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君恋ふる26



不意に彼女の視線がテレビに釘づけになった。

何か彼女の好みのものでもあるんだろうか。

彼女に釣られるようにテレビを見た。

知り合いが出てるわけでもない、ただのラップのCMだった。

昨日無駄にしたから、新しいものを買わないとっていうのが、彼女が考えてることかな?

そう思っていたのに、社さんに見つめられてることに気付いた彼女が、ほんのりと頬を染めた。

その姿は、社さんに恋してるようにも見えて、イラついてしまいそうになった。

落ち着け。

彼女のことだから、昨日泣いたことでも思い出して恥ずかしくなったのかもしれないだろ。

自分に言い聞かせていたら、彼女が俺を見つめていた。

泣きたくなったら、俺の胸で泣いてね?

君が安心して泣けるなら、いつでも俺の胸を貸すから。

俺の心の声が聞こえたのか、途端にりんごのように真っ赤な顔をして、彼女は楽屋を飛び出して行った。

ホントに心の中を読まれていたのか?

テレパシーなんて使えるなら、彼女があんなに無防備に俺に近寄るわけはないな。

動揺していた俺より先に、社さんは彼女を追って楽屋を出て行こうとした。

ドアのところで立ち止まっているところを見ると、彼女はすぐそこにいるんだろう。

真っ赤になって恥じらう彼女の顔を想像していたら、落ち着かなくなった。

あんなに凶悪に可愛らしい顔をそこら辺で披露していたら、また馬の骨にからまれるんじゃないだろうか。

彼女を迎えに行こうと立ち上がったら、社さんが楽屋のドアを閉めた。

「キョーコちゃんは心配しなくても、すぐ戻るだろ。それより、キョーコちゃんと何があった?」

「何もないですよ」

緩んでる顔なんて見られたら、またからかわれてしまう。

そう思って顔を引き締めた。

「蓮君?お兄さんに洗いざらい話してごらん?」

社さんは、意地の悪い笑みを浮かべていた。

「何もないですよ」

「そんなわけないだろ?たかがラップのCMでキョーコちゃんのあのうろたえぶりはおかしすぎる!何かあったに違いない!まさか…俺に言えないような不埒な真似を」

「してません!」

社さんの言葉を遮った。

「じゃあ何があったか、話してみろ」

「大したことじゃないですよ」

一体どんな想像をしてるんだか……

思わずため息がこぼれた。

「だから何だ?」

「昨夜キョーコちゃんがラップを使おうとして引っ張ったら、弾みで箱から飛び出して足下に転がったんですけど、焦ったキョーコちゃんがラップを引っ張ったので、トイレットペーパーで遊ぶ猫みたいにですね…」

「それを思い出したと?」

「でしょうね。急に悲鳴をあげられて、俺もびっくりしましたよ」

「そんなことなんだ」

「半泣きになって可愛かったですよ」

あの時の彼女の表情を思い出すだけで、顔がゆるんでしまう。

「そうかそうか。それは可愛かっただろうなぁ。で、思わず抱き締めて」

「してません!」

納得がいかないのか、社さんは怪訝な顔をしていた。

「してないのか?一体いつになったら進展するんだよ。今のキョーコちゃんなら何の問題もないだろうが。お前だって気付いているんだろ?」

確かに、社さんの言うように、今の彼女はまぎれも無く俺に好意を寄せてくれていると思う。

今の彼女なら俺を受け入れてくれるだろう。

今知ってしまったら、彼女の記憶が戻った時に手放せるはずもない。

告白するなら、彼女の記憶が戻ってからだ。

社さんが、俺と彼女のことを心配してくれているのはわかる。

興味本位で煽られてるわけじゃないとは思う。

それでも、俺の気持ちも知らないで、無責任な事をと恨みがましく思ってしまう。

俺だって鉄で出来てるわけじゃないんですよ。

怖いんです。

彼女を失うのが。

言葉にならずに、社さんを見つめた。

黙っていたら、社さんがそっと楽屋を出て行った。

きっと彼女を迎えに行ったんだろう。

ねぇキョーコちゃん、昨夜ラップが無駄になったと君が泣くから、転がった部分を切り取って何かに使えるようにと二人でラップを畳んだよね。

俺の方から畳んでいって、すこしずつ君に近づいて……

ラップが君の心との距離のようで……

あんな風に記憶が戻った君とも、心の距離が縮められたらいいのに……

「蓮!」

考え事をしていたら、社さんが楽屋のドアを荒々しく開けた。

酷く慌てている様子の社さんに、不吉な予感がした。

「キョーコちゃんがいなくなった」

「え!?」

「戻ってこないから、具合でも悪いのかと心配して、通りかかった松田さんに覗いて貰ったんだ。女子トイレに駆け込んだ筈のキョーコちゃんの姿がない」

その言葉に、すかさず楽屋を飛び出していた。

ごめん、キョーコちゃん。

また一人にさせて、ごめん。

どうか無事でいて。

25へ   つづく

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