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掌中の珠3

これにはオリキャラが出てきます。

1へ

私より、6つも年下なのに、人目を隠れて声も出さずに泣いている。

大声で泣けばいいのに……

6つも年下なのに、声を上げて泣くことも許されない環境に置かれている姿を見るのが辛かった。

ごめんね……

泣きじゃくる背中に、心の中で謝る。

「……お……母……さ……いい子に……してる……から……迎えに……来て……」

かすかに聞こえた言葉に耐えられなくなって、その場を逃げ出した。





あの日に誓ったのよ。

どんなことからも、キョーコを守ると。

私には、そうする義務があるんだから。

頭をこつんと叩かれて、我に返った。

見上げると、鈴木さんが苦笑している。

「いい加減、何があったか話せ」

そう言えば、まだ話してなかったわ。

催促されて思い出した。

元より隠すつもりはなかったから、素直に口を開く。

「事情があって、キョーコは幼い頃から、知り合いの旅館に預けられて暮らしてたんです。一昨日マンションに返ると、その旅館の一人息子が上がりこんでいて」

「キョーコちゃんの彼氏が会いに来てたってわけか」

楽しそうにニヤつく鈴木さんに、カチンときた。

「あんな奴がキョーコの彼氏だなんて、とんでもない!あいつは疫病神なんです!あいつのせいで、キョーコはどれだけ泣かされてきたか」

私の剣幕に、鈴木さんが目を丸くしている。

「昨日キョーコを襲った犯人も、あいつですよ」

ホントに冗談じゃないわ!

あいつがキョーコの恋人だなんて、間違われるだけでも腹立たしい。

「キョーコと同じ年なんですけど、キョーコのことを『俺の奴隷だ』って周囲に吹聴して、キョーコに宿題をやらせたり、宿題だけならともかく、通学時には鞄や荷物を持たせたり、お小遣い巻き上げたり……」

そうよ、そのせいでキョーコは、ノートや鉛筆すら、買いたくても買えなかった……

「あいつがそんな態度とるせいで、キョーコは、幼稚園の頃からずっと同級生にいじめられて来たんです!」

ノートにいっぱい落書きされたり、ドロドロに汚れた服で帰って来たり……

「私がキョーコを引き取ることで、やっとあいつから引き離せると思ったのに……歌手になりたいと言って上京してきて……自力で頑張ればいいものを、私を当てにしようとするんですよ」

あんな奴の面倒なんてみたくもない!

顔を見るのも不快なのに!

「一晩だけ泊めて追い出したら、キョーコをつけて学校を突き止め、放課後にキョーコを呼び出して『もってるだけ全部金出せ』って言ったそうです。キョーコは学校にお金を持っていってなかったから、お金は取られずに済みました。その次は『金がないなら、マンションのカギを出せ』って言われたそうです。あいつに住んでるところもバレたから、マンションにはもう戻らないつもりで、キョーコのカギは私が持ってました」

今朝、キョーコから鍵を預かってなかったら危ないところだったわ。

「留守宅に、忍び入ることも出来ないとわかって、あいつは『携帯貸せよ』って言ったそうです。両親に電話するんだと思って、キョーコは素直に携帯を渡したそうです。それなのに、そのまま持って行こうとするから、キョーコは慌てて取りすがったそうです。『電話しないなら、返して』って言っても、知らん顔されて、携帯を取り戻そうととしたせいで、突き飛ばされて、その反動で携帯も飛んで行って壊れたって泣いてました。『お仕事の邪魔してごめんなさい』『一生懸命働いたお金で買ってくれた携帯を、壊してごめんなさい』って泣くんです」

キョーコは何も悪くないのに!

携帯を渡した時の、キョーコの嬉しそうな顔が忘れられない。

頬を染めて、大事にすると喜んでいたのに!

携帯なんていくらでも買ってあげるって言ってるのに、あいつのせいで、キョーコはずっと『ごめんなさい』を繰り返す。

気持ちが高ぶってきて、涙が浮かんでくる。

そんな私の頭を、鈴木さんはポンポンと、あやすように叩いた。

まるで小さな子供にもどったような気がする。

「何ですか?」

高ぶった気持ちのままだと、とげとげしくなってしまう。

気持ちを落ち着かせるように、呼吸してから問いかけた。

「安心した」

その一言に、カッとなる。

私が何か言うより先に、鈴木さんが言葉を続ける。

「ホントに20歳かと疑いたくなるぐらい、落ち着いてる奴だと思ってたからな。芸能人の雅としてはそれでいいけど。素の姫さんを殺す必要はないんだ。仕事のストレスも、貯めこむよりはそうやって発散する方がいい。怒る元気は、ある方がいいぞ。何もかも、一人で背負おうとしなくていい。今まで頑張ったな」

『出来て当たり前』としか、言われたことがなかった……

『頑張ったな』なんて言ってくれる人は、誰もいなかった……

「新しい部屋は、今までよりもっとセキュリティのしっかりしたところを見つけてやる。その代り」

ビシッと目の前に指をつき付けられて、何だろうと首をひねる。

「しっかり働いてくれよ。かなり家賃が高い所でも、ダメだと言わさないからな!」

鈴木さんの言葉に、笑ってしまった。

「はい!」

キッパリと返事をすると、「いい返事だ」と鈴木さんも笑った。

つづく  2へ

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