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君恋ふる29

既にたくさんの方に読んで頂いているようで、今更な感じがありますが、原作のネタバレがありますので、ご注意下さいm(__)m(4/16 8:22AM 追記)


蓮の楽屋まで戻ると、廊下まで騒ぎが聞こえてきた。

何だろう?

慌てて楽屋に飛び込むと、正座しているキョーコちゃんの前で、上杉君が仁王立ちして怒鳴っていた。

「お前は何度言ったらわかるんだ!知らない人について行くなと、あの時も言っただろうが!」

「ごめんなさい」

キョーコちゃんは目に涙を浮かべていた。

正座しているから、自然と上杉君にも上目遣いになり、そんな表情を直視した上杉君は、途端に真っ赤になって言葉に詰まっていた。

「キョーコちゃんも反省してるから、その辺で許してあげてくれないかな?」

蓮が黙り込む二人の間を仲裁していた。

「お前に何かあったら奏江が悲しむんだ。だから気をつけろよ!」

ぶっきら棒に叫んで、上杉君は楽屋を飛び出して行った。

「敦賀さん、社さん、黙っていなくなってごめんなさい」

「次からは黙って行かないでね?」

そう言うとキョーコちゃんは小さく頷いた。

上杉君のお説教が利いているのか、元気がない。

「俺、今から事務所に行くから、蓮とキョーコちゃんは先に帰ってて」

「送って行きますよ」

「いや、キョーコちゃんも参ってるし、早く帰って休ませた方がいいから。キョーコちゃんも今日は夕飯を作ろうと思わないで、これで我慢してね?」

手にしたお弁当を掲げて見せた。

キョーコちゃんは何か言いたげに見詰めていたけど、お弁当を蓮に手渡して楽屋を出た。


  * * *


「お話があるのですが、少しお時間頂けますか?」

「えっ?は、はい」

突然の申し出に、驚いているようだった。

「聞くことねぇよ、祥子さん」

不破君が、ぶっきら棒に言い放った。

「尚」

仕方のない子ねぇと言いたげなその表情に、安芸さんは普段から不破君を甘やかしているような気がした。

「どうせ苦情だろ」

不破君は面白くなさそうに言った。

「不破君は、苦情を言われるようなことをしたと認めるんだね?」

「冗談じゃねぇ。ちょっとあいつと昔話しようとしただけじゃねぇか。そんなんで、苦情言われる筋合いねぇな」

「昔話?」

「えぇ、そうなんです。尚が、自分しか知らない話を聞かせたら、記憶が戻るきっかけになるんじゃないかって」

昔話という言葉で、欺けると思っているんだろうか。

「随分物騒な昔話なんですね」

「えっ?物騒?」

「気が付かれませんでしたか?キョーコちゃんの手首に掴まれた痕が残っていたのを。あんなに痕が残るぐらい掴むなんて、まるで襲われてたように思えますよ」

「尚」

びっくりして不破君を見つめるその様子から、安芸さんは知らなかったようにも感じられた。

もしかして、不破君とキョーコちゃんを二人きりにさせていたのか?

「あいつが人の話を聞こうとしないから、聞けって言っただけじゃん。耳を塞げないように」

キョーコちゃんは色白だけど、耳を塞げないようにしたぐらいで、あんなにくっきりと残るのか?

腑に落ちなかった。

「君はどこまでキョーコちゃんを傷付けたら気が済むんだい?」

「は?傷付ける?何の事だよ」

「今のキョーコちゃんは、以前に輪をかけて人を疑う事を知らない、真っ白な心の持ち主なんだよ。ついてこいと言われたら、素直について行くぐらいにね。そのキョーコちゃんが、耳を覆いたくなるようなことなんて、聞くに堪えない酷い事でなかったら、何だと言うんだろう」

「暴言なんかじゃねぇよ。ちゃんと真実を告げただけだ。『お前のファーストキスの相手は俺だ』ってね」

キョーコちゃんにしたら、確かに聞くに堪えないことだっただろうな……

「尚、ホントなの?」

「何疑ってるんだよ、祥子さん。嘘ついてどうなる」

「それから?」

「それだけだよ」

「君は何か勘違いをしてないかな?」

「勘違いだと?あんただって見てたじゃねぇかよ」

「あぁ、バレンタインデーに、君が大きな花束持ってきて、キョーコちゃんに会ってたのは知ってるよ。俺達の目の前で話してたしね」

「その時したじゃねぁか」

「あれはそうじゃないだろ?少なくとも、心が伴ってない」

そう、蓮は役者の心得だと言った。

「何言ってるんだよ。キスしたことはホントじゃねぇか」

「ただ肩がぶつかったっていう感じ以外の何物でもないよ」

「は?あんなディープなのしてやったのにか?」

「君が何を狙ってやったことなのか、俺にはわからない。でも、あの場にいたのは、嘘をホントに見せる者達だよ」

「だからなかったことにするって言うのかよ」

ムキになる不破君に呆れてしまう。

「あったことにして欲しいなら、君は罪に問われるね」

「何でだよ」

法律に詳しくない俺でも、あれは犯罪として認められるのに、その事には考えが及ばないんだろうか。

「そうされてもおかしくないことをしたんだよ。そしてその場合、君が未成年だからマネージャーさんも訴えられてもおかしくない」

「えっ?私?」

自分が話題に上って驚いている安芸さんにを、冷たく見詰めた。

「少なくても、今日の誘拐はそうでしょう」

「誘拐だなんて…会いたがってる人がいるから会って欲しいってお願いしただけで…」

「キョーコちゃんには記憶がありません。記憶が戻るきっかけになればと、いろんな場所を見学してるだけです。俺達は社長からキョーコちゃんを預かってるんです。その俺達に一言も無く連れ出して、誘拐ではないと?一言言って下されば、ここまで大きな騒ぎにならなかったのに」

TV局の中で、あれだけ堂々と追いかけっこを繰り広げ、この騒ぎをどう収拾つけるつもりなのか。

おかげで俺はキョーコちゃんを発見しやすかったけど。

何も知らない者が見たら、嫌がるキョーコちゃんを追いかける不破君は、ストーカーにしか見えなかっただろうに。

「言ったらキョーコを来させねぇだろうが」

自覚があることに苦笑した。

「それも全て自業自得というものじゃないのかな?君がキョーコちゃんにしてきた仕打ちを、振り返ってみるといい」

君なら大丈夫だと、間違っても言える相手でないことは、キョーコちゃんに親しいもの全員の意見だと思うよ。

「俺は何もしてねぇ」

「そんな言葉に騙されないよ。俺達は、キョーコちゃん自身の口から聞いている。君とマネージャーさんが何て話していたかをね」

「あいつは俺のものだから、俺が何をしても許されるんだよ」

「それが全ての間違いの始まりだよ。キョーコちゃんはキョーコちゃんのもので、他の誰のものでもない」

「あいつは俺の家に世話になってたんだから」

「そう、『家』であって、『君に』ではないね。キョーコちゃんは君の家に世話になって、君の世話をさせられていた。君がキョーコちゃんに恩を感じることはあっても、キョーコちゃんが君に恩を感じる必要性はない。恩を感じるなら、君の家だね。中学を卒業したばかりで、自分の家出に同行させて、一日中働かせて、家賃や生活費を賄わせて、食事や洗濯などの家事をさせて。キョーコちゃんが君に恩を感じる要素がどこにあるのかな?そして君はその恩人を捨てたんだ。君が『一緒に来てくれないか?』なんて言わなければ、キョーコちゃんは地元で普通に高校に通っていたはずだ。編入試験に、満点で合格する程優秀なキョーコちゃんから、高校に通う時間を奪ったのは、君じゃないのか?」

「うるせー」

「全ては君が引き起こしたことじゃないのかな?今後はしっかり監督をお願いします」

これ以上は話しても無駄だと思ったから、その場を後にした。


  * * *


全てを語り終えると、社長室に集まっていた、椹さん、琴南さん、マリアちゃんは怒りに震えていた。

「何ですか…そのバレンタインデーのキスとか……」

その様子から、キョーコちゃんは琴南さんにも話してなかった事に気付いた。

話しの途中でマリアちゃんは「なんですって~!」と叫んで青ざめていた。

「社長!」

社長は椹さんの呼びかけを片手で制して口を開いた。

「子供だな…彼は。だからといって、容認するつもりはない。やってることは犯罪だからな。対外的な事は全て俺が対応する。お前達は、最上君の心の傷を癒してやれ」

キョーコちゃんの心についた傷を考えると、あの時楽屋のドアを閉めるんじゃなかったと後悔してしまう。

蓮がキョーコちゃんの傷を癒してくれていることを、願わずにいられなかった。

28へ   つづく

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