョーコを書きたくて頑張ってます♪
続きも頑張って書きますね(^^ゞ
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