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君恋ふる2

奏江

今目にした光景が信じられなかった。

芸能界一いい男の称号を持つ事務所の先輩俳優が、私の親友にひそかに心を寄せているらしいことには気づいていた。

そのご立派すぎる肩書きの割に、好きな女一人口説けないへたれな人だと思っていた。

だからこそ、親友が口にする言葉がくすぐったくて、恥ずかしくてたまらなかったから、話をそらすつもりと、へたれな先輩俳優に当てつけるように親友に近づく馬の骨の存在をほのめかしたのに、まさか、社さんも私もいる前であんなことを言い出すなんて………

そして、言われた内容をさらりと聞き流した親友にも驚愕した。

もしかして、さっきのようなやり取りは、私の知らないところで常に繰り広げられていたというのだろうか?

偶然遭遇したように見せかけて、顔を合わす度にあんなことを言われ続けていたというなら、さっきの親友の態度も納得できるものだけど、浮いた噂ひとつないあの先輩俳優が、そんな事をするようには思えなかった。

先輩俳優とそのマネージャーの足音が聞こえなくなってから親友に問いかけた。

「ちょっとあんた、今敦賀さんの告白をさり気なく聞き流したわね?」

「あら~だってあんなの私をからかって遊んでるだけでしょ?いつまでも敦賀さんのおもちゃにされてたまるもんですか!」

たちの悪いいたずらだと憤慨しているようだ。

「あんた、敦賀さんが遊びであんなこと言う人だと思ってるの?」

どうして親友がそんな風に思うのか不思議でならなかった。

「だって、敦賀さんにはちゃんと好きな人がいるもの」

答える親友の声は暗く沈んでいた。

だからそれはあんたのことでしょうにと思わずにいられない。

「私聞いたのよ?本人から」

「なんて聞いたの?正確に言いなさいよ」

親友は少しためらった後、話しだした。

「好きな人は高校生で」

「あんただって当てはまるじゃない」

高校生だと聞いて、どうして自分のことだと思わないのか。

番組の共演者ならともかくも、仕事を離れてまで自分以外に親しく言葉を交わす人なんて見かけたこともないだろうにと、あくまでも他人事の親友に呆れてしまう。

こんなこと周りがとやかく言うことでないのはわかっていたが、気の毒な先輩俳優のためにも言わずにはいられなかった。

「16歳だって言ってた」

「え!」

その一言は衝撃だった。

私も知らなかった親友の誕生日を把握していた先輩俳優が、この子の年齢を勘違いしてるとは思えなかった。

暴露話に嫉妬丸出しで、私の目の前であんなに真剣に告白しておいて、あの人の好きな女性が親友ではないなんて信じられなかった。

もしも親友の聞き間違いでないのなら、自分の見たものはなんだったんだろうと思わずにいられなかった。





あれから悶々と過ごしてしまった。

以前親友を脅して境遇を聞き出したことがあったから、あの子がこれ以上傷つくことがなければいいと思った。

不器用な私は慰め方なんて知らないんだから、あの子で遊んでるならやめて欲しいと心の中で先輩俳優を罵っていた。

その時件の先輩俳優が視界の隅に入ってきた。

自分が口出しすることでないのは百も承知だったが、どうしても物申さずにはいられなかった。

「敦賀さん、ちょっとあの子のことでお話があるんですけどお時間いただけませんか?」

先輩俳優を追いかけて、挨拶もそこそこに用件を切り出した。

「長くはお時間とらせませんので」

「社さん、ちょっとすみません」

あの子のことと一言告げたおかげか、多忙なはずの先輩俳優は、あっさりと時間をとってくれた。

「先に駐車場に行ってるからな~」

背後で社さんが叫んでいた。

いくら事務所とはいえ、人目は気になるし、話の内容も人に聞かせたくないものだったので、先輩俳優を人気ない階段へ連れ出した。

「あの子のことどう思ってるんですか?」

単刀直入に話を切り出した。

「君にそれを言わないといけないのかな?」

温和と評判なのが嘘のように、先輩俳優が威圧感を放って問いかけてきた。

私だって出来ることならこんなこと言いたくないわよ。

あの子のためにも、先輩俳優の威圧感に負けてる場合じゃなかった。

言いたい事を言いきってしまうためにも、負けじと先輩俳優を見据えた。

「弄ぶ気なら許しません。あの子のことは全部聞いてます。だからこそ、幸せになって欲しいんです」

「俺だってあの子の幸せを願ってるよ」

そう告げた先輩俳優は、先ほどまでの威圧感が嘘のように少し悲しげな笑みを浮かべていた。

自分には計り知れない事情というのがあるのかもしれない。

この人があの子を傷つけたりするような事がないのなら、それでよかった。

「本気なんですね?」

最後に一言聞いてみた。

「あぁ、好きだよ」

今この場にいないあの子を想っているんだろう。

目の前の先輩俳優は、この上なく優しい瞳をしていた。

「あの子が泣くのは見たくないんです。だから、その言葉信じますよ。それでは失礼します」

言いたいことだけ告げて、先輩俳優に一礼してその場を後にした。

先輩俳優の想い人がやっぱり親友だったことがはっきりして、悶々としていたのが嘘のように晴れやかな気持ちになった。

早くあの子が先輩俳優の気持ちに気付けばいいとそう思った。

1へ   つづく

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Re: さらです

いらっしゃいませ。楽しんで頂けましたか?そうおっしゃって頂けるとホッとします。ありがとうございますm(__)m
こんな拙い創作の続きを待って下さるなんて感激です〜(*T−T)頑張って続き書きますね。

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Re: おはようございます

いらっしゃいませ。
キョーコは原作でも鈍いので、あんな感じになるんじゃないかな〜と勝手に妄想しました。
うちでよろしければ、またいらして下さいませ。
リンクはフリーです。
うちみたいなところでもいいとおっしゃって下さる方であればご自由にして頂きたいと思います。
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