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掌中の珠1

これにはオリキャラが出てきます。


久しぶりに帰宅すると、玄関に大きめのスニーカーが転がっていた。

明らかに見覚えの無いその薄汚れたスニーカーに、嫌な予感がした。

まさかと思いつつリビングを覗くと、もう二度と会う事は無いと思っていた疫病神が、TVを見ながらごろ寝していた。

「不法侵入とはいい度胸ね」

私の言葉も聞こえないぐらいTVに見入っているのか、奴は、お笑い番組を見てゲラゲラ笑っていた。

そんな態度にムカついて、スリッパを脱いで投げつけたら、見事に奴の後頭部に当たり、少しスッキリした。

「いて~何すんだよ」

奴は後頭部をさすりながら振り向いた。

そして私の顔を見るなり「ゲッ」とのたまった。

「家主の許可なく上がり込んで何やってるのよ。不法侵入で訴えるわよ」

「あん?キョーコの許可は貰ってるぞ」

奴はふてぶてしく笑った。

「ここの家主は私。キョーコの保護者は私。私はあんたがここにいる許可を出した覚えは無いわ!それよりキョーコはどこにいるのよ。まさか…無体な事したんじゃないでしょうね?」

こいつに虐められてどこかで泣いてるんじゃないかと思うと、心配で胸が潰れそうになった。

「けっ、誰があんな地味で色気のねぇガキなんか相手にするかよ」

中坊のくせに、言外に女には苦労してないと告げているのがムカついた。

こんなやつのどこがいいんだか。

「へぇ~馬鹿なあんたにしては、自分がガキだってことが理解出来てるのね」

「は?俺様の言ってるのはキョーコのことだろうが!」

「ガキなのは、あんたよ!女を見る目もないんだから。そんな節穴な目なら、いらないんじゃない?」

「勝手なことぬかすなよ」

「それはこっちの台詞でしょ。警察呼ぶわよ」

警察という言葉に奴はうろたえた。

「げっ、落ち着けって。ちゃんとキョーコの許可はもらってここに居るんだから、不法侵入じゃねぇよ」

「じゃあ、あんたがここにいること、女将さんもご存じなのね?」

「さぁてね」

「まさか、家出!?」

「仕方ねぇだろ?この俺様にあの旅館継げっていうんだぜ?俺様は歌手になりてぇんだよ!だからおん出てきたのさ」

「本当に、最低ね。私達を巻き込まなくてもいいでしょ?歌手になりたいなら自力で頑張ればいいじゃない」

「頼れる存在が芸能界で活躍してるんだ。あてにしない手はないだろ?」

世の中甘く見ている奴に益々ムカついてきた。

大体顔を見るだけでもムカつくのに。

「おあいにく様。私があんたの手助けなんてするもんですか!下手したら私がかどわかした事になるじゃない。さっさと出て行ってよ」

「いたいけな少年を追い出す気か?」

「こんなときだけ少年だと主張しないでちょうだい。歌手になりたいならなればいい。但し、私達と関係ないところでやってちょうだい。早く出て行って!」

「ただいま~あ!笙ちゃん帰ってたんだ。おかえりなさい」

言い争っていると、キョーコが帰って来た。

ニッコリと笑う顔を見て、何事もなかったんだと安心した。

「キョーコどこいってたの?」

「松ちゃんがプリンが食べたいって言ったから買いに行ってたの~」

こんな奴の為に、わざわざ買いに行かなくたって……

「キョーコ、こいついつからいるの?」

忌々しく思っていたら、奴が私の横からプリンを受け取ろうと手を伸ばした。

「でかした。よこせ」

その手がプリンを掴む前に、思いっきり叩いてやった。

「あんたにプリン食べさせる義理はないわよ。これはキョーコが食べなさいね?」

キョーコはプリンと奴を交互に見詰めていた。

「邪魔すんな笙子姉」

私に叩かれた手を痛そうにさすりながら、奴が私を睨みつけた。

「『笙子様』と呼びなさいって、あれ程躾けたのに、もう忘れたの?」

覚えの悪い頭に、拳骨を作ってぐりぐり押し付けた。

「いてぇ~な。何すんだよ」

奴が私の手を払いのけた。

「躾に決まってるでしょ。疫病神のくせに偉そうに」

「疫病神って言うな!」

「あら、ホントの事じゃない」

「俺様のどこが疫病神なんだよ」

自分の仕出かした事も覚えていないなんて…ホントにおつむが悪くて嫌になってくる。

「笙ちゃん、喧嘩しないで?」

私と奴のやり取りを見て、目に涙を浮かべるキョーコに困ってしまった。

「泣かないで、キョーコ。キョーコが泣くから出て行ってよ」

「松ちゃん帰るの?」

「あ?今日はここに泊まるって言っただろ?帰らねぇよ」

「じゃあ御夕飯作るね。今日は笙ちゃんもいるから嬉しいなぁ~」

喜んでキッチンに行ったキョーコに聞こえないように、小声で奴に告げた。

「あんた、さっさと出て行きなさい」

「せっかく夕飯一緒に食べる相手が出来たって喜んでるキョーコが、俺がいなくなったら悲しむぜ?」

「私がいるから問題ないじゃない」

キョーコと水入らずの時間を、どうしてこんな奴に邪魔されないといけないのか。

「キョーコ、笙子姉が、出て行けってうるさいんだよ。なんとか言ってやれ」

奴は大声でキョーコを呼びつけた。

「笙ちゃん、どうして?」

不思議そうに首をかしげる無垢な瞳が、愛しくてたまらなかった。

キョーコには、いつまでもそのままでいて欲しい。

「あのね、キョーコ。あいつ家出してきたのよ?そんな奴を家に置いてたら、私がそそのかしたようになってしまうのよ?」

「笙ちゃんはそんなことしてないのに?」

「そう、あいつが勝手に家出して家に転がり込んできたのによ?それでも女将さん達が警察に届け出て、家に置いてる事がわかると、私が家出をそそのかした事になってしまって警察に捕まっちゃうのよ?キョーコはそれでもいいの?」

「よくない!」

「でしょ?だからあいつを家におくわけにいかないのよ」

「でももう夕方だから、一晩だけ泊めるのも駄目なの?今から追い出したら松ちゃん可哀想」

「わかったわ。でも、明日になったら出て行ってもらうわよ?」

「うん。笙ちゃん悪くないのに捕まっちゃうのは嫌だもの」

「ありがとう、キョーコ。それにしても、あいつはどうしてここの住所知ってたのかしらね?」

キョーコを引き取った時に御礼状は出してたけど、ここの住所は書かなかったのに、どこから調べたのかしら……

「こないだ出した手紙じゃないかな?」

「え?キョーコ出してたの?」

「うん、女将さんに。いけなかった?」

「手紙を出すのはいけなくはないわよ?でもね、女将さんには私が出したからキョーコまで出したとは思わなかったわ」

「あ、そっか~やっと生活にも慣れたから、ご挨拶しないといけないと思って、つい出しちゃった」

テヘヘと笑うキョーコが可愛いかった。

こんなに可愛い姿を、奴に見せたくなかったから、奴の視界から庇うようにキョーコを抱きしめた。

私達のやり取りは興味がない様子で、奴の視線はTVに向いたままだった。

「女将さんも二人から別々に来てびっくりしたと思うわよ?」

「ごめんね。笙ちゃんが一生懸命働いてくれたお金無駄遣いしちゃって」

「いいのよ~手紙ぐらい。大した出費じゃないわ」

食事の支度をすると言ってキッチンに向ったキョーコの背中を見送って、奴に向き直った。

「今夜一晩は不本意だけど泊めてあげる。でも、明日には出て行ってよね」

「うっせ~な」

都合の悪い事は聞き流す特技の持ち主に、今後も付きまとわれないような対策を練る事にした。

「私が出勤するまでに出て行かないと警察呼ぶから。そしたら強制的に京都に帰されるわねぇ」

「げっ!鬼!」

「なんですって?なんなら今すぐ警察よんでもいいわよ」

「覚えてろよ。俺が有名になったら仕返ししてやるからな!」

「上等じゃない返り討ちにしてあげるから」

「家に世話になっといて、恩返ししようとも思わないのかね?」

女将さんたちにはお世話になったけど、こんな奴の世話になった覚えは無かった。

こっちが迷惑料を支払って欲しいぐらいだ。

「それはこっちの台詞」

「偉そうに」

「何の根拠であんたに『偉そう』とか言われないといけないのよ」

「家に置いてもらって、育ててもらって、学校に通わせてもらって世話になっといて、恩人の息子を助けれないっていうのを恩知らずと言って何が悪い」

鬼の首でも取ったように奴が言った。

「確かに女将さんたちにはお世話になったわよ。でもね、おいてもらった部屋代も、食べさせてもらった食費も、学校にかかる費用も全部あの人が女将さんに毎月送金してたわよ。その上に私達はお世話になってるからって学校から帰ったら旅館のお手伝いもしてたわよ?あんたの家に偉そうにされる筋合いはないわよ」

「は?」

「私達は今のあんたみたいに、他人の家でふんぞり返ってはいなかったわよ。わかったらもっと態度改めなさい」

「何いってんだよ。全部家が負担してたんだろうがよ」

「仲居さんたちがそんな風に言ってたから、女将さんに聞いたのよ。そしたら、ちゃんとあの人から送金されてる通帳を見せて貰ったわ。金銭的にはあんたの家の方が得してたのよ!食費だって、生活費だって、習い事の月謝だって、お小遣いだって、全部あの人が負担してたんだから。その上に、私達は旅館の手伝い無償でしてたんだからね」

思いもよらない事だったんだろう。

奴は暫く呆然としていた。

奴となんて話したくなくて、食事を終えたらさっさと後片付けして、キョーコと一緒に入浴して一緒に寝ることにした。

「キョーコ。今日は一緒に寝ようね。キョーコが襲われたらいけないから」

「だれがそんな地味で色気のないガキ襲うかよ」

キョーコを、こんな奴の毒に当てたくなかった。

「女を見る目のない奴のたわごとは放っておいて美容に悪いからもう寝ようね」

さっさと私の部屋にキョーコを連れて行って鍵を閉めた。

翌朝食事を取らせると、奴を速効叩き出し、キョーコを学校へ送り出してからスーツケースに数日分の2人の着替えを詰めた。

たった数カ月過ごした部屋だったけど、私にとってはキョーコと2人で初めて安らぐ事の出来たお城だったのに……

「さよなら。そしてありがとう」

誰もいない部屋に告げて、鍵を閉めた。

つづく

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