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君恋ふる28

読んでみたいですとおっしゃって下さる方がいらっしゃましたので、尚視点を書いてみました。



「えぇ~これ、詐欺天使?」

「全然雰囲気違うじゃん」

「この動画、レイノ君は知ってるのかな?」

そんなビーグールのメンバーの会話を、不意に思い出した。

キョーコがどうしたって?

動画って何だ?

キョーコの動画でもあるのか?

思い出したついでに、気になったので、探してみた。

検索かけたらすぐに見つかったその動画に、目を奪われた。

『こんにちは、妖精さん』

その笑顔に、俺の事を『ショーちゃん』と呼んでいた頃のキョーコを思い出した。

あぁ、こんな風に笑う奴だったよな。

もうこんな笑顔を見ることはないと思ってたのに、あの頃俺に向けていた笑顔を、今は他の奴に向けるのか?

何が『妖精さん』だよ。

いるわけねぇだろ、妖精なんて。

「尚、どうしたの?」

祥子さんの呼びかけにも答えず、携帯を握りしめていた。

「あら、キョーコちゃんだわ。記憶は戻らないらしいけど、元気そうね」

その言葉にハッとした。

周囲を見渡すと、あの野郎に動画のままの笑顔を向けているキョーコがいた。

お前は俺のもんなんだよ。

お前は俺だけ見てればいいんだよ。

「尚。具合でも悪いの?」

「なぁ、祥子さん」

俺を気遣う祥子さんの顔も見ずに、呼びかけた。

「あいつ。キョーコ、呼んで来てくれねぇか?」

「どうして?」

「どうしてって…曲がりなりにも幼馴染だし…俺しか知らない話を聞く事で、何か思い出すかもしれねぇだろ?」

「でもね、尚」

「あいつが俺の事忘れたままなのが嫌なんだよ。なぁ祥子さん、頼む。祥子さんなら、あいつだけを内緒で何とか連れて来れるだろ?」

「キョーコちゃんが忘れてる事を責めたり、嫌がる事はしないわよね?」

「ただ話しをするだけだよ。あいつの恥ずかしい昔話を聞かせてやれるのは、俺だけだろ?」

「ちょっと尚!」

「冗談に決まってるだろ」

「わかったわ。キョーコちゃんも記憶が戻る方がいいでしょうし」





なかなか戻らない祥子さんにイライラしてると、ノックと共に開いたドアの向こうに、キョーコの姿が見えた。

「じゃあ、私は外にいるから」

キョーコだけを楽屋に入れて、祥子さんはドアを閉めた。

二人きりにされて、キョーコは困惑しているようだった。

「久しぶりだな、キョーコ。お前の動画見たぜ。『こんにちは、妖精さん』だなんて、よくも恥ずかしげも無く言えたな。何だよ、あの動画」

俺の言葉に、キョーコはちょっとムッとした顔を見せた。

「お前付き人やってるんじゃなかったのかよ」

黙ったまま仏頂面で俺を見つめるキョーコに、イラついた。

「なんだよ、その顔は。笑えよ。笑うぐらい出来るだろ?お前仮にも女優の仕事やってたじゃねぇかよ。笑えよ」

笑わないのは当たり前か……

俺がこいつを捨ててからは、記憶をなくす前だって、俺に笑いかけたりはしなかったのに。

「なぁ、お前ホントに俺のこと覚えてないのか?ガキの頃から一緒に育ってきたんだぞ?他の奴はともかく、お前が俺のことまで忘れちまうのは嫌なんだよ。早く思い出せよ。俺のこと忘れたままなのは許さねぇぞ」

例え恨みや憎しみといったものだったとしても、俺の存在は確かにこいつの中にあったはずなのに。

お前、俺に復讐するって言ってたくせに、俺を忘れることで復讐完了だなんて、そんな終わり方でいいのかよ。

俺の言葉が聞こえてないのか?

目の前にいるのに、俺を見ていない。

おい、何を考えてるんだ?

キョーコに詰め寄ったら、反射的に後ずさられて、咄嗟に肩を掴んだ。

「今、何を考えてた?まさか、あの野郎のことじゃねぇだろうな?」

目の前にいるのに、俺のことなんてどうでもいいって言うのか?

俺のことは考える必要がないって言うのか?

キョーコは、痛そうに顔を歪めていた。

「何とか言えよ、キョーコ」

黙ってるキョーコに、余計イラついた。

「痛いです。放してください」

キョーコの口から出た言葉に、笑いがこみあげてきた。

「俺のこと思い出したら放してやるよ」

「そんなこと無理です。何も覚えてないのに………」

「思い出さないと、許してやらない」

「あなたに許しを乞わないといけない理由はないはずです」

突き飛ばされそうになって、腕を掴んだ。

知らない人に拘束されて怖いと、キョーコの目が語っていた。

お前、なんて目をしてるんだよ。

「お前がキョーコだから、俺を忘れたことが罪なんだよ」

「わけがわかりません、仮にあなたと子供の頃から一緒に育ってきたというのが本当だったとしても、なぜ責められるんですか」

キョーコの目に、涙があふれてきた。

あの野郎にはあの頃の笑顔を見せるくせに、俺には涙を浮かべるのか?

「お前が、あの野郎のこと考えるのがむかつく」

「どうし…て……放して!」

もうキョーコの中に、俺は存在すらしてないのか?

バレンタインにあんな画策したのも無駄だったのか?

冗談じゃねぇぞ。

絶対思い出させてやる。

「そうだ!お前のファーストキスの相手は俺だったんだから、俺とキスしたら記憶も戻るんじゃないのか?」

もう一度したら思い出すかもしれない。

忘れたままでも、こいつの中に俺の居場所が出来るかもしれない。

暴れ出したキョーコを力づくで押さえこんだ。

「キョーコ!」

大人しくしてろ!

「いや!もう何も聞きたくない!放して!やめて!」

キョーコの叫び声が聞こえたのか、祥子さんが、楽屋のドアが荒々しく開けた。

「尚、あなたキョーコちゃんに何をしてるの。嫌がってるじゃない。そんなことさせるために来てもらったんじゃないのよ?」

そんなことって何だよ。

キョーコに俺を思い出させるために呼んだんじゃないかよ。

俺を思い出させようとしてるのに、邪魔をする祥子さんにむかついた。

その隙をつくように、キョーコが俺の拘束から逃げ出した。

慌ててキョーコを追いかけた。

「来ないで!」

時々後ろを振り返りながらキョーコが逃げる。

「来ないでってば!」

キョーコの運動神経がいいことは知ってたけど、結構逃げ足が速いな。

記憶がないせいで、不案内なのが助かって、キョーコを捕まえることが出来た。

「いや!やめて!放して」

なんでこんなに嫌がってるんだよ。

昔はあんなに俺のこと好きだと言ってたじゃないかよ!

「キョーコちゃん!」

いやな奴の声が聞こえた。

「敦賀さん!敦賀さん!敦賀さん!」

キョーコが奴の名前を必死に呼んだ。

俺の前で、お前はあいつに助けを求めるのか?

駆けつけた奴に腕をひねり上げられると、痛みでキョーコを掴んでた手から力が抜けた。

キョーコが俺の手を振り切って奴に飛びついた。

奴は、勢いよく抱きついたキョーコを受け止めた。

キョーコは、その腕の中で泣きじゃくっていた。

「心配したよ」

「ごめ…なさい…勝手に…」

「無事でよかったよ」

「怖…かった……」

なんだよ、陳腐なラブストーリーみたいなこの展開。

手が痛くなるほど握りしめていた。

「もう大丈夫だよ」

そう聞いた途端、キョーコの腕から力がぬけて、奴が慌てて叫んだ。

「キョーコちゃん!?しっかりして」

奴はキョーコを抱きあげると、俺を睨みつけてきた。

俺のものをどうしようと、俺の勝手だろ!

俺も負けじと睨み返した。

「蓮!」

奴が口を開く前に、奴のマネージャーが俺達の間に割り込んできた。

俺からキョーコを隠すように立ちふさがって、キョーコの顔が見れなくなった。

「早くキョーコちゃんを連れて行け」

奴は俺を一睨みすると、俺に背中を向けて歩きだした。

奴の後を追おうとした俺の前に、ガキが仁王立ちしていた。

「松田、ついて行け」

偉そうに顎で指図して、俺の邪魔をする。

「なんだよ」

「お前、どこに行くつもりだ!」

こんなガキまでキョーコの知り合いなのか?

「不破君、ちょっといいかな?君と君のマネージャーさんに話があるんだけど」

「俺にはない」

奴のマネージャーに、そっけなく言い放った。

「君にはなくても、付き合ってもらうよ」

眼鏡の奥から冷たく睨まれて、咄嗟に言葉が出なかった。

なんだよ…

なんで、どいつもこいつも俺の邪魔ばかりするんだよ…

俺が何をしたって言うんだよ…

俺を思い出させようとしただけじゃないかよ!

俺を忘れた、あいつが悪いんだよ!

27へ   つづく

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