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君恋ふる40

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「あ、キョーコちゃん。蓮、目を覚ましたよ」

俺と社長のやり取りから、逃げるように部屋から出て行った社さんの言葉の後に、パタパタとかけてくる足音が聞こえて、ゆっくりと起き上がった。

長椅子に腰掛ける俺を、彼女は涙を浮かべて見つめていた。

「し…心配したんです…すごく…このまま…目が…覚めなかったら…どうしよう…かと…」

彼女を慰めようとして長椅子から立ち上がったら、彼女が慌てて駆け寄って縋りついてきた。

「ダメです!まだ寝てないと」

「もう大丈夫だから。心配かけてごめんね」

安心させようと、彼女の頭をポンポンと軽く叩いて、笑いかけた。

「倒れたのに…大丈夫なはずないじゃないですか!」

「もう大丈夫になったから」

ムキになって怒る彼女に、愛しさが募った。

「ダメです!横になって下さい!」

「最上君、ちょっと社と、琴南君に話があるから、蓮に付き添っていてくれるか?最低1時間はここで蓮に仮眠をとらせてくれ」

「しゃ…」

「わかりました」

さっきからもう大丈夫だって言い続けているのに……

社長が過保護な事はわかっていたけど、彼女と二人で残されたのは、やっぱり気を使ってくれているんだろうな。

二人きりだからといって、彼女が社長のいいつけに背く筈もない。

諦めて長椅子に横になった。

眠れなくて、せめてもと思って目を閉じると、手を掴まれた。

驚いて目を開けると、彼女が両手で祈るように俺の手を包み込んでいた。

「キョーコちゃん?」

抱きしめた事は何度もあったけど、彼女の手を握った事はなくて、彼女の意図がわからずに、思わず呼びかけてしまった。

名前を呼ばれて、彼女はうろたえていた。

「あの…えっと…起してしまいました?」

「いや、社長の言いつけだから、眠ろうと思って、目を閉じていただけで、まだ眠ってなかったよ」

「えっと…その…あ!そう言えば、敦賀さんは枕がないと眠れないんでしたよね。私の膝でよろしければお貸しします」

彼女の言葉に驚いて起き上がろうとすると、彼女はさっさと俺の頭があったところに腰を下ろした。

「寝心地の保証は出来ませんけど、どうぞ」

好きな子の膝枕が、嬉しくないはずがない。

どうしたものかと迷っていると、彼女が心配そうに見つめてきた。

「私の膝じゃあダメですか?」

「そんなことないよ」

否定すると、彼女は嬉しそうに笑って膝を叩いた。

恐る恐る彼女の膝を枕にして、横になった。

枕がないと眠れないだなんて、あの軽井沢でしか口にしたことはなかったのに……

ねぇ、少しは何かを思い出さない?

じっと見つめていたら、彼女の顔が赤くなった。

「ひゃぅ」

恥ずかしいのかと思って、横を向いたら、彼女が声を上げた。

「あのね、キョーコちゃん。やっぱり、いいよ」

彼女が無理をしているように感じられて、起き上がろうとしたら、上から肩を抑えられた。

「つい…ごめんなさい。ちゃんと枕になりますから、仮眠取って下さい」

過度の期待はしないようにと自分に言い聞かせて、目をつぶった。

「ひゃっ」

いつも横になると、彼女を抱きしめるために、癖になって動かした腕が彼女の膝をかすめると、彼女が声を上げた。

「あのね、キョーコちゃん」

「起きちゃダメです」

俺が起き上がれないように、彼女はすぐに肩を抑えた。

「びっくりしただけですから。ごめんなさ…」

ため息をついたら、彼女が身をよじった。

「やっぱりや…」

「ダメです!寝心地悪いのはわかりますけど、我慢して下さい。ちゃんと仮眠取ってください」

長椅子の寝心地は、お世辞にもいいとは言えないけれど、彼女の膝枕の具合が悪いわけじゃない。

あまり寝がえりをうつのも彼女がくすぐったいだろうと、極力身動きをしないようにすれば、身体に力が入って、余計に眠るどころではなくなっていた。

「辛くない?」

お互いに身じろぎもせずそのままの体勢で固まっていると、横になっている俺でさえ辛いのに、俺の頭の重みがかかっている彼女は、もっと辛いだろう。

「大丈夫です。私でも、敦賀さんにしてあげられることがあるって思うと、すごく嬉しいんですよ?」

彼女が無理をしているんじゃないかと、彼女の変化を見逃さないように凝視しても、彼女は嬉しそうに笑っていた。

起き上がるのを諦めて、黙って目を閉じた。

しばらくすると、彼女が恐る恐る俺の頭を撫で始めた。

そういえば、軽井沢で膝枕をしてもらった時も、こんな風に撫でてもらったなぁ…

彼女に頭を撫でられる内に、ウトウトとまどろみ始めた。

不意に頬に落ちきた滴に、意識がはっきりとした。

えっ…涙?

驚いて、声をかけずにはいられなかった。

「泣いてるの?」

仰向けになって、彼女の顔を見上げた。

彼女は慌てて涙を拭ったけど、涙はとめどなく流れ落ちてきた。

「ごめ…な…さ……起…して……した」

そんな風に、気にしなくてもいいのに。

君はいつも人の心配ばかりするんだね。

安心して寄りかかれないぐらい、俺は頼りないかな?

起き上がり、泣きじゃくる彼女をそっと抱きしめて、涙を拭った。

「どうしたの?そんなに心配しなくても、俺は大丈夫だから、ね?」

さっきまで彼女が俺にしてくれていたように、彼女の頭を撫でた。

俺が倒れた事は、そんなに彼女を驚かせてしまったんだろうか。

ごめんね、キョーコちゃん。

もうこんなに心配させないように気をつけるから……

俺のせいで君が泣いていると思うと、辛くてたまらないよ。

「唯の寝不足なんだからね?どうしたらいい?どうして欲しい?ごめんね、心配かけて」

「心配しました…だって…敦賀さんが…いなくなったら…きっと…私は歩けなくなってしまう…こんなの…敦賀さんには…重荷だってわかってるんです…でも…気付いてしまったから」

今、何て…?

「何に気付いたの?」

「敦賀さんも…コーンのように…私を置いて…帰ってしまう人だって……ごめんなさい。敦賀さんは、記憶をなくした…後輩を…可哀想に思って…優しく…してくれているだけなのに……こんな…大それたこと……」

俺は期待してもいいの?

「何を聞いても怒らないから聞かせて?」

急に、自分の心臓の音が大きく聞こえてきた。

うるさい!

静まれ!

彼女の言葉が聞こえなくなるじゃないか。

「どうして…敦賀さ…んと…記憶を…無くす前の…私は…ただの…先輩後輩…だったんだろうって……特別だったら…ずっと…一緒に…いられたかも…しれないのにって……」

彼女は泣いているのに、告げられた言葉が嬉しくて、顔が緩んでしまった。

「キョーコちゃんは俺とずっと一緒にいたいの?」

「どこへも行かないで……私を置いて行かないで……敦賀さんの傍にいたいんです!!」

彼女は俺の袖をぎゅっと握りしめた。

「行かない…置いてなんて行けない。ずっと傍にいることを望んでくれるなら、置いてなんて行かない」

君が望んでくれるなら、手離したりしないから……

ずっと…ずっと、俺の傍にいて欲しい。

「ホント…ですか?」

頷いたら、彼女は嬉しそうに笑った。

これからは、特別な存在として俺の傍に…

俺が帰る時が来ても、離しはしないから……

つづく
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