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君恋ふる33



不破との一件の後、暗く沈んで食欲もなさそうだった彼女が、琴南さんとのデートの後は、以前と同じように明るく笑ってくれた。

「おかえりなさい」

玄関に入ると、明るい声で出迎えられて、その笑顔を見てホッとした。

俺が彼女の笑顔を取り戻したかった。

そういう気持ちはあったけど、彼女に笑顔が戻った喜びの方が大きかった。

彼女の笑顔が消えると、部屋の灯りも消えているような感じがした。

彼女笑顔が消えただけで、部屋の中が寒々としてしまうなんて、思いもしなかった。

彼女の記憶が戻ったとしても、俺は彼女を手放せないかもしれない。

彼女が俺の傍らで笑ってくれるだけでいい。

他には何も望まない。

彼女の記憶が戻っても、どうかずっとこんな幸せな日が続きますように。





彼女の笑顔が戻った事に安心したのも束の間、それから数日の内に彼女の笑顔が徐々に消えていって、疲れた顔を見せるようになった。

最初に社さんは、変に俺を疑ったけど、何も心当たりはなかった。

原因が思い当たらないだけに、何か悪い病気なんじゃないかと心配でたまらなかった。

そんな矢先に、思いがけず彼女の全裸を見てしまった。

断じてわざとではなかった。

夜中に目が覚めた時に、水を取りに起きだして、脱衣所の灯りがついていることに気がついた。

寝る前に消し忘れたのかと思って、脱衣所のドアを開けると、彼女が丁度浴室から出て来ようとしたところだった。

「ごめん」

慌てて脱衣所のドアを閉めたけど、一瞬だったのに、彼女の肌を伝うしずくまでも、はっきりと思い出せるぐらいに脳裏に焼き付いてしまった。

動揺している俺とは反対に、彼女は冷静沈着だった。

怒られるか泣かれるかだと思ったのに、彼女の口から出た言葉は「ありがとうございます」だった。

びっくりして振り向いたら、彼女は優しく微笑んでいた。

眠れそうにないという彼女と、リビングに移動した。

この前、彼女が眠れないと言っていた夜に、ホットミルクを入れたら、その後は眠れたようだったので、この日も彼女にホットミルクを入れた。

俺は頭を冷やすためもあって、ミネラルウォーターを口にした。

冷たく冷えた水が喉を通ると、頭もすっきりした。

思いがけず、好きな子の全裸を見てしまって、冷静でいられるわけがない。

近寄ってしまって、手を出さずにいられる自信がなかったから、ソファに座らせた彼女と必要以上に距離をとっていたのに、彼女の頬を伝う涙を見ると、放っておけなかった。

彼女が言うように、ホントに俺に魔法が使えるなら、彼女を害する全てのものから守れる魔法をかけてあげるのに。

せめて少しでも癒すことが出来ればと、彼女をそっと抱きしめて髪をなでた。

俺の腕の中はとっても安心出来ると、彼女が言った。

出来ることなら、ずっとこの腕の中に留めておきたい。

そんな風に思ったら、彼女が身体を預けてきて、嬉しかった。

なのに、彼女は俺の腕の中で健やかな寝息をたてていた。

全裸を見られた直後に、全裸を見た男の腕の中で眠れるなんて、喜べばいいのか、悲しめばいいのか、複雑だった。

ねぇ、君は俺の事をどう思ってくれているの?

彼女は、俺のパジャマをしっかりと掴んで眠ってしまっていて、パジャマだけを脱ぐのも難しかった。

彼女をゲストルームに運んで寝かそうかとも思ったけど、目が覚めた時に、俺と一緒にベッドで眠っていたなんて嫌なんじゃないかと、そのままリビングで一晩中彼女を抱きしめていた。

彼女の可愛らしい寝顔を見て、悶々と眠れない夜を過ごした。

朝、俺の腕の中で目を覚ました彼女は、ひたすら恐縮していたけど、彼女が久しぶりにゆっくり眠れたのなら、自分の寝不足なんてどうでもよかった。

今夜はゆっくり眠れると思っていたら、ベッドに入った途端に寝室をノックされて、訝しく思いながらも声をかけると、彼女が躊躇いがちに顔を覗かせた。

「どうしたの?」

「また怖い夢を見るかもしれないと思うと、眠るのが怖くて……」

彼女の方から言ってこられるのは初めてで、あぁ俺も彼女の心の支えになれてきたんだなと喜んでいたら、彼女が仰天するようなことを言った。

「だから…一緒に寝て下さいませんか?」

ベッドから降りかけていたのが止まってしまった。

「キョーコちゃん?」

「あの…昨夜みたいなことになったら、申し訳ないので、それならベッドの中でなら問題ないと思って…」

問題ない?

大ありなんじゃないのか?

いや、彼女がいいと言ってるんだから、問題はないのか?

でも、一緒に寝るって……いつの間にそんな風に思ってくれてたんだろう……

「俺のベッドでいいの?」

彼女はコクリと頷いた。

「おいで」

彼女はゆっくりとベッドに近づいた。

静かにベッドに横になった彼女を、そっと抱きしめた。

「ありがとうございます」

嬉しそうに笑って彼女も俺にしがみついてきた。

積極的な彼女にびっくりして、顔を覗きこんだら、彼女は健やかな寝息をたてていた。

あまりにも寝つきがよくて、ため息がでた。

今夜も眠れそうもない。

彼女の夢の番人の報酬に、せめてこれぐらいはと、そっと彼女の額に口づけた。

彼女が怖い夢を見ないようにと願って。

32へ   つづく

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