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君恋ふる42

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奏江

「あ、琴南さん?蓮とキョーコちゃんの様子がなんとなくおかしいんだけど、何か聞いてない?」

社さんからそんな電話を受けたのは昨日の夜のことだった。

元々あの子の方から連絡してくることはなかったけど、あの日からラブラブで、ひと時も敦賀さんと離れたくないから、べったりくっついているとばかり思っていた。

私も社長に捕まって、あの子に連絡も出来ずにいたけど、両想いになった途端、今まで我慢していた敦賀さんの気持ちが、堰を切ったようにあふれ出て、あの子を困らせているんじゃないでしょうね?

も~何があったのか、気になるじゃないの。

おかげで昨夜はよく眠れなかったわ!

睡眠不足は、お肌の大敵なのよ!

くだらない事で、あの子を困らせたりしているんだったら、許さないから!

あの子のことを頼んでいた、飛鷹君や、松田さんなら、何か知っているかもしれないと思って、飛鷹君の楽屋を訪れたら、キョーコが泣いていた。

どういうことなのよ!

キョーコの傍で、お手上げだという風に立ち尽くしていた飛鷹君と、キョーコの涙を拭っていた松田さんが、楽屋の入り口に立っている私の顔を見て、ホッとしたような表情を見せた。

「何があったの?」

「俺にもわからない。何も言わないから、奏江に電話しようと思っていたところだったんだ」

飛鷹君が、困ったように笑った。

「こんなに泣くほど辛い事が……」

松田さんは私に場所を譲ってくれて、手にしたハンカチを握りしめていた。

「何があったの?」

私の問いかけにも、キョーコは何も言わずに、ポロポロと涙を流すだけだった。

今にも消えてしまいそうな切ない泣き方に、胸が締め付けられた。

まさか敦賀さんが、嫌がるキョーコに襲いかかったんじゃないでしょうね!?

「も~泣いてちゃわからないでしょ?何があったか話せないの?」

キョーコは、イヤイヤと、首を横に振った。

「あんたがここにいること、敦賀さんと社さんは知ってるの?」

急にこの子が消えて、焦って探しまくっているんじゃないかと、心配になった。

その時、私の携帯が鳴った。

バッグの中から携帯を取り出して、電話に出た。

「はい、琴南です」

「キョーコちゃんがいなくなったんだ!」

開口一番に聞こえてきたのは、慌てている様子の社さんの声だった。

思わずため息がこぼれ落ちた。

「もしもし?琴南さん?聞こえてる?」

「聞こえてますよ、社さん」

私の言葉に、キョーコが顔を上げた。

私のバッグに縋りついて、不安そうに見つめている。

そしてまた、ため息がこぼれ落ちた。

「も~キョーコったら。黙って出て来るなんてどういうつもりかしら。今一緒にいますから、安心して下さい。丁度、用があってここへ来てたんです。そのことを連絡したから、飛び出して来たんですね。ご心配おかけして申し訳ありません。キョーコは私が送って行きますから、敦賀さんには、心配しないでお仕事して下さいって伝えて下さい」

「うん、わかった。ごめんね、騒いで。無事ならいいんだ。それにしても、キョーコちゃんは、記憶がなくても琴南さんが大好きなんだね。キョーコちゃんのこと、よろしくね」

明るく切られた電話に、顔が熱くなった。

も~今はこんなことで喜んでる場合じゃないんだから!

キョーコに、ニッコリ笑いかけて、安心させるように腕を叩いた。





キョーコが、どうしても敦賀さんのところに戻りたくないと言うので、私の部屋に連れて帰った。

紅茶を用意して、泣き腫らしたキョーコに差し出した。

マグカップを包み込むように握りしめて、紅茶に口をつけるキョーコに、冷たく冷やしたタオルも手渡した。

「ここには誰もいないわよ。だから何があったか話してくれない?」

「も……いや……やめる……」

思い出したのか、キョーコの目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

「何があったの?」

肝心なことを聞こうとする度に、キョーコはイヤイヤと首を横に振った。

「話してくれないと、親友やめるわよ」

今のキョーコに、酷な言葉なのはわかっていたけど、何があったのかわからないと、対応の仕方も考えられなかった。

顔を歪ませて私を見つめるキョーコに、罪悪感が湧いてきた。

「どんなこと聞いても、嫌いになったりしないから、話してくれない?」

優しく声を掛けると、親友がしゃくりあげながら話しだした。

「敦賀……さんが……よそよそ……しいの……」

はぁ!?

一瞬理解できていなかった。

がっついて襲われるんじゃなくて、よそよそしい?

両想いになって、どうして?

「ずっと一緒に……いてくれるって……言ったのに……敦賀さんの『ずっと』は……私のとは違う意味だったの……」

敦賀さんと、キョーコの『ずっと』が、違う意味だったなんてあり得ない。

敦賀さんは、キョーコの記憶がなくなる前から、キョーコの事が好きだったのに……

どうして違う『ずっと』だったって思うのか、理解出来なかった。

「そんなこと、あるわけないでしょ?」

「だって!!」

キョーコの強い言葉に、怯んでしまった。

「『だって』何?」

「だって……敦賀さん……」

さっきとは違って、弱弱しくなるキョーコの言葉に、不思議に思った。

「敦賀さんがそう言ったの?」

キョーコは、首を横に振って否定した。

「じゃあ、何?」

黙り込んでしまった親友に、ため息がこぼれ落ちた。

あんなに「好きだ」ってだだ漏れな人の、どこをどう取ったら、“違う『ずっと』”だって勘違い出来るのかしら。

「どうして違う『ずっと』だって思ったの?何か理由があるんでしょ?」

「敦賀さん……私には……してくれないもの……」

「え?聞こえなかったわ。何て言ったの?」

「だから……してくれないの」

聞き返す度に、キョーコの顔が赤くなっていった。

恥ずかしいのか、声が小さくて聞き取れなかった。

「何?はっきりいいなさいよ」

キス……」

恥じらっている親友が口にした単語をやっと聞きとれて、私の顔も熱くなった。

敦賀さんとキョーコは両想いで、敦賀さんは、立派な成人男性だ。

一般の恋人同士が、致すことなんて、知識としては知っていた。

敦賀さんが、がっついてキョーコに迫って、怖がったキョーコが逃げ出したって言うならわかるけど、この間まで、王子様だとかこうのとりだとか口走っていたキョーコから、こんな言葉が出てくるとは思わなかった。

返事に困っていたら、キョーコが口を開いた。

「敦賀さんが……お仕事……なのは……わかる……けど……他の……女の人には……あんなに……優しく……微笑んで……抱きしめて……したりするのに……」

泣いて訴えるキョーコに、言葉が出て来なかった。

確かに、DARK MOONで、日本中を沸かせた嘉月を演じた敦賀さんには、あれ以来、恋愛物の仕事が増えている事は聞いていた。

俳優として、女優とのラブシーンなんてあくまで仕事だ。

だからといって、「仕事なんだから我慢しなさいよ」なんてキョーコには言いたくなかった。

TVの中で敦賀さんが見せる愛しげな笑顔は、キョーコを見つめているのを再現しているだけだと、敦賀さんの気持ちを知っている私たちにはわかる。

でも、キョーコにそれを伝える努力をしてない敦賀さんに、腹が立ってきた。

「私……魅力が……ないのかな?ぎゅ~って……して……欲しくて……不安……なんて……吹き飛ばして……欲しくて……近寄ったら……すって……距離とられて……」

やっと手に入れたキョーコを、こんなに不安にさせて……

あの、芸能界一のヘタレ男が!

「敦賀……さんは……記憶……がない……私の事が……可哀想で……色々……親切に……して……くれてた……だけ……なのに……私は……敦賀……さんに……好かれて……るんだって……誤解……しちゃって……たの」

そんなことないって言いたかった。

でも、私の言葉じゃ、キョーコが納得しない事もわかっていた。

「だから……敦賀……さ……んの……ところには……戻れないの」

キョーコが誤解している事はよくわかっているけど、言葉が見つからなくて、何も言えなかった。

「私……どこにも……行くところが……なくて……」

泣きじゃくるキョーコの背中を、優しく撫でた。

「私……弱いから……汚ないから……一緒にいたらいけないの。気付いてしまったから……戻れないの」

「マリアちゃんや、私のことは、頼りにならないの?あんた一人ぐらい、匿ってあげるわよ」

泣き疲れて眠ってしまったキョーコを寝かしつけると、携帯が鳴った。

誰だか容易に想像出来た。

「敦賀ですけど……」

「何か御用ですか」

話しを聞いたばかりで腹が立って、芸能界の先輩だというのに、つっけんどんな返事しか出来なかった。

「キョーコちゃんがまだ戻ってないんだ。携帯も持って出なかったみたいで……」

あなたのせいで、衝動的に飛び出したんでしょうねぇ。

「キョーコならここにいます。今夜は私のところに泊めますから、ご心配なく」

「そう……無事ならいいんだ……」

どこかホッとしたような声色に、無事を喜ぶ以外の感情があるような気がして、カチンときた。

「何事も無く、無事でいますから、安心して下さい」

「何事も無いって言うわりに、声が刺々しいね」

「敦賀さんが、キョーコを泣かせるからです」

「泣かせる?」

不思議そうに問われて、神経を逆なでされた。

「身に覚えがないとは言わせません!キョーコから聞きました」

「何もした覚えはないんだけどな……」

「ご自分の胸に手を当てて、よ~く考えてみてください。敦賀さんは何もしてないっておっしゃっても、それこそが問題だって思われないんですか?とにかく、しばらくキョーコは返しませんからそのおつもりで」

腹がたって、失礼とは思いつつも、一方的に通話を切った。

「モー子……さん?」

眠たそうに目をこすって見つめてくるキョーコに、優しく微笑んだ。

「大丈夫よ。敦賀さんのところには戻さないから、安心して眠りなさい」

私の言葉に、キョーコが嬉しそうに笑って、コテンと眠りについた。

つづく   

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