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続 はじめの一歩 番外編その3

奏江

台本を読んでいる私の目の前では、さっきから親友が携帯を睨みつけていた。

身じろぎもせず、携帯を睨みつける親友が気になって、声を掛けた。

「いつまでそうやって睨んでるのよ」

私の声に、親友は驚いたように顔を上げた。

「電話をするならさっさと掛けたらいいじゃない。それとも私がいるから掛けづらいなら、席を外すわよ?」

「ううん。違うの」

親友は慌てて否定した。

「電話を掛けようと思っていたわけじゃなくて……」

その後はまた、物思いに沈んでしまったようだ。

この子がこんな風になるのって、どうせあの人が原因なんでしょうけど……

脳裏に浮かぶのは、芸能界一いい男の称号を持つ、先輩俳優。

私にしたら、芸能界一子供っぽい男の間違いなんじゃないかと言いたくなるわ!

この子との時間を奪われたと、女の私にまで嫉妬する人なんだから!

この子の一番は、何でも自分じゃないと気が済まないのかしらね~

「電話するわけでもないんだったら、どうしてずっと携帯を睨んでるのよ」

聞こえているのか、いないのか。

親友は黙ったままだった。

まぁ、話したくないものを無理に聞き出すのも悪いし、この子の性格上『電話を掛けたいから出て行って』とも言えないんでしょうね。

ちょっと席を外しに行こうと立ち上がったら、親友がいきなり叫んだ。

「ど~しよ~モー子さん。どうしたらいいの?」

親友は、縋るように見つめてきた。

突然の変わり様に、うろたえてしまう。

「も~何なのよ。急にそんなこと言われても、何の事だかわからないわよ」

「だって……どうしていいかわからなくて……」

助けを求められて、放っておけるはずもなく、イスに座りなおして親友を見つめた。

「ちゃんと順序立てて話しなさいよ。じゃないと聞かないから」

「いや~見捨てないでぇ~」

誰も見捨てるなんて、言ってないのに……

目に涙まで浮かべる親友に、ため息が零れ落ちた。

「だから最初から順序立てて話しなさい」

「えっと……あの……」

そうして親友はポツポツを話し出した。

馬鹿から掛って来た電話のせいで、敦賀さんに交際宣言を迫られたこと。

自分が捨てたくせに、今更何だって言うのかしらね。

指切り代わりにプレゼントを受け取って欲しいと言われたこと。

どんな理由をこじつけてでも、この子にプレゼントしたいのかしらね。

この子が負担に思うようだったら、何にもならないのに……

敦賀さんが選ぶものは高価なものが多いから、受け取れないと固辞したら、社さんの提案で、携帯ならどうかって言われたこと。

新機種の携帯持ってるからって、分不相応って事はないわよね。

ダイヤでも埋め込まれてたら怖いけど。

変にオリジナルの装飾もないなら、多少値が張るものだったとしてもしれてるし……

それでも突っ込んでくるようなら、事務所の支給品だって言ったところでバレやしないし。

さすが敏腕マネージャーね。

あの人の我侭も酌んで、キョーコも納得させるなんて。

「で、それが買ってもらった携帯?」

私の言葉に、親友は頷いた。

「よかったわね」

私の言葉に、親友は驚いていた。

「それだけ?」

他に何か言う言葉があるのかしら?

ちょっと考えてから口を開いた。

「そうね~強いて言えば、あの人がよく携帯ぐらいで我慢したわねってとこかしら?あの人、あんたの為ならお金を惜しまないじゃない。確かに常に持ち歩くものだけど、もっとこう所有権を顕わにするようなアクセサリーとかがいいってごねてもおかしくないのにとは思ったけど?」

「携帯ぐらいって……私知らなかったけど、これ、凄く高いのよ?知ってたら受け取ったりしなかったのに」

あの人は、プレゼントに使う金額が桁外れだからって言っても、ダメなんでしょうねぇ~

「いいじゃない。アクセサリーなんて贈られてごらんなさいよ。携帯代なんて比べ物にならないぐらいするのよ?くれるって言うんだから、素直に貰っておきなさい。どうせあの人には痛くも痒くもない出費なんだから」

「うっ…うん……」

歯切れの悪い親友が気になった。

「何よ。まだ何かあるの?」

「使用料もね、敦賀さんがもつって言うの」

自分との専用電話じゃなくても、喜んで支払いそうな人だけどね。

「いいじゃない、払ってもらえば。あの人にしたら、大した出費じゃないでしょうし」

私の言葉に、親友は顔色を変えた。

とんでもないって思ってるんでしょうね、この子は。

「あの人は、それだけあんたからの電話やメールが欲しいってことなんだから、早朝と言わず夜中と言わず、電話しまくってあげればいいのよ」

「でも……お疲れなのにお休みの邪魔しちゃうし……」

こうやって、相手を気遣えるのはこの子のいいところだけど、あの人はもっと甘えて欲しがってるんだと思うけどなぁ~

「あの人は、あんたになら睡眠の邪魔もして欲しいのよ。だからしてあげなさい」

「だって……」

「も~だってじゃないでしょ!私の言う事信じられないなら、あんたとの付き合いもこれまでね」

「いや~やめないで~モー子さん!」

「だったら深く考えずに、電話してあげなさい」

こうやって応援してるんだから、私に嫉妬するのは止めて欲しいわ!

「何を話したら……」

「何だっていいわよ。『声が聞きたかった』とか『おやすみの挨拶がしたかっただけ』とか」

「そういうの迷惑にならない?」

そんなに不安そうにしなくてもいいと思うのに。

「あんたに限ってならそういう心配しなくていいわよ」

「わかった。ありがとう、モー子さん」

悩みが解決したのなら、よかったわ。

この子の涙を見た時は、どうしようかと思ったんだから。

慰め方なんて知らないんだから、泣かれたら困るのよ。

「敦賀さんへのお礼って、どうしたらいいと思う?」

律儀と言うか、何と言うか……

「別にそんなもの望んでなんかいないと思うけど?あんたがいっぱい電話をかけたりメールを送ったりするのが一番のお礼になると思うけどね」

どうしてもって言うなら、この子にリボンかけて差し出すのが一番のお礼の様な気がするけど。

「だって……こんなに可愛いストラップまで付けてくれたのよ?」

ストラップねぇ。

まさか、ダイヤモンドのストラップなんて怖い事言わないわよね?

チラリと視線を送ってホッとした。

私が知らないだけだったら怖いけど、ダイヤモンドなんてことはなさそうね。

親友は目の前にストラップを掲げて、ニコニコと笑っていた。

そのストラップが宝石だったら、この子の笑顔も凍りつきそうよね。

物騒な事考えるのはやめておいた方がいいわね。

「よかったわねぇ」

次の瞬間、叫びそうになった。

じっくり見たら、そのストラップは四つ葉のクローバーの形をしていたから。

「あんた、四つ葉のクローバーの意味わかってるの?」

声を荒げたら、この子が変に思っちゃうわ。

普段通りに話そうとするのが、こんなに神経を使うなんて思ってもみなかった。

「幸せを運んでくれるんでしょ?」

知ってるわよって優しく笑う親友に、どんな顔をすればいいのかわからなかった。

確かに間違いじゃないけど……

「それくれた時、敦賀さんは何て言ってたの?」

「えっ……」

言い淀むぐらい気障な台詞でも言われたのね。

「『キョーコに幸せが運ばれるように』って」

はい、ごちそうさま。

聞かなきゃよかったかしら。

でも、敦賀さんがあれを知らないってことはないと思うのよねぇ。

絶対知ってて四つ葉のクローバーにしたんだと思うんだけど……

「ねぇ、敦賀さんの誕生日っていつだったっけ」

「え?どうしたの?急に」

「ん?キョーコがお返しを気にしてるから、誕生日が近いんだったら誕生日プレゼントを張りこんだらどうかなって思ったんだけど」

意味深に聞こえないわよね?

この子が知らなくて、あの人が知ってて贈ったんだったら、それをバラしたら恨まれるのはこっちだもの。

慎重に聞き出さないと!

「敦賀さんはね、2月10日なのよ。だからお誕生日はまだ先なの」

「そうなんだ。じゃあやっぱり頻繁に電話やメールしてあげるのが一番なんじゃない?」

口ではそんな事言いながら、自分の想像に確信を得て、顔が引きつりそうになった。

私は女優なのよ。

この子に動揺を悟られるわけにはいかないわ!

「それで気が済まないなら、あんたお得意の手料理でも振舞ったら?彼女の手料理を喜ばない男なんていないと思うもの」

「か、彼女……」

初心な親友は、真っ赤な顔をして机に突っ伏してしまった。

まるっきり、空気の抜けた風船のような親友に、仕事だからと言い置いて、ラブミー部の部室を出た。

廊下に出て、やっと深く息を吐き出した。

あ~緊張した。

2月10日ねぇ。

じゃあやっぱりあれ、敦賀さんの誕生石なんだわ。

エメラルドとかばれやすい緑の宝石使わないで、自分の誕生石使うなんて。

しかも四つ葉のクローバーだなんて、思いっきり『俺のものだ!』って主張してるじゃない!

「Be Mine」なんて花言葉の四つ葉のクローバーを、自分の誕生石に込めるなんて……

猫の鈴……ううん、あれはまるで犬の首輪ね!

あの人が込めた意味に、あの子が気付くのはいつなのかしらねぇ。

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