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掌中の珠2

これにはオリキャラが出てきます。

俺は常々自分は運がいいと思ってたんだ。

同僚が大変な担当を持つ不運をずっと横目で見てきた。

真面目で、頑張りやで、気立てが良くて後輩の面倒見もいい、スタッフ受けもいい、そんなモデルのマネージャーになれたことが誇らしかった。

そんなあいつを俺は『姫さん』と呼ぶようになった。

今まで我侭らしいことを言われたことがなかったのに、まさか姫さんに悩まされる日がこようとは思わなかった。

「女ってわかんねぇな」

今朝のやり取りを思い出し、思わず言葉をこぼすと、壁に頭でもぶつけたようなゴツンという鈍い音が聞こえた。

隣に立っていたはずの後輩に視線を向けると、痛そうに後頭部をさすり、ずり落ちた眼鏡をかけなおしながら、穴が開くかと思うぐらい俺を凝視していた。

「どうした?大丈夫か?頭」

「思わずふらっときただけですから。それよりどうしたんですか?らしくないこと言って」

後輩が、奇妙な生き物でも見るかのような目で、俺を見詰めていた。

「そうかぁ?」

「そうですよ。『この仕事についた時から彼女なんて作る暇もねぇ』とか言って『仕事一筋だ』と豪語する鈴木さんらしくないですよ」

「そんなこと話したっけなぁ」

記憶を探ってみたけど、近頃年のせいか忘れっぽくて、さっぱり思い出せなかった。

「話した、話してないはどうでもいいんですよ。ホントにどうしたんですか?好きな人でも出来たんですか?」

「好きな女なんてなぁ、そこら中にいるけどな」

何を聞いたのか理解出来ないといった感じで、後輩は唖然としていた。

まぬけ面を晒して、男前が台無しだな。

「そんなに恋多き人だったとは知りませんでしたよ」

「ん~まあな。社長の孫のマリアちゃんも憎めなくて好きだなぁ」

「は?」

「俺って、あの位の子供がいてもおかしくない年だから、ホントに娘みたいで」

「ちょっとすいません。話を遮ってしまいますけど、俺が聞いてるのは先輩を悩ませてる女性の話ですよ?」

「あ?そうだったか?好きな女の話かと思ってたよ。俺のいきつけのメシ屋のおばちゃんも好きだなぁ。いつもサービスしてくれるんだよね」

「鈴木さん!俺で遊んでます?」

少しイラついているような、後輩の声だった。

「いや?真面目に話してるつもりだけどな。まぁ俺を悩ませてるのは姫さんに決まってる」

撮影中の姫さんを見詰めた。

「雅さんが?鈴木さんを困らせるなんて信じられませんよ。逆ならともかく…」

「何で俺がマネージメントしてるモデルを困らせないといけねぇんだよ」

「いえ、先輩が、雅さんを困らせてるって言ってるわけではなくて、そういうことならありそうだって話ですよ」

「そんな奴はマネージャー失格じゃねぇか」

「まぁそうですけど。それで雅さんがどうしたんです?」

「引っ越したいんだと。ふざけるなって言ってやったんだがな」

「どうして引っ越しぐらいで…させてあげたらいいじゃないですか」

「今のとこに2、3カ月まえに引っ越したばかりなんだぞ?」

「近所の人とトラブルでもあったんじゃないですか?雅さんは何て言ってるんです?」

「何でも疫病神に見つかったとか言ってたな」

「それは穏やかではない表現ですね。ストーカーですか?」

「ストーカーの話は聞いたことがねぇなぁ。でもそれなら、あんなに必死になってたのも判るなぁ」

「そんなに?」

後輩は意外そうに言った。

育った環境のせいか、姫さんは同じ年頃の子よりも落ち着いて見えるし、俺もつい最近まで、姫さんの取り乱したところを見た事がなかった。

「今朝は開口一番『疫病神に見つかったんです。もうあそこには戻れません。どこかセキュリティのしっかりしたマンション知りませんか?』だぞ」

「尋常じゃないですよ。もっとちゃんと話しを聞いて対応してあげた方がいいですよ」

「ん~お前と話してたらそんな気がしてきたな」

「俺に話す前は突っぱねるつもりだったんですか?」

「というか、何も考えられなかったな。突如反抗期を迎えた子供を前にしたような、そんな感じかな」

「反抗期って…結婚もしてないのに、父親の心境ですか」

「そういうお前だって、独身のくせに、彼女もいねぇじゃねぇかよ」

「まぁやっぱり、忙し過ぎてってとこですね」

「ふぅ~ん。ま、どうでもいいけどな」

「俺の事より、先輩は、早く奥さんもらった方がいいですよ」

「ま~相手でもいればその内な」

話を切り上げ、休憩に入った姫さんの元へ向った。



「姫さんの話をちゃんと聞かずに、頭ごなしに怒鳴って悪かったよ」

「ホントに悪いと思ってます?」

頭を掻きながら謝る俺に、姫さんは苦笑していた。

「思ってるよ」

「じゃあ、これ全部食べたら許してあげます」

目の前に出された弁当に、思考が停止した。

「何だ?これは」

「お弁当以外に見えるなら、眼科に行かれた方がいいですよ?」

「いや、ちゃんと弁当に見える。なんで3つもあるんだ?」

「あの子が張り切って作ってたから食べないと可哀想じゃないですか。残さないで下さいね」

平然と告げられて、途方に暮れた。

「いくら俺が食べる方だって言っても、これは多すぎだぞ」

ふと思いついて後輩に電話をかけた。

相手の言葉も待たずに、電話に出た後輩に捲し立てた。

「おい、社。まだ昼メシ食ってないならなら敦賀君とお前に頼みがあるんだが、姫さんの楽屋に来てくれないか?」

「どうしたんですか?」

然して待つ事も無く、後輩と敦賀君が駆けこんできた。

「これ食うの手伝ってくれ」

俺の言葉に、二人は唖然としていた。

弁当とお茶を1つずつ手渡して、二人にイスを勧めた。

「姫さんが『残すな』って言うもんだからね。俺一人じゃ食いきれないってぇのに」

「いいんですか?鈴木さんのために作ってこられたんですよね?」

敦賀君が遠慮がちに口にした。

「いやだ、違います。私の妹が張り切って作り過ぎちゃって。残すとあの子が泣いちゃうから食べきって下さいねってお願いしてたんですよ。よろしかったら召し上がってください。社さんと敦賀君の嫌いなものが入ってなければいいんだけど」

「遠慮なく頂きます」

「手料理なんて久しぶりですよ」

「あ、うまい」

「おいしい」

一口食べて呟かれた言葉に、姫さんが極上の笑顔を見せた。

「うまいだろ?」

「どうして先輩が自慢気なんですか」

後輩が苦笑していた。

「美味しいお弁当を食べれたことを、俺に感謝しろ」

「感謝するなら、雅さんと、妹さんですよ」

俺と後輩のやり取りを、姫さんと敦賀君は笑って見ていた。

「それにしても妹さんって、料理上手なんですね」

「そうでしょう?自慢の妹なのよ」

後輩の言葉に、姫さんが嬉しそうに笑った。

「こんなに料理上手な妹さんだったら、さぞ引く手あまたでしょうね」

妹の年齢を知ってる俺は何と言うべきか言葉に悩んだ。

姫さんも、キョトンとしている。

「俺、何か変なこといいました?」

後輩が怪訝そうに見詰めてきた。

「お前、姫さんの妹っていくつだと思ってるんだ?」

「え?雅さんの妹さんだったら、俺より少し下ぐらいでしょ?」

「お前、姫さんがいくつか知ってるのか?」

「俺と同じか1つ2つ下ぐらいでしょ?」

「姫さんは今年20歳になったばかりだぞ?」

担当ではないとはいえ、自分の事務所のしかも、自分の担当の仕事仲間の年齢ぐらい把握してろよ。

「えぇ~!ごめ、いや、すみません。大人びてるからつい…」

「いえ、気にしてませんから。いつも実年齢より老けて見られちゃって…」

「え?じゃあ妹さんって蓮ぐらいの年ですか?」

「まだ中学生なんですよ」

姫さんが笑って告げたその言葉に、後輩は顎が外れるんじゃないかと思うぐらいまぬけな顔をしていた。

「中学生でこの料理の腕前は凄いですね」

敦賀君も驚嘆していた。

姫さんが嬉しそうに笑うと、携帯が着信を告げた。

慌てて姫さんがバッグから携帯を取り出した。

携帯に付けられたストラップに思わず目が吸い寄せられた。

「また、可愛らしいのつけてるな」

「お守りだって妹がくれたの。かわいいでしょ?」

妹を溺愛してる姫さんは、ホントに嬉しそうに笑った。

「おまたせしました…」

電話に出た姫さんの笑顔が消えて、顔色が悪くなっていったことに驚いた。

思わず箸を休めて、姫さんの顔を覗きこんだ。

後輩と敦賀君も、心配そうに姫さんの顔を見つめていた。

「どうした?」

姫さんの傍まで行くと、急に倒れ込まれて思わず抱え込んだ。

「危ない!おい、姫さん、仮にもモデルなんだから気をつけろ。身体に傷やあざなんか作るんじゃない!」

姫さんは俺の言葉が聞こえてないようで、ガクガクと震えていた。

「どうした?具合でも悪いのか?」

「キョ……コが…」

「ん?妹がどうかしたのか?」

「あの子が襲われて、ショックを受けてるって…行かなきゃ。あの子、迎えに行かなきゃ」

「待て、姫さん。酷なようだがな、まだ行けないぞ?仕事を放り出すんじゃない」

「え?ちょっと先輩それは…」

「社は黙ってろ!」

俺の剣幕に、後輩が息を呑んだ。

「いいか?すぐに行きたい気持ちはわかる。2回ぐらいしか会ってない俺だって心配だ。迎えに行くなら、この仕事が終わってからだ。幸い午後からはそうは時間がかからないだろ?だからしっかり一発で撮り終わらせてこい!」

「先輩…」

「俺の知ってる姫さんならやれる!お前はそういう風に育ってきたはずだ。少し一人にしてやるから気持ちを落ちつけろ。いいか?泣くんじゃないぞ?泣いて目をはらしたりするなよ?泣くならこの仕事が終わってからにしろ」

そうして後輩と敦賀君を促して楽屋を出た。

「厳しいんですね」

後輩が小さく呟いた。

「ここはそういう場所だ。社も覚えとけよ。お前の担当俳優の方がよっぽど理解してるぞ」





敦賀君の協力もあって、然して時間がかかることなく撮影が終了した。

震える姫さんを叱咤して、姫さんの妹が待つ学校へ向った。

前に会った時は無邪気に笑っていたのに、今日はショックが強かったのか、キョーコちゃんは呆然として医務室のベッドに座っていた。

「キョーコ!ごめんね、遅くなって、もう大丈夫だからね」

姫さんが抱き締めると、ぼんやりとキョーコちゃんは視線を向けた。

「笙ちゃん…?どうしてここに?」

「ごめんね、すぐに来られなくて」

「笙ちゃん…笙ちゃん…」

キョーコちゃんは姫さんの胸で泣いていた。

「怪我したの?どこか痛いの?」

「ごめ…ん…な…さ…笙ちゃ…んが、買…って…くれ…た携帯…壊…れちゃ…った…」

しゃくりあげながら謝るキョーコちゃんに胸が痛くなった。

「そんなの、また新しいの買ってあげる」

そのまま二人をそっとして、医務室を出た。

これが姫さんの言ってた疫病神の仕業なのか……

疫病神というのがその辺をうろついてて、姫さん達を尾行していたらいけないと思ったから、ホテルに泊まるつもりだった姫さんとキョーコちゃんを俺の部屋に連れ帰った。

男の一人暮らしの部屋なんてどこもこんなものだろうと思うのに、姫さんとキョーコちゃんは呆然としていた。

「とりあえず、今夜はここで我慢してくれ」

俺の部屋の惨状に、キョーコちゃんのショックも薄れたのか、テキパキと部屋を片付けだした。

別に掃除してもらうために連れてきたわけじゃないんだが……

よかれと思った事で、ばつが悪くなった。

その夜は遅くまで、姫さんとキョーコちゃんはボソボソと何か話していた。

話の内容は全く聞き取れなかったが、少しでも襲われたショックが薄れて眠る事が出来るようにと祈るぐらいしか、俺には出来なかった。

つづく  1へ

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