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君恋ふる27

キョーコ

ラップ……

ホントはこんなに使いやすいはずなのに、どうして昨日は箱から飛び出しちゃったのかしら。

思わず悲鳴をあげちゃったせいで、敦賀さんに心配かけちゃったし……

急にテレビに見入って、変に思われたんじゃないかしら。

そっと視線を向けると、社さんが私を見つめていて、昨夜ラップを転がしたことまで見透かされたような気がして、恥ずかしくなった。

社さんの視線から逃れたくなって俯いてしまった。

昨夜のことを今頃恥ずかしがってるなんて、敦賀さんはどう思われたかしら。

覗き見るように敦賀さんを見上げたら、敦賀さんは優しく微笑んで私を見つめていた。

「笑って?キョーコちゃんが笑ってくれる方が、疲れなんて吹き飛ぶから」

不意に昨夜の敦賀さんの言葉が甦ってきて、顔がすごく熱くなった。

やだ。絶対真っ赤になってる。

社さんにも、敦賀さんにも変に思われちゃう。

赤くなった顔を見られたくなくて、とっさに楽屋を飛び出して、女子トイレに駆け込んだ。

トイレで鏡を覗くと、そこには真っ赤な顔をした自分が映っていた。

こんなに真っ赤になってるなんて。

顔が熱い……

顔の熱が引くまで、ここにいよう……

パタパタと手で扇ぎながら、昨夜のことを思い出していた。

敦賀さんが何かに使えるようにって、落とした部分を切り取ってくれて、私に端を持たせてラップをたたんでくれたのよね。

敦賀さんがすこしずつ近づいてきて……

「俺のハンカチ使う?」って聞かれた事とか、屋上で抱き締められたこと思い出して……

ラップがすこしずつたたまれて、敦賀さんとの距離が縮まって……

こんな風に、敦賀さんとの心の距離も縮まったらいいのにって……

ねぇコーン、コーンもそう思うでしょ?

敦賀さんは自分が悩んでることを何も話してくれないんだもの。

時々何かを考え込んでる姿見てると、何の役にも立てない自分が悲しいの。

ねぇコーン、私にコーンのような魔法が使えたら、敦賀さんに魔法をかけるのに。

何でも私に話してもらえるように、そんな魔法ないかしら?

ねぇコーン、何が敦賀さんの瞳を曇らせてるのかしら。

考え事してたら、肩を叩かれて、思わず飛び上がってしまった。

「ひゃっ」

「ごめんなさい。驚かせて…」

私の悲鳴に、その人まで驚いていた。

誰…?

綺麗な人……

「ご、ごめんなさい。考え事してたのでびっくりしてしまって…」

「わかるわぁ。記憶が戻らないのは不安よね?」

「えっ!?」

告げられた言葉で、初めて気付いた。

最初はすごく不安だったのに、いつの間にか不安なんてなくなってたことに。

これもコーンと敦賀さんの魔法かしら?

だって、敦賀さんの傍にいると、不安を感じることなんて何もないんだもの。

「えーっと、キョーコちゃん?聞いてる?」

「え?あ、ごめんなさい」

いけない。

また自分の考えに没頭してた。

目の前の人を無視してるみたいで失礼よね、私って。

「あのね、キョーコちゃんに会いたがってる人がいるんだけど、会ってくれないかしら?」

「私に?じゃあ、社さんと敦賀さんに行ってきていいか聞いてきますね」

「待って」

とっさに手を掴まれて、振りかえった。

「こっそり会って欲しいのよ。その…キョーコちゃんに会いたがってる人は、敦賀さんとは友好的じゃないから、反対される心配があるの。もしかしたらキョーコちゃんの記憶が戻るきっかけになるかもしれないのに、反対されてその機会が失われるのは嫌じゃないかしら?」

「記憶が?」

「えぇ。取り戻したいわよね?」

私の記憶が戻ったらどうなるのかしら?

敦賀さんの瞳を曇らせているのは、もしかして、私の記憶がなかなか戻らないから?

「長くは時間をとらせないから」

「わかりました」

縋るような目で見つめられて、その言葉に、同行することにした。

すみません、社さん、敦賀さん。

すぐに戻りますから。

あ、携帯…バッグの中にいれたままだったわ。

すぐ戻るから平気よね?

身に付けとけって言われたのに…ごめんなさい。





連れて行かれた楽屋に、見覚えのある人が座っていた。

えっと…誰だったかしら……

「じゃあ、私は外にいるから」

そう言って、私を連れてきた人はドアを閉めた。

楽屋の中に二人きりにされて、途方に暮れてしまった。

この人確か…モー子さんとTV局に来た時に会った人よね?

「久しぶりだな、キョーコ。お前の動画見たぜ。『こんにちは、妖精さん』だなんて、よくも恥ずかしげも無く言えたな。何だよ、あの動画」

動画って、こないだブリッジロックの人に見せて貰ったやつかしら?

大勢の人にはしゃいでるところを見られたのは恥ずかしかったけど、あの言葉は恥ずかしいものじゃないもの。

だってあれは、虹の向こう側にいた敦賀さんに向けた言葉だったんだもの。

敦賀さんは妖精さんみたいなんだもの。

それに敦賀さんは、あの時「妖精が住んでそうかな?」って言ってくれてたもの。

「お前付き人やってるんじゃなかったのかよ」

私が何かするのと、この人は関係があるのかしら?

「なんだよ、その顔は。笑えよ。笑うぐらい出来るだろ?お前仮にも女優の仕事やってたじゃねぇかよ。笑えよ」

急に笑えとか言われても……

「なぁ、お前ホントに俺のこと覚えてないのか?ガキの頃から一緒に育ってきたんだぞ?他の奴はともかく、お前が俺のことまで忘れちまうのは嫌なんだよ。早く思い出せよ。俺のこと忘れたままなのは許さねぇぞ」

苛立つ感情を隠そうともしないで、そう告げられても、思い出せないのだから困ってしまった。

目の前の人に、どうすればいいのかわからなかった。

私が黙っていなくなって、社さんと敦賀さんも怒ってるんじゃないかしら。

そんなことを考えたら、急に不安になった。

気がついた時には、手を伸ばせば触れられるところまで近寄られて、何故だか怖くなった。

反射的に後ずさったら、肩を掴まれた。

「今、何を考えてた?まさか、あの野郎のことじゃねぇだろうな?」

掴まれた肩が痛かった。

あの野郎が誰のことだかわからなくて返事も出来なかった。

「何とか言えよ、キョーコ」

黙ってる私に苛立っているようだった。

「痛いです。放してください」

「俺のこと思い出したら放してやるよ」

そんな風に言われて、不穏な空気が怖くてたまらなかった。

「そんなこと無理です。何も覚えてないのに………」

「思い出さないと、許してやらない」

「あなたに許しを乞わないといけない理由はないはずです」

突き飛ばそうとしたら、腕を掴まれた。

掴まれた腕が痛くて、怒られるわけもわからなくて、怖くてたまらなかった。

「お前がキョーコだから、俺を忘れたことが罪なんだよ」

「わけがわかりません、仮にあなたと子供の頃から一緒に育ってきたというのが本当だったとしても、なぜ責められるんですか」

理不尽な言われように、涙があふれてくる。

私の言葉に、目の前の人からは、ますます剣呑な雰囲気が漂ってきた。

「お前が、あの野郎のこと考えるのがむかつく」

わけがわからなくて、頭がおかしくなりそうだった。

「どうし…て……放して!」

「そうだ!お前のファーストキスの相手は俺だったんだから、俺とキスしたら記憶も戻るんじゃないのか?」

この人は一体何を言い出したんだろう。

一緒にいてもただ怖いだけなのに、私がこの人とキスをしただなんて絶対あり得ないと思った。

「キョーコ!」

掴まれた腕を振りほどこうと暴れた私をどなりつけた。

「いや!もう何も聞きたくない!放して!やめて!」

私が叫んだら、部屋のドアが荒々しく開いて、私をここへ連れてきた人が立っていた。

「尚、あなたキョーコちゃんに何をしてるの。嫌がってるじゃない。そんなことさせるために来てもらったんじゃないのよ?」

その人の言葉で拘束が緩んで、私はとっさにそこから逃げ出した。

どこを通ってきたのかも覚えてなかったから、不安でたまらなかった。

後ろから追いかけられて怖かった。

「来ないで!」

そう言ってもずっと追いかけられて、恐怖でパニックを起こしていた。

「来ないでってば!」

私の願いは聞き届けられなくて、怖くて必死で走った。

いや………怖い。助けて………誰か。助けてコーン。助けて敦賀さん!

心の中で敦賀さんに助けを求めながら、泣きながら走りまわった。

敦賀さんの笑顔が見たかった。

怖くなんてないから大丈夫だって笑い飛ばしてほしかった。

自分が走ってる場所さえわかってなくて、女の足では逃げ切れなくて、腕を掴まれて泣き叫んでしまった。

「いや!やめて!放して」

どうして周りに人がいるのに、みんな見て見ぬふりなの?

だれも助けてくれなくて、悲しくなった。

「キョーコちゃん!」

人垣の向こうに、ひときわ目立つ背の高い人を見たとき、ホッとしてしまった。

顔を見ただけで、安心出来て、涙があふれてきた。

「敦賀さん!敦賀さん!敦賀さん!」

駆けつけた敦賀さんが、私を拘束してる腕をひねり上げると、私の腕を掴んでた手から力が抜けて、その手を振り切って敦賀さんに飛びついた。

敦賀さんは、勢いよく抱きついた私を受け止めてくれて、その腕の中で泣きじゃくってしまった。

「心配したよ」

「ごめ…なさい…勝手に…」

「無事でよかったよ」

「怖…かった……」

「もう大丈夫だよ」

敦賀さんの声はとても優しくて、すごく安心出来た。

その後のことは、よく覚えていなかった。

26へ   つづく

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