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君恋ふる35



貴島君と遭遇した日も、彼女は俺の寝室にやって来た。

あの日も朝まで彼女を抱きしめていた。

その後すぐにロケで東京を離れることになって、彼女はそのまま東京に残った。

このロケは、彼女が付き人になる前から決まっていた。

あんなことさえ起きなければ、何も心配することもなかったのに。

「寂しくなったら、マリアちゃんに迎えに来てもらいます」

そう言って、ニッコリ笑って送り出してくれた彼女。

彼女は、エレベーターの前まで見送りに来てくれた。

扉が閉まる寸前、寂しそうに顔が歪んだ様に見えたのは、俺の願望だろうか。

彼女の姿が見えなくなると、社さんが躊躇いがちに訊ねてきた。

「なぁ、蓮。もしかして、お前とキョーコちゃんの間に何かあったのか?二人の仲が悪いとか言うんじゃないんだ。ただ、キョーコちゃんが酷く疲れてたかと思ったら、今度はお前が酷く疲れてるようだから」

「実は、不破との一件の後、キョーコちゃんは毎晩悪夢にうなされて眠れなかったそうなんですよ」

「そっか…それでお前が慰めてて眠れないんだな」

彼女と一緒に寝ている事を見透かされたのかと思って、ドキッとした。

「え?どうして…」

「お前の性格上、泣いてる女の子を放置しておけないだろうし、キョーコちゃんも言ってたじゃないか。『いつも私が敦賀さんにこうしてもらうと安心しちゃえるから…』って」

あの時、彼女の方から抱きついて来てくれたから、社さんがいることも駐車場なのも忘れて、思わず彼女を抱きしめていた。

社さんに、緩んだ顔を見られたくなくて、さりげなく顔を背けた。

社さんはわざわざ回り込んで、意地悪く笑っていた。

「告白したのか?」

視線を彷徨わせていると、社さんのため息が聞こえた。

「お前なぁ。思わず砂を吐きそうになるぐらい甘い雰囲気醸し出しといて、まだ告白もしてないのか」

今の彼女に、告白なんて出来るわけがない。

「早く告白しろ!」

そう言って、背中を思いっきり叩かれた。





彼女と離れて過ごした数日間は、時間がたつのがひどく遅く感じられた。

何度も電話をかけようと思ったけど、携帯を手にして、彼女のアドレスを見つめるだけで終わっていた。

少しは俺のことを、思い出してくれているだろうか。

今夜も彼女の事を思い出して、眠れない夜を過ごしていた。

何度も寝がえりをうっては、ため息をつく。

今頃彼女は、楽しい夢を見ているだろうか。

キョーコちゃん、君が怖い夢を見ていない事を祈ってるよ。





予定よりも1日早く帰宅する事が出来た。

彼女の驚く顔が見れるかと思うと、自然と笑みがこぼれてきた。

隣で社さんが意地悪く笑っていた。

「お前が邪魔だと思っても、ついていくからな。お前をキョーコちゃんに引き渡すまで、安心して帰れないんだ」

そう言って社さんは、マンションまでついてきた。

日に日に疲労の色が濃くなる俺を、社さんは心配していた。

彼女がどうしているかが心配で、眠れなかっただけだと言うのに。

久しぶりに彼女に会って、もしも俺の理性が危なくなっても、社さんがいると思えばブレーキがきくだろう。

社さんの存在は、有難かった。

驚かせたくて、そっと玄関を開けたけど、彼女の気配は感じられなかった。

マリアちゃんのところに行ってるんだろうか。

折角早く帰ってこれたのに、彼女の顔が見れないのは残念だった。

「キョーコちゃん、いないのか。それならお前が大人しく寝るまで監視してるからな」

そんな風に言われて、しぶしぶ寝室に向った。

ドアを開けて目にした光景が信じられなかった。

彼女が、俺のベッドに凭れて床に座っていた。

いつまでも寝室に入らない俺を訝しく思った社さんが、俺の背中から覗きこんでいた。

「え?キョーコちゃん?」

社さんの声に、ゆっくりと彼女が顔を上げた。

「キョーコちゃん、どうしたの?」

俺を見つめる彼女の目が、信じられないとばかりに大きく見開かれた。

「敦賀…さ…ん?」

小さな声で呼ばれて、頷いて見せた。

「ただいま、キョーコちゃん」

彼女の目には、みるみるうちに涙があふれてきた。

「どう…し…て?また…幻?」

「幻じゃないよ」

彼女の頬を、涙がこぼれ落ちた。

「帰って来るのは、明日だったんじゃ…?」

「キョーコちゃんがまた怖い夢を見てるんじゃないかと思うと、心配でね。俺が眠れないんだ。だから急いで帰って来たよ」

笑いかけると、彼女が飛びついて来た。

「敦賀さん…ホントに敦賀さんだ……」

泣きながらしがみついてくる彼女を、しっかりと抱きしめた。

「寂し…か…った…」

「ごめんね、寂しい思いをさせて」

彼女がふるふると首を横に振った。

俺の胸で泣く彼女を、背中をなでたり、髪をなでたりしてあやしていた。

「お見送りした後、すぐに寂しくなって……」

少し落ち着いた彼女がボツリと呟いた。

「お仕事だってわかってるのに、ごめんなさい」

「俺もキョーコちゃんに会えなくて、寂しかったよ」

彼女は、俺の腕の中で大人しくしていた。

「怖い夢は見なかった?」

「敦賀さんがいないと、怖くて眠れないんです」

「ごめんね、一人にして。マリアちゃんのとこには行かなかったの?」

「敦賀さんの気配が残るこの部屋から、離れたくなくて…この部屋にいたら、一緒に寝て貰ってる時のように怖いのが薄れるから…」

振りかえると、社さんが驚いて、口をパクパクさせていた。

「今夜も一緒に寝て下さいますか?」

「勿論だよ」

「嬉しい…」

社さんが気になって振りかえると、そっと帰って行く後ろ姿が目に入った。





二人でベッドに横たわると、彼女がはにかみながらすり寄って来た。

「嬉しい」

ニッコリ笑って告げられた言葉が嬉しくて、ぎゅっと彼女を抱きしめた。

「敦賀さんにこうやってもらうと、怖い事も不安な事もどこかへ飛んで行っちゃうんです」

愛しくてたまらなくて、思わず彼女の額に口づけた。

彼女はキョトンしていた。

衝動的にしてしまって、彼女の反応が怖くなった。

彼女は額を抑えて、首を傾げていた。

「今のは何ですか?」

不快そうな感じが見えなかったことに、ホッとした。

「怖い夢を見ないおまじないだよ」

彼女が何かを考え込んでいたようだったので、やっぱり嫌だったのかと心配になった。

どうか俺を嫌わないで。

息をひそめて、彼女の反応を待った。

彼女が急に起き上がった。

このまま寝室を出ていってしまう姿を見たくなくて、目を瞑ってしまった。

「どうやるんですか?」

思いがけない言葉に、驚いて彼女を見つめた。

「私も敦賀さんにおまじないをしたいです。どうやればいいんですか?」

嫌じゃなかった?

「額に口づけただけだよ」

呆然と呟いたら、彼女が俺に覆いかぶさってきた。

そのまま額に口づけされて、驚いた。

「敦賀さんも怖い夢を見ませんように」

彼女はニッコリと笑って、再び横になった。

俺の腕を枕に、彼女はあっという間に寝付いてしまった。

少しは期待してもいいの?

君にとって特別な存在だと。

ぎゅっと彼女を抱きしめた。

34へ   つづく

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