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君恋ふる44

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好きで好きでたまらなくて、視線さえも一人占めしたいと思っていた愛しい彼女と、やっと想いを通わせ合った。

彼女とずっと一緒にいることを約束して以来、二人きりになると、彼女はいつもそっと寄り添ってくれた。

必ずと言っていいほど、俺の手の届くところに座っていて、ただ台本を読んでいる時さえ、じっと俺の顔を見つめる彼女に、嬉しさが込み上げる。

彼女の視線の先にいる男は、俺だけだと。

いつも彼女が傍にいてくれる事が嬉しくて、これは夢なんじゃないかと思うと、彼女から目を離すことが怖かった。

目が合って、はにかみながらも嬉しそうに笑う彼女を見つめているだけで、幸せだった。

彼女を腕に抱いていても眠れるようになってから、彼女の記憶が戻る夢を見るようになった。

「卑怯者!」

夢の中で、記憶の戻った彼女が俺を罵っていた。

何度も夜中に飛び起きて、夢だとわかってホッとする。

彼女も夜中に泣いていて、怖い夢を見たと言う。

ぎゅっと抱きついて来て、どんな夢だったか覚えていないと言う彼女に、怖い夢なんて忘れて欲しくて、抱きしめる腕に力を込めた。

当たり前の様に彼女を腕に閉じ込めて安心する。

まだ大丈夫だ……

いつまでこうしていられる?

今日?

明日?

明後日には、彼女をこの腕に抱けないかもしれない。

そんな風に考えると、不安で堪らなかった。

この腕の中の温もりを手離すことなんて、出来るわけがない。

好きだよ……

だからずっと傍にいて。

俺から逃げて行かないで。

例え記憶が戻っても、ずっと俺の傍に……






彼女が、帰ってこない。

グラスにウィスキーを注いで、一気に喉の奥に流し込んだ。

喉が焼けつくように熱くなる。

テーブルの上に空になったグラスを置いて、疲れた身体をソファに投げ出した。

こんなはずじゃなかったのに……

誰よりも大切で、何よりも大事に腕の中で囲って守りたかったのに……

彼女がいないだけで、妙に部屋が広くて冷たく感じる。

ここにいるだけで、彼女が家庭の温かさを醸し出してくれていたんだと、今更ながら実感した。

『敦賀さんは何もしてないっておっしゃっても、それこそが問題だって思われないんですか?』

不意に琴南さんの言葉が甦った。

じゃあどうすればよかったと言うんだ!

彼女の望み通りにしろと!?

手を繋いだだけでも恥じらうのに、記憶のない今の彼女に、特別な関係になったからと、大人の関係を迫るつもりはなかった。

手を繋いで、抱きしめて……

それ以上進むと、彼女に手を出さない自信も無い。

何よりも大切で、誰よりも愛しいからこそ、悲しませたくもない。

寝ている時、無意識にすり寄って来る彼女が愛しくて、そっと額にキスをした。

ただそれだけで、心が満たされた。

こんなことで失いたくない。

「どうして私にはキスしてくれないんですか?」

ホントは、そう聞かれた時、彼女の望みだからと、自分の欲望のままに叶えようと思った。

引き寄せられるように目を閉じて顔を近づけた時、「卑怯者!」と、記憶を無くす前の彼女の声が聞こえた気がした。

彼女の記憶がないのをいい事に、何をしようと言うのか。

彼女の記憶が戻った時に、この事を知られたら、俺の存在が彼女の中から抹消されるかもしれない。

一度知ってしまったら、忘れられなくて、麻薬の様に妖しく俺を引きつけるだろう。

記憶を取り戻した時、俺の存在を抹消されないためにも、あの願いは叶えるわけにはいかなかった。

財布も携帯もこの部屋の鍵も、全てを置いて彼女は出て行った。

あんなに大事にしていたコーンさえも、バッグの中に残されているのを見て、それほどまでに嫌われたんだと思った。

例え彼女が俺を嫌いになったんだとしても、彼女は俺がコーンだとは知らないはずだ。

それならなぜ、コーンすら置いて行ったのか。

ただ、忘れたんじゃないのか?

今頃泣いているんじゃないのか?

キョーコちゃん、君を想うと、眠れないよ。

俺から去って行かないで。

コーンが、俺と彼女を繋ぐ細い糸の様な気がして、握りしめた。

お前も力を貸してくれ。

つづく

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