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君恋ふる34



「やぁ、覚えてくれてるかな?」

背後から声をかけられて振り向いた。

こちらに手を上げている貴島君の顔を見て、キョーコちゃんがニッコリと笑った。

えっ!?

「おはよう、貴島君」

さりげなく背後にキョーコちゃんを庇って、蓮が挨拶をしていた。

そんな蓮の後ろから、俺も挨拶を交わした。

キョーコちゃんは蓮の後ろからひょっり顔を出してニッコリと貴島君に笑いかけた。

「こんにちは」

「その様子じゃ、覚えてくれてたようだね」

貴島君は蓮へはおざなりに返事をして、嬉しそうにキョーコちゃんに笑いかけた。

キョーコちゃん?

不破君との一件から、名前もわからない男の人は怖がるようになっていたのに、いつの間に貴島君と知り合いになってたの?

「キョーコちゃん?」

「はい?」

キョーコちゃんは首を傾げて、俺を見つめた。

「貴島君とはいつ知り会ったの?」

俺の言葉に、貴島君はニヤリと笑った。

「え?モー子さんとTV局に見学に来た時に、お会いしましたけど?」

あ、そういえばそういう話も聞いたっけ。

すっかり忘れてた……

「そう言えば聞いたよ。災難だったね」

貴島君の言葉に、キョーコちゃんは蓮の上着をぎゅっと掴んだ。

キョーコちゃんのそんないつもの仕草も、俺には可愛らしくて、キョーコちゃんと蓮の距離が縮まっている感じがして嬉しいものだけど、貴島君は面白くなさそうに見つめていた。

「貴島君、その話は…」

言わないでくれという気持ちを読んだ貴島君が、笑って顔の前に片手を上げた。

「あ、ごめんね。思い出させるつもりはなかったんだよ。ただ、俺がその場にいたら守ってあげたのになぁって言いたかっただけ」

貴島君の言葉に、笑顔を浮かべる蓮が怖かった。

キョーコちゃんは何故だか蓮の背中に隠れて、俯いてしまった。

「京子ちゃん?どうしちゃったの?」

「貴島君が思い出させるようなこと言うから、怖くなったのかもしれないね」

ニッコリと笑っているのに、蓮からは怒気が感じられた。

貴島君は、蓮の怒気に気付かず、笑ってキョーコちゃんに話しかけた。

「そっか~嫌なこと思い出させちゃったかぁ~ごめんね、京子ちゃん。謝るから、可愛い顔見せてくれない?」

キョーコちゃんは蓮の背中に隠れたままだった。

俺達の前で、堂々とキョーコちゃんを口説こうとする貴島君に、呆れてしまった。

「京子ちゃん?そんなに敦賀君の背中は居心地がいいのかな?」

貴島君が苦笑していた。

蓮は益々輝きが増した笑顔を浮かべて、貴島君を見ていた。

キョーコちゃんは黙って俯いたままだったから、この雰囲気の悪さに、気分でも悪くなったんじゃないかと心配になった。

「キョーコちゃん?具合でも悪いの?どうしたの?」

俺の問いかけに、キョーコちゃんは首を横にふった。

「キョーコちゃん?」

自分の背中にいるからキョーコちゃんの顔が見えない蓮は、俺の問いかけに驚いていた。

「キョーコちゃん、顔見せて?」

蓮の言葉にキョーコちゃんは、おずおずと背中から顔を覗かせて蓮を見上げた。

「顔色は悪くなさそうだけど、大丈夫?具合が悪いなら…」

「大丈夫です。怖かっただけだから…」

キョーコちゃんが、蓮の言葉を遮って告げた。

「俺が怖いこと思い出させちゃったからだよね。ごめんね、京子ちゃん。もう言わないから許してくれる?」

貴島君の言葉に、キョーコちゃんは頷いた。

「そうやって、敦賀君が京子ちゃんを背中に庇ってるのを見ると、噂は本当みたいだね」

何の事だ?

俺には心当たりがなくて、首を傾げた。

「噂?」

蓮も不思議そうに呟いた。

「そう。敦賀君は京子ちゃんを妹のように可愛がってるって噂聞いたよ」

可愛がってるのは蓮だけじゃないんだけどなぁ。

それに蓮はキョーコちゃんを妹扱いしてないし…

「そんな噂があるのは知りませんでしたよ」

蓮は冷静に返事をしていた。

「お兄さんみたいな感じがするのは、社さんですよ?」

キョーコちゃんが、不思議そうに告げた。

キョーコちゃんに、『ねぇ?』とばかりに見詰められて、ニッコリと笑い返した。

「ありがとう、キョーコちゃん」

前にも言われたけど、何度言われても嬉しいものだなぁ。

「へぇ~じゃあ敦賀君は京子ちゃんにとってお父さんってところかな」

『お兄さん』の次に『お父さん』とくるところが、貴島君の思惑が透けて見えて、苦笑してしまった。

キョーコちゃんは、特に気にした様子も無く、クスクスと笑っていた。

「やだぁ貴島さんったら。お父さんみたいなのは貴島さんですよ?」

思いがけない言葉に、貴島君も蓮も言葉を失って、キョーコちゃんを見つめていた。

俺は込み上げてくる笑いを、必死で我慢していた。

貴島君が、お父さん!

これって、キョーコちゃんは貴島君を特別な異性として見てないってことだよな。

おかげで安心した。

「えぇ~京子ちゃんってそんな風に俺のこと思ってくれてたの?」

笑って告げられた言葉に、キョーコちゃんが怯んでいた。

口説こうとしてた相手から「お父さんみたい」だなんて言われて、怒る貴島君の気持ちはわかるけど、それをキョーコちゃんに向けるのはいただけなかった。

「え?私何かいけないこと言いましたか?貴島さんは子供好きだから、きっと喜んでくれるわよって教えてもらったんですけど…」

「間違ってないよ。貴島君は子供好きだよ」

キョーコちゃんに優しく笑いかけて、蓮が言った。

言葉の裏に何か隠れているように感じるのは、気のせいだろうか。

キョーコちゃんは、蓮の言葉に嬉しそうに微笑み返した。

そんな二人を、貴島君は顔を引きつらせて見つめていた。

「じゃあ敦賀君は、京子ちゃんにとって、どんな存在なの?」

「敦賀さんは、妖精さんみたいです」

ニッコリ笑って告げたキョーコちゃんに、貴島君は言葉をなくしていた。

前に聞いた時、俺もどう受け取ればいいのかわからなかったから、言葉を無くした貴島君の心境はなんとなく理解できた。

「ねぇ、京子ちゃん、俺は京子ちゃんの王子様になりたいんだけどなぁ」

そんな言葉に、ぎょっとした。

今のキョーコちゃんは、ラブミー部員とは厳密には言い難い。

万一貴島君にイエスと答えたら、大変なことになってしまう。

「貴島君、キョーコちゃんは記憶がないんだから、そういう話は記憶が戻ってからに」

「記憶が戻るとこういう話出来ないんじゃないですか?なんか彼女、特殊な思考回路してるし」

俺の言葉を遮って、貴島君が告げた。

貴島君の気持ちは判るけど、俺としても傍観しているわけにはいかなかった。

「特殊な思考回路って?」

キョーコちゃんは言葉の意味が判らなくて、小さく呟いて首を傾げていた。

「ねぇ京子ちゃん、俺が王子様になったら駄目かな?」

重ねて言う貴島君に、ブリザードをお見舞いしようとしたところで、キョーコちゃんが告げた。

「王子様はもういますよ?」

嬉しそうに微笑んで告げるキョーコちゃんに、貴島君の顔が引きつった。

王子様って誰だ?

俺は慌ててしまった。

「へぇ~どんな人?芸能人?」

「王子様は、コーンです」

キョーコちゃんは、「きゃ、言っちゃった」と頬を染めて恥じらっていた。

コーンって誰?

キョーコちゃん、その人とはいつ知り合ったの?

「とうもろこし?」

貴島君は唖然としていた。

「『コーン』はキョーコちゃんの思い出の君なんですよ」

蓮、お前何落ち着き払って説明してるんだよ!

お前は気にならないのか?

キョーコちゃんが好きなんだろ?

思い出の君だろうと何だろうと……えっ?

「え?じゃあ記憶戻ったの?」

俺と同じ疑問を、貴島君が口にした。

「コーンのことだけ思い出したそうですよ」

そっか~少しでも記憶が戻ってよかった……ってそこじゃない!

いや、記憶が戻ったのは喜ばしいことなんだけど、記憶を無くす前に、キョーコちゃんには好きな人がいたってことなのか?

「京子ちゃんの思い出の君って初恋の彼ってこと?それにその人のことだけ思い出したって、どうして敦賀君が知ってるの?」

貴島君の質問は、俺も気になった。

「それは話を聞いたことがあるからですよ」

そんな話は聞いてないぞ?

いくら初恋の人でも、のほほんとしてる場合か?お前。

「初恋の?」

「俺が聞いたのは初恋ってことじゃなかったですけどね。それに、コーンのことを思い出した時も丁度キョーコちゃんにその時の話をしてあげてたときで」

初恋じゃない?

そっか……

ホッとしたけど、安心していいのか?

唯一思い出したって事は、それだけ特別な存在だったってことじゃないのか?

「ふぅ~ん。元々二人は仲が良かったしね。まぁ敦賀君がライバルじゃないってことははっきりしたからいいか。もう行かないといけないから、またね、京子ちゃん」

呆然としてる間に、貴島君が去って行った。

キョーコちゃんも自分の世界に浸っていて気が付かなかったのか、遠ざかる貴島君の背中にお辞儀をしていた。

キョーコちゃんの前で、蓮を問い詰めるわけにはいかないし……

何がどうなっているのか……

悩む俺の耳に、蓮のため息が聞こえてきた。

お前も貴島君を相手に、気を張ってたんだな。

「敦賀さん?お加減でも悪いんですか?」

キョーコちゃんも蓮のため息に気付いて、心配そうに見上げていた。

「ん?そんなことないよ?どうして?」

蓮が優しい目で、キョーコちゃんを見つめていた。

「お疲れのように見えます」

蓮の顔には確かに疲労の色が浮かんでいた。

「具合が悪いなら隠さないで下さい!私ちゃんと看病しますから」

「笑って?そうしてくれたら疲れなんて吹き飛ぶから」

おぉ~い、ここはお前の部屋でも楽屋でもないんだぞ?

わかってるのか?人目につく可能性を。

いちゃつくのは、帰ってからにしてくれ~

「もぉ~私は女優さんじゃないんだから、そんなにすぐ笑えません!」

「キョーコちゃんが笑ってくれたら具合が悪くてもすぐ治るんだけどなぁ」

「そんなのウソです!からかってますね?」

ぷぅっと頬を膨らませるキョーコちゃんは可愛かった。

「からかってないよ。ホント」

もう好きにしろと言いたくなった時だった。

突然、キョーコちゃんが蓮に抱きついた。

えっ?えぇ~っ!?

何がどうなってるんだ?

「じゃあ、笑えない代わりにこうしてあげます」

突然キョーコちゃんに抱きつかれた蓮も、驚いていた。

「いつも私が敦賀さんにこうしてもらうと安心しちゃえるから…」

キョーコちゃんは、どこか夢見心地で呟いていた。

いつも?いつも!?

えぇ~っ!?

驚く俺の横で、蓮もしっかりキョーコちゃんを抱きしめていた。

えぇ~~~っ!?

抱きあう二人にそっと背中を向けた。

え~っと…俺はいませんよ~

誰かに見つかる前にここが駐車場だということを思い出してくれ~!

33へ   つづく

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