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続 はじめの一歩

きっかけは、些細な事。

彼女の楽屋に顔を出すと、彼女の携帯が鳴り出した。

俺たちに一言断って、電話に出る彼女を見守っていたら、彼女はいきなり口論を始めた。

電話の相手は、俺が最も彼女と接点を持って欲しくないと思っている不破だった。

傍で聞いていると、痴話げんかのようで面白くない。

だから無理矢理携帯を取り上げて通話を終了させ、彼女に交際宣言を迫った。

俺のものだと、不破に思い知らせたかったから……

さて…『愛情を持って接して叱る』って、どう言えばいいだろうか……

「敦賀さん、お願いですから」

泣きそうな顔で彼女が告げる。

「どうしてそう隠したがるのかなぁ」

そんな顔は見たくなかった。

彼女にそういう顔をさせているのは自分なのに、イラついてくる。

公表してしまえば、余計な馬の骨も労せず撃退できるし、不破も今のように彼女にちょっかいかけて来ないと思うのに、彼女は一向に首を縦に振らなかった。

「だって、まだお付き合いもはじめてそんなに経ってないじゃないですか」

「だから?」

俺にしたら、やっとokもらいましたって、叫びたいぐらいなのに。

「恥ずかしいんです」

「どうして?」

彼女は俺が好きで、交際をokしてくれたのか?

好きな人の事を「好きだ」と告げるのに、どうして恥ずかしいのか。

「だって、私なんかが…」

「それ、言わないでって、前にも言ったよね?」

「そんなこと言っても…」

『―――――ただダメだと怒るばかりでは、犬も飼い主を嫌いになるばかりです―――――』ふと頭をよぎり、こんな言い方じゃダメだとため息をついた。

「キョーコじゃないといらない。キョーコのこと愛してるから、世界中にだって叫びたい」

ホントの気持ちだから、俺は何度だって言える。

「ちょっと…敦賀さん?」

嘘偽りない気持ちなのに、どうして彼女はそんなに慌てるのか。

不意に、不安が押し寄せてきた。

「キョーコは、俺の事好きじゃないの?」

こんなこと、口には出したくなかったのに……

「なんで…」

「ずっと隠しておきたいだなんて、好きじゃないから言えるんじゃないかって、不安なんだよ」

まるで、捨てられた子犬の様な気分になってきた。

「敦賀さん?」

「先輩の言葉だから、逆らえないんじゃないかとか、キョーコが自分を卑下する度に、キョーコが公表したくないって言う度に、どうしようもなく、不安に駆られるんだ。女々しい奴だって、笑っていいよ」

「そんなこと思いません。どうしたら信じてくれますか?」

「不安なんて感じないぐらい、キョーコの愛で俺を満たして?」

俺の言葉に真っ赤になってうろたえる彼女が、可愛かった。

「約束して?キョーコの心の準備が整ったら、すぐに公表するって」

「それは勿論」

「だから、その証に、何か贈るから、いつも身につけてくれる?」

「そんなことしら…」

「大丈夫。薬指に指輪なんて言わないから。指切り代わりに、ね?」

「社さん、止めてください!」

楽屋の中で砂を吐きながら傍観していた社さんに、彼女が泣き付いた。

社さんは、小さくため息をついて言った。

「ねぇ、キョーコちゃん。ここは思い切って甘えたら?プレゼントしたら蓮も気が済むだろうし」

プレゼントに関しては、社さんが俺の味方をすることは少ない。

思いがけない援護射撃に、喜びが隠しきれなかった。

「とんでもないですよ!敦賀さんが選んでくれるものは、私には分不相応です!私のお給料で買えるはずのないものなんて持ち歩いてたら、変に勘繰られますよ」

「だからさぁ、時計とか、アクセサリーとか蓮に選ばせると高価なものを買ってくるじゃない?でも、携帯だったらどう?」

チラリと俺を見た社さんの目が“これぐらいの譲歩はしろよ?”と告げていた。

俺がプレゼントしたものだと、彼女が意識してくれて、仕事の合間にでも俺の事を考えてくれるきっかけになればよかった。

プレゼントしたものを、彼女が持ち歩いてくれる事が大事なんだから、持ち歩いてくれるなら、文句を言うつもりもない。

バッグとか時計とかアクセサリーぐらいしか思いつかなかったけど、携帯だったら、普通の高校生だって次々と新機種に買い替えているだろうから、彼女が新しいものを持っていたところで、特に目を引く事はないだろうな。

機械クラッシャーの社さんだからこそ、直ぐに思いついたんだろう。

「えっ?携帯?」

彼女も予想外だったのか、意外そうに呟いた。

「そう。キョーコちゃんのって、事務所の支給品でちょっと前のやつでしょ?最新モデルの携帯ぐらいなら、キョーコちゃんが持ち歩いてても変に勘繰られたりしないと思うよ?」

お揃いの携帯持っている人なんて、日本中にいるから、それこそ俺のも一緒にしても問題ないなぁ。

いい考えだと思った。

でも、どこかで他の人と区別をつけたいなぁ。

「携帯2つもだなんて、勿体無いです」

「だからさぁ、蓮からもらった携帯は、蓮専用」

「えっ?」

「他の人のアドレスは一切入れないっていうのはどう?思い切って、蓮とお揃いにすればいいよ。お揃いの携帯なんてたくさんあるんだから、誰も変に思わないよ。妙に高すぎる物は選ばせないと約束する。変にオリジナルの装飾もつけさせないよう、見張っておく。どう?」

ストラップだったら、携帯につけていても問題ないかな?

こっそり特注で頼んでも、彼女にはわからないだろうし……

「約束する。キョーコを困らせないって」

「それなら……お言葉に甘えます」

彼女はホッとしたように笑った。





後日、事務所からも新しい携帯が彼女に支給された。

「椹さんには適当に言っておいたから、お前も合わせておけよ?」

「何て言ったんですか?」

「キョーコちゃんが、いたずら電話に悩まされてるってな。椹さんもお子さんがいるから、すぐに対応してくれたよ。おまけにキョーコちゃんは、事務所からの支給品だからって、あまり人にアドレスとか番号教えてなかったからな。連絡も取りやすかったよ。新しい携帯は番号変わってるって、多分気付かないと思うぞ」

「ありがとうございます」

素直に社さんに頭を下げた。

「いいってことよ。担当俳優が仕事に集中出来るように、支えるのが俺の役目だからな」

これ以後、彼女の携帯に、不破から電話がかかる事はなかった。

はじめの一歩へ

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