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君恋ふる32

キョーコ

暗闇の中から伸びてきた手に、腕を掴まれた。

私の腕を掴んでいる人の顔を見ようとするのに、顔は見えなかった。

振りほどこうとしても振りほどけない手を凝視していたら、私を掴んでいる手がドロドロに溶け出して、掴まれた私の腕も少しずつ溶けはじめて、悲鳴を上げた。





目を開けると、見慣れたゲストルームのベッドの上だった。

夢……?

心臓が激しく音を立てていた。

目が覚めたのにまだ怖くて、そっと布団から手を出して見つめた。

溶けたりしてない自分の腕を見て、ホッと息を吐き出した。

それでも未だに動悸が激しくて、手は震えていた。

嫌な汗をかいて気持ちが悪かったので、シャワーでも浴びてこようと震える手足を叱咤して、浴室に向った。

温かいシャワーを浴びると、少し落ち着いてきた。

それでもまだ怖くてたまらなかった。

コーン、助けて……

浴室のドアを開けるのと、脱衣所のドアが開いたのは同時だった。

敦賀さんが立っているのを見たとき、不思議とあんなに怖くてたまらなかったのに、霧が晴れて行くように怖いと思う感情が消えて行って、安心して、何故だか涙が出そうになった。

敦賀さんは、一瞬固まった後、慌てて脱衣所のドアを閉めた。

「ごめん」

その一言に、自分が裸だったことを思い出して、顔が熱くなった。

何か言わないとと思ったのに、恥ずかしくて言葉も出てこなかった。

手早くパジャマを身につけて、脱衣所を出ようとした。

敦賀さんが、背中を向けて、ドアをふさぐように立っていた。

「すみません。使うんですよね?お待たせしました」

そう声をかけたのに、敦賀さんは黙ったまま出口に立っいるから、脱衣所から出ることも出来なくて、少し開いたドアの隙間から敦賀さんの背中を見つめていた。

何も言ってくれない敦賀さんに戸惑ってしまう。

「あの………敦賀さん?」

「ごめんね」

もう一度謝られてどうして敦賀さんが謝るんだろうと不思議に思った。

「見ようと思ったわけじゃないんだ。たまたま目が覚めて、水を飲もうと起きてきたら、脱衣所の電気がついてたから、俺が消し忘れたのかと思って消しに来ただけで………」

敦賀さんが一生懸命、なぜここにいるのかを説明してくれて、いつもは余裕のある姿しか見てないから、うろたえている姿がすごく新鮮だった。

「ありがとうございます」

お礼を口にした私が意外だったのか、敦賀さんが驚いて振り向いた。

「とても怖い夢を見ていたんです。怖くてたまらなくて……目が覚めても、怖くて手が震えて……嫌な汗もかいてたので、シャワーでも浴びようと思って。シャワーを浴びたら動悸は少し治まってきたけど、それでも手の震えは止まらなかったのに、脱衣所のドアが開いて敦賀さんの顔を見たら、すごく安心出来たんです」

笑って告げたら、敦賀さんが聞いた。

「怒ってないの?」

「何故ですか?」

問われた意味がわからなかった。

「あんなに怖くてたまらなかったのに、まるで霧が晴れて行くように安心してしまえたんです」

私の言葉に、敦賀さんはホッとしたように見えた。

「顔を見ただけであんなに安心してしまえるなんて、敦賀さんは、魔法でも使えるんですか?」

まじめに聞いたのに、敦賀さんは一瞬の後吹き出していた。

「笑ってごめんね?残念だけど、使えないよ。ホントに魔法が使えるなら、キョーコちゃんが怖い夢を見ないように魔法をかけてあげるんだけどね」

敦賀さんのおかげであんなに怖かったのが薄らいでいた。

「まだ朝までは時間があるよ。寝ようか」

また怖い夢を見るかもしれない……

そう思うと、眠るのが怖かった。

「眠れないなら、リビングで何か飲む?」

そんな風に誘われて、リビングのソファに座らされた。

「何を飲む?」

当たり前のように飲み物を用意しようとしてくれる敦賀さんに、慌ててしまった。

「ごめんなさい。敦賀さんは寝て下さってもいいですよ。明日もお仕事なんですから」

「俺も目が冴えて眠れなくてね。キョーコちゃんも眠れないなら、飲み物を飲む間だけでも付き合ってもらおうかと思ったんだけど」

敦賀さんはこの前の夜のようにホットミルクを渡してくれた。

素直にお礼を言って受け取って、口をつけた。

「もしかして、最近疲れてるのは、夜眠れてないの?」

敦賀さんの言葉に頷いた。

私が疲れてるように見えるからと、心配をかけているのも知っていた。

ちょっとでも早く私が眠れるようにと、夕飯の後片付けまで敦賀さんが引き受けてくれていたし、食材を注文する時も、さりげなく甘いものが欲しくないかと聞かれていたから。

「毎晩、怖い夢を見るんです。その後は、怖くて眠れなくて…」

夜は嫌い……

怖い夢を見るから……

昨日も朝までコーンを握りしめていたのに……

ずっと立っていた敦賀さんが、私の前にじゃがみこんで、そっと指で頬を伝う涙を拭ってくれた。

それからそっと抱きしめて、髪をなでてくれた。

「怖くなったらいつでもこうしてあげるって言ったの覚えてる?」

「はい…」

敦賀さんが暖かくて、優しく頭をなでられるのが気持ちよくて、涙も止まった。

「キョーコちゃんが望むなら、いつでもしてあげるから、遠慮しないで?」

「いつでも?」

「いつでも」

問い返したらはっきりと告げられて、敦賀さんの言葉に頷いた。

「こうしていても、まだ怖い?」

敦賀さんの言葉に、首を横に振った。

「とっても安心出来ます」

頭をなでている手が気持ちよくて、自然と瞼が閉じてきた。

やっぱり敦賀さんは、魔法を使えるんですよ。

なんだか眠くなってきました……

ちゃんと告げられたのかも記憶がなくて、目が覚めた時も敦賀さんの腕の中だった。

31へ   つづく

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