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掌中の珠5

1へ

「紹介しよう。孫のマリアだ」

おじい様に連れられて客室まで来たけど、庭で会ったのに挨拶もせずに逃げ出したから、バツが悪いわ。

「こんにちは、マリアちゃん。さっきは驚かせてごめんなさい」

おじい様の背中に隠れるように立っていたら、雅様の妹さんは気にした風もなく、話しかけて来た。

「ほぉ~もう会っていたのか」

おじい様は雅様の妹さんに返事をしながら、私の背中をそっと押した。

挨拶しなさいって言われてるのはわかるけど……

別に人見知りしてるわけじゃないわ。

タイミングを逃してしまったから、言いづらいだけで……

「はい、お庭で。見知らぬ人がいると驚かせちゃったみたいです」

「そうなのか?」

おじい様が私の顔を覗き込んできた。

ぎゅっとおじい様の服の裾を握りしめて、後ろに隠れる。

「ずっと会いたいと思ってたの。会えてうれしいわ。しばらくこちらでお世話になります。仲良くしてね」

私だって、とっても会いたかったのに……

雅様の妹さんだから、仲良くなりたかった。

「息子はアメリカにいてね、この家には俺とマリアしかいないから、遠慮はいらない」

「アメリカですか……寂しいですね」

会ったばかりなのに、私の気持ちを知ったかぶりされてるようで癇に障った。

「何が寂しいものですか!あなたに私の何がわかるのよ!」

私のこと、愛してくれないパパなんて嫌い。

私をおじい様に預けたっきりで、会いに来てもくれない。

仕事仕事って……パパには私より仕事があればいいのよ!

「マリア!」

「えっ、あの、ごめんなさい。私は笙ちゃん、姉がいないと寂しいから、つい……」

「あなたと私を一緒にしないでほしいわ!」

「甘やかしすぎたのか、時々手に負えなくてね。申し訳ない」

おじい様の態度が、余計に癇に障る。

「いえ、とんでもない」

「君には不快な思いをさせるだろうが、ここにいる間はこの子を無視しないでやって欲しい」

「そんな……私、ホントにマリアちゃんに会いたくて。笙ちゃんが妹のように思ってるって言うから、私は会ったこともないマリアちゃんを、ずっと妹のように思って来たんです。だから、無視したりなんて、あり得ません」

私に呪われたって、そんなことが言えるのかしらね。

「君に嫌がらせをするようなら、きつく叱るから、遠慮なく言って欲しい」

おじい様は孫の私じゃなくて、他人の肩を持つって言うの!?

イライラする。

いい子ぶってる雅様の妹さんにも、そんな人の肩を持つおじい様にも。

そして、素直になれない自分にも。

「大丈夫です。きっと仲良くなれます。だって、マリアちゃんも私も、笙ちゃんが大好きですから」

私がどんなに癇癪を起しても、なんとも思わないのね。

「欲しいものがあれば、何でも遠慮なく言って欲しい。不自由しないように、取り計らおう」

「ありがとうございます」

流れるような動作が、あまりにも綺麗で見入ってしまった。

そして机の下に転がってる人形が目に入る。

さっき挨拶してくれた時に、落したんだろうか。

凄いパワーを感じるわ……

こんなパワーが私にもあれば……

このパワーを貸してもらえたら、私の願いも叶うかもしれない。

私の視線に気付いた雅様の妹さんが、恥ずかしそうに人形を拾った。

「あ、あの、これはね。その……べ、べつに人形遊びをしてたんじゃなくて……」

うろたえる雅様の妹さんは、さっきより幼く感じられた。

「ほぉ~雅君にそっくりだな。どこで手に入れたんだ?」

おじい様も人形に気付いて、興味を持ったみたいだ。

「これは私が作ったんです」

雅様の妹さんが、このパワーの持ち主なの!?

ふと、庭で遭遇した時のことを思い出した。

庭の片隅で泣いていた。

寂しそうな目。

あぁ、あの目の持ち主なら、こんなに凄いパワーを持っていても不思議はないのかもしれない。

それにしても、雅様にあんなに慈しまれてる癖に、欲張りだわ。

「巧いもんだ。器用なんだな、君は」

おじい様の言葉に、雅様の妹さんは照れくさそうに笑った。

「いつも持ち歩いてると、笙ちゃんが一緒にいてくれるようで、心強いんです。マリアちゃんにもそういうものがあるんじゃないですか?例えばパパからもらったプレゼントとか」

パパからもらったプレゼントで思い出すのは、去年の誕生日プレゼント。

私の好みとはかけ離れた、おしゃぶりくわえた青紫の肌の、赤ちゃん人形。

娘の好みもわからないなんて、私のことはどうでもいいって証拠だわ!

「あんなもの、私が欲しがったわけじゃないわ!あんなものが心強いなんてこと、あるわけないじゃない!」

ふつふつと、怒りが湧き上がって来る。

「あんなものを喜ぶ人がいたら、お目にかかってみたいわよ!」

雅様の妹さんは、私の叫び声に一瞬びっくりして、穏やかに告げた。

「どんなものでも貰えるだけ羨ましいわ」

パパなんて……娘のことを何もわかってないパパなんて、羨ましがられるようなことじゃないわ!

「羨ましがるようなことじゃないわよ。私はパパに見捨てられてるんだから」

「ホントにそう思うの?」

「だって……ピアノの発表会にも、学校行事のイベントにも来てくれないし」

「お仕事忙しいのね」

「私のことなんて、どうでもいい証拠よ!」

自分で告げた言葉が、重くのしかかって来る。

そうよ……いつだってパパは、私のことをほったらかしじゃない。

「パパから来るメールだって、毎回書かれてる内容がほとんど変わり映えしないものだし。そんなメール、前のを写せば何分もかからないし、本人の手で送ってきてるかどうかもわからないじゃない」

「それでも羨ましいわ」

「どうして?手抜きもいいところじゃない」

「例え手抜きでも、パパからメールをもらえるマリアちゃんが羨ましいわ」

「あんなパパなんて、羨ましがられるようなものじゃないわ!欲しいと言う人がいるなら、熨しつけて差し上げますわよ!」

「それなら私にくれる?」

一瞬何を言われたのかわからなかった。

「マリアちゃんがいらないというなら、マリアちゃんのパパを私にちょうだい」

「どうして……」

「例え手抜きでも、パパからメールがもらえるなら、それだけで嬉しいし、パパからもらえるプレゼントなら、どんなものでも嬉しいわ。学校行事にも来てくれなくても平気」

「どうして?」

「だって私にはパパがいないもの。『パパ』って呼べる人がいるだけで嬉しいもの。だから、マリアちゃんがいらないなら、私にちょうだい」

パパのことをそんな風に言う人がいるなんて思ってもみなかった。

「どうしたの?いらないんでしょ?」

いらないって叫んでたはずなのに、「うん」って言えなかった。

「そんな勝手に……例え私が「いい」と言っても、パパが承諾するはずがないじゃない」

「どうして?マリアちゃんはさっき、パパに見捨てられてるって言ってたじゃない」

人の口から見捨てられてるとか言われると、自分で言うよりショックが大きかった。

「見捨てるとか……父親だったら娘を見捨てたりするはずないわよ!」

「どうしてそう思うの?」

頭の中は必至で言葉を探していた。

どうして私は見捨てられたりしないって言えるのか。

それを証明してみせないと、ホントにこの人にパパを取られるかもしれない……

あんなに凄いパワーを持ってる人だもの。

この人が望めば、叶わないはずがない。

「だって……だってパパは、1日に2回もメールくれるもの!」

「あら、毎回同じような内容なんでしょ?前のを写せば何分もかからないし、本人の手で送ってきてるかどうかもわからないって、マリアちゃんが言ったんじゃない」

「それでも、夜のメールが来る頃は、アメリカは真夜中なのよ!それに合わせて毎日メールを送って来るのは大変なんだから!それに、パパが自分のパソコンを他人に触らせる訳がないわよ!」

「そんなのわからないじゃない」

「わかるもの!」

「何がわかるの?」

何が……?

パパからのメールはいつも同じような内容で、簡単に覚えてしまえる。

学校はどうだったのかとか、友達と何をして遊んだのかとか、宿題は終わらせたのかとか。

いつもそんな内容で、だからパパをかばうようなことを言う、おじい様の言葉だって信じてなかった。

私は何がわかってるの……?

パパは私のことを知らない……でも、私だってパパのことを知らない……?

『愛してるよ』

パパからのメールの最後を締めくくられる言葉が、頭の中に浮かぶ。

そうよ……

「パパは……パパは私の事、愛してくれてるもの!だから、だから……パパが他人のものになることなんて、ないもの!」

パパ……パパ……ごめんなさい……

ずっとパパのこと疑ってた。

ホントはパパに愛されたかったのに、口に出して拒絶されるのが怖かった。

パパはいつも、私に『愛してるよ』って告げてくれてたのに、信じてなかった……

零れ落ちる涙を拭われるまで、自分が泣いてることに気付いてなかった。

雅様の妹さんは、私の前にしゃがんで微笑みかけてくれた。

「意地悪言ってごめんなさい。せっかくパパがいるんだから、誤解してるのがもったいないと思ったの」

「気付かせてくれてありがとう、お姉さま」

この時から、雅様の妹さんは、雅様に負けず劣らず、私にとってかけがえのない人になった。

つづく    4へ

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