スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

それは誰のため?もちろん……オマケ

「お誕生日おめでとうございます」

誕生日の前日、もうすぐ日付も変わりそうな時間帯に帰宅した俺を、マンションの前で待っていた彼女が、10日に日付が変わった途端に、小さな包みを差し出して俺に告げてくれた。


こんな時間に夜遅くに女の子が外でたたずんでと、お説教をするつもりだったのに、いつかのように寒さに凍える彼女を見ると、そんなことはすっかり忘れ果てて部屋に通し、少しでも彼女が温まるようにと、俺のコートをかぶせてインスタントコーヒーを入れた。

ずっと、誕生日は来なくてもいいと思うような、このまま時間が止まって欲しいと、毎日願わずにはいられなかった夢の時間がもうすぐ終わる。

それは彼女の誕生日の時も、同じ気持ちだったけど、誰よりも早く祝いたかったのも事実で、彼女も俺と同じように思ってくれていたのだろうか。

許しをもらって、彼女からもらった小さな包みを開けてみた。

中に入っていたものに、目が釘付けになった。

頬を赤く染めて、キーホルダーは手作りだと言う。

器用なことも知っていたが、何よりも、キーホルダーにつけられたソレに、彼女の誕生日に俺が渡したプレゼントを思い出した。

俺が彼女にあげたものは、ここの部屋の鍵。

いつでも『お父さん』を頼ってくれたらいいと、そう思って渡した鍵。

ホントは、誰よりも彼女に頼られたくて、恋人でもない彼女に渡した。

少しでも、俺の気持ちに気付いて欲しいと、恐縮する彼女に、無理矢理押し付けた。

そうだ、彼女は、この部屋の鍵を持っていたのに、なぜ使わなかったのか。

そして彼女から贈られたのも鍵。

18歳になったのを機に、年が明けて彼女は一人暮らしを始めたはずだった。

だるま屋のお手伝いをする時間がないからと、下宿先を出たのだ。

少しずつ自分の好みに模様替えするのが楽しみだと話していた、その部屋の鍵を俺に?

これはどう受け止めればいいのか。

そんな風に戸惑っている俺に、彼女は不安そうな顔をしていた。

「これはどういう意味なの?」

「敦賀さんと一緒ですよ」

彼女は鮮やかに笑った。

一緒?

恋しいと、君が欲しいと思う、俺の気持ちと、一緒なのか?

「私……ホントに『お父さん』との最後が寂しかったんです。敦賀さんが、その時鍵を下さったのがとっても嬉しくて、いつでも『お父さん』になってくれるって言葉だけじゃなくて態度で示して下さったってわかって、すごく嬉しかったんです。だから、決めてたんです。もしも敦賀さんが、『妹』の私が消えるまでに『寂しい』っておっしゃって下さったら、プレゼントはこれにしようって。喜んで頂けるかは自信なかったんですが。私も、いつでも『妹』をやらせて頂きますので、その証拠です」

ニッコリと笑う彼女に、良心が咎めた。

彼女の『お父さん』になってやったこと、あれもこれも全部自分の欲求。

純粋に、彼女の『お父さん』を演じていたわけではなかった。

俺は彼女の『お父さん』になりたいわけじゃなかったから。

そして、彼女がくれた『妹』も、ホントに欲しいものをもっと浮き彫りにさせられた。

君だけが欲しいと。

「ホントにしない?」

「えっ?」

不意に言われて、彼女は何の事だかわからなかったんだろう。

「演技は止めて、ホントにしない?」

そう言うと、彼女は笑った。

「『お父さん』も『妹』も、ホントは無理ですよ」

違う!

いつだって、『お父さん』でも『お兄ちゃん』でもなかった。

いつだって、君が傍にいてくれたらと……誰よりも君の傍にいれたらと……

「俺はずっと本気だったよ」

俺の言葉に彼女が首を傾げた。

「最上さんと恋人だったらこうしたいって思った事を、『お父さん』や『お兄ちゃん』を隠れ蓑にしてやってたんだ」

彼女は驚きに、目を瞠っていた。

そして、ポロポロと泣きだした。

その涙は、俺を咎めているようで、辛かった。

「そんなに嫌だった?」

彼女に問うと、首を横に振って、否定してくれた。

嫌じゃなかった…?

「ごめんなさい……」

その言葉に、あぁ、まだ彼女には受け入れられないんだと思った。

「あの…私、嬉しかったんです。そんな風に想って頂いてるのがわかって。私も凄く寂しくて。私…敦賀さんが『お父さん』なのが嬉しくて。でも、辛くて。勿論、役者としての差が浮き彫りになったこともそうですけど、いつか消えてなくなる関係だと思ったら寂しくて。敦賀さんがいっぱい甘やかして下さったから、それが当たり前のようになって……だるま屋を出て、一人で暮らすようになると、寂しくて眠れないんです。敦賀さんの温もりに包まれていた時はちゃんと眠れてたのに。こんなこと考える自分が破廉恥で、でも寂しくて、心にぽっかり穴が開いたようで…『妹』なんて、ホントはどうしたらいいかもわかりませんでした。でも、『お父さん』に甘えられなかったことが気になって、ドラマで見たように甘えてみたら、ホントに敦賀さんの腕をとって歩くのは、私じゃないのにって…そんな風に思うと、たまらなくなって……スクープされた時、どこかで喜んでる自分が嫌になりました。敦賀さんの好きな人に、誤解されてしまったら、申し訳ないのにって。どうして喜ぶ私がいるのか、一生懸命考えて……あぁ、私は、敦賀さんが好きだったんだと気付いたんです」

「俺も、最上さんが好きだよ」

そっと抱きしめると、彼女の腕が躊躇いがちに俺の背中にまわされた。

手を伸ばせば、すぐに消えてしまうような幻なんじゃないかと思った。

嬉しくて、夢を見てるようで、きつく彼女を抱きしめる事で、現実なんだと、幸せをかみしめた。

「ずっと一緒に……」

その後は言葉が出てこなかった。

俺の腕の中で、彼女は何度も首を縦に振ってくれた。

顔が見たくて彼女の顔を覗き込むと、彼女が驚きに目を瞠って、そっと俺の頬に指をすべらせた。

彼女の指をぬらすものを見つけて、自分も泣いてることに気がついた。

情けない男だと、彼女に思われたんじゃないかと不安になった。

そんな俺の不安なんか吹き飛ばすように、彼女はフワリと笑ってくれた。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

バナー
バナー 花のうてな みなみなみ様から頂きました。
バナー 桃色無印 きゅ。様から頂きました。
プロフィール

瑞穂

Author:瑞穂

最新記事
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新コメント
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
参加してます
実行委員長のAKI様のお宅にリンクしています。
フリーエリア
光の箱庭 惣也様主催
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。