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君恋ふる31

キョーコ

あんなに怖い人が私のファーストキスの相手だなんて、嘘だと言って!

あんなに怖い人が言った言葉なんて、忘れさせて!

何度も願ったのに、コーンの魔法は効かなかった。

心配してくれる敦賀さんにも、告げることが出来なかった。





昨日の今日だからと、社長さんの計らいで、付き人のお仕事がお休みになった。

夕方までオフだと言うモー子さんにお誘いを受けて、モー子さんの部屋でおしゃべりすることになった。

「何考えてるのよ」

目の前に紅茶を差し出しながら、モー子さんが私を見つめていた。

「ありがとう」

お礼を言って紅茶を受け取った。

モー子さんの視線は感じていたけど、正直に言う事には躊躇いがあった。

「も~黙っててもわからないでしょ?」

黙り込む私に、モー子さんはため息をついた。

「昨日のこと、社さんから聞いたわ」

そんな風に話を切り出されて、思わずモー子さんの瞳を見つめてしまった。

「迷惑かけたって思って、落ち込んでるわけ?」

そういう気持ちもあるけれど、昨日からずっと私の胸に圧し掛かっていることは別のことだった。

「それだけじゃなさそうね」

見抜かれて、俯いてしまった。

「も~あんた、私をあんたの何だと思ってるわけ?」

「親友」

そう、モー子さんが私の親友だということは、マリアちゃんだけでなく、昨日の人も以前教えてくれたこと。

モー子さん自身にも、メールの受信ボックスを開いてその証を見せて貰った。

だから、記憶を無くす前の私とモー子さんの関係を、疑った事はなかった。

「も~わかってるんだったら、話せないことなんてないでしょ?落ち込んだ時、相談に乗ってくれる人って、親友って言うんじゃないの?」

いいの?

モー子さんになら話してしまっても…いいの?

そう思ったら涙があふれてきた。

「も~黙っててもわからないでしょ?話してみなさい」

「あんな……が……わた……って…」

「何言ってるのかわかんないわよ」

しゃくりあげながら話したら、とぎれとぎれになってしまった。

「あんなに怖い人が、私のファーストキスの相手だって……そう…言われて……」

涙をこらえて一気に告げると、モー子さんはまたため息をついた。

「で、あんたはそんな嘘を真に受けたのね?」

そんな言葉に、頭がついていけなかった。

モー子さん、今『嘘』って言った?

びっくりしてモー子さんの顔を見つめてしまった。

「も~嘘に決まってるじゃない。気を引くためとはいえ、タチの悪い嘘よね。最低」

モー子さんは、最後の一言を、吐き捨てるように言った。

「嘘…?それホント…?」

「いいこと?女の子にとってファーストキスってとっても大事だと思わない?」

「思う…」

「そんなに大事な思い出を、胸の中にしまっておいても、親友にだったら話すと思わない?」

「そうかも…」

「あんたの親友の私が聞いてないのよ?だったら有り得ないでしょ。それにね、例えば女優やってる以上、いつかはお芝居でそういうシーンもあると思うわよ?」

モー子さんの言葉に頷いた。

「でも、実生活で経験がなくて、そういうシーンを求められたら、親友には相談すると思わない?」

「そうなのかも…」

「私はあんたからそういう話を聞いた事はないわよ。だから、あんたはまだなのよ」

その言葉を聞いた途端、自分の胸に重く圧し掛かっていたものが嘘のように消えていった。

「も~安心したのはわかるけど、そんなに泣かなくてもいいじゃない」

言葉はぶっきら棒だけど、そっとティッシュを差し出してくれる優しさが嬉しかった。

「ありがとう、モー子さん。安心したら、お腹がすいちゃった」

途端にお腹が鳴りだして恥ずかしかった。

「あんた、もしかして御飯食べてないの?」

照れくさかったけど、頷いた。

「昨夜から、あまり喉を通らなくて……」

「も~何考えてるのよ!言っとくけど、私はあんたみたいに料理は得意じゃないんだから、簡単なものしか出せないわよ」

そんな風に言いながらもモー子さんはキッチンに向った。

「私も行く!」

モー子さんが優しくて、すごく嬉しくて私もキッチンに向った。





「で?」

胸に圧し掛かっていたものも取れて、お腹も一杯になって幸せを満喫していると、モー子さんが話を切り出した。

「昨日の嘘を真に受けて、あんたは何て思ったの?」

真剣な顔で問われて、正直に告げた。

「絶対有り得ないって思ったの。だって、一緒にいても怖いだけの人なのよ?だから余計に…」

「それだけ?」

じっと見つめられると、心の底で思ったことが見透かされているようで、恥ずかしくなった。

「言いなさいよ」

「だって……」

「ここには私とあんたしかいないのよ?それでも言えないの?」

「モー子さん怒らない?」

「何を聞いても怒らないって約束したら、話すって約束する?」

真剣な顔で、逆に問い返されて、思わず頷いてしまった。

「怒らないって約束するわ」

そう言ってくれても、やっぱり口にするのは恥ずかしくて、躊躇ってしまった。

モー子さんはじっと私が口を開くのを待ってくれていた。

深呼吸して、心を落ち着かせてから告げた。

「王子様とならよかったのにって…」

口にした途端、顔がすごく熱くなった。

恥ずかしくて、モー子さんの顔も見れなくて、俯いていた。

「ねぇ、ちなみに、その王子様って誰の事?」

「王子様は、王子様よ?モー子さん知らないの?いろんな童話に出てくるじゃない」

やっぱり呆れてるのかしら?

黙り込むモー子さんに心配になって、顔色をうかがった。

「その王子様って、誰なら違和感ないと思う?」

思いがけないことを言われて、身近な男性を思い浮かべた。

社長さんとか椹さんって、いつも親身になって心配してくれて…でも、どちらかというと、親戚のおじさんって感じよね?

社さんは、お兄さんみたいだし…

敦賀さんは……似合いそう……

でも、本物の王子様を知ってるもの…妖精さんだけど。

妖精さんの話だなんて、モー子さんに知られたら、また笑われちゃうわね。

「誰かいるの?」

身を乗り出して問われて、びっくりしてしまった。

「モー子さん?」

私が呼ぶと、モー子さんはハッとしたように座りなおした。

「ううん。何でも無いわ」

「モー子さんって、私のことばかり聞いてるけど、モー子さんはどうなの?」

「私はなにもあんたに隠し事なんてしてないわよ」

モー子さんが慌てたように、早口で告げた。

「ずるいわよ。だって私にはそういう会話をした記憶がないのに。モー子さんばっかり知ってて、私は何も知らないなんて」

拗ねて見せたら、モー子さんがそっけなく言った。

「何が聞きたいのよ」

「モー子さんの王子様はどうなの?」

「あんたねぇ。私に王子様がいるなら、ラブミー部なんて卒業してるわよ」

呆れたように言われたけど、話がみえなかった。

「え?どういうこと?」

「ラブミー部って言うのはね、社長が作った、愛の欠落者のための部門なのよ」

「愛の欠落者?え?じゃあ、記憶がなくなる前の私にも、そういう特別な人はいなかったのかしら…」

「いたら卒業してたと思うわよ」

「よかった…」

やっぱり、昨日の事は嘘だったんだ……

だって、キスって、好きな人とするものよね。

「来た時と違って、元気になって安心したわ」

自分の世界に浸りそうになった時に、モー子さんが話し始めた。

「あんたが記憶を無くしてるってわかったあの日、あんたはすごく様変わりしててね。何日もロクに寝てないじゃないかと思うぐらい目の下にはクマが出来てて、食事もとってなかったんじゃないかってぐらいに頬もこけてしまっててね。そんなになる程悩んでるのに、全然知らなくて私はとってもやるせなかったのよ。だからね、もうそんなことがないように、あんたがうっとおしいと思っても、あんたの支えになりたいのよ。そう思ったのは、私だけじゃないと思うわよ?敦賀さんだって、同じ気持ちだと思うわよ?」

モー子さんの言葉は、とっても嬉しかった。

「敦賀さんも?」

私の言葉に、モー子さんは頷いた。

「敦賀さんとあんたって、すごく仲が良かったのよ?優しいと評判の敦賀さんが、仲が良かった子の一大事に心を痛めないと思う?」

優しい敦賀さんならきっとモー子さんと同じように思ってくれたって、すんなり信じられた。

30へ   つづく

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