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君恋ふる3

キョーコ


自慢の親友が事務所にいることを聞いて探していた。

まさか、親友と尊敬する先輩俳優が人目を忍んで会っている場面に出くわすなんて思いもよらなかった。

先日の先輩俳優のたちの悪いいたずらは、自分の中に見過ごせない何かを残していた。

そのもやもやを晴らすように、楽しいことを考えようとして、大好きな親友を探していたというのに………

「好きだよ」

私にも時々見せてくれる、神々しくも甘やかな優しい笑みを浮かべて、先輩俳優は親友に告げていた。

敦賀さん………モー子さんのことが好きだったんだ………

敦賀さんはいつもモー子さんに会いに、ラブミー部の部室に来てたんだ………

ハードスケジュールの敦賀さんによく会っていたのは、そういうわけだったんだと、妙に納得できた。

親友も先輩俳優もその場を立ち去ったのに、壁にもたれかかって動くことが出来なかった。

自分でも意識していなかったのに、涙がどんどんあふれ出てきた。

どうしてこんなに辛いんだろう………

どうしてこんなに悲しいんだろう………

モー子さんがラブミー部を卒業するかもしれないから?

例えモー子さんがラブミー部を卒業しても、自分たちの絆が切れるとは思わないのに………

敦賀さん、あの時とっても辛そうに『ここで大事な人は作れない』って言ってたのに………

よかった

敦賀さんが幸せになるならそう思わないといけないのに………

どうしてよかったって思えないんだろう………

モー子さんなら敦賀さんとお似合いだと思うのに、どうして二人並んでる姿を想像したくないだろう………

無意識にポケットからコーンの入った小さなガマ口を取り出していた。

「大丈夫、大丈夫。私はもう恋なんてしないって誓ったんだから。私にはコーンがいてくれるから大丈夫。すぐに笑えるようになるんだから………」

何度自分に言い聞かせてみても、コーンは悲しい気持ちを消し去ってはくれなかった。



気がついたら屋上にいた。

あぁ、コーンの魔法が効かないのは太陽の下じゃないからだと思って屋上に来ていたんだ………

一体どれぐらいここにいたんだろう………

あたりはすでに薄暗くなっていた。

今日は仕事が入ってなくてよかった。

こんな精神状態で仕事をこなす自信がなかった。

いつかも敦賀さんに叱ってもらったけど、今はとても笑えそうになかった。

私には一流俳優になるなんて到底かなわない夢なのかもしれない………

敦賀さんを目標にずっと前を向いて走って行きたかったけど、自分の目標も消えうせてぽっかりと心に穴があいたような気がした。

敦賀さんは芸能界から消えたわけじゃないというのに………

ただ、モー子さんに告白してただけなのに………

そんなこと考えているとまた涙が出てきた。

こんな顔でだるまやに帰るわけにいかなかった。

部室に行って万一モー子さんに会った時、どういう顔をしたらいいかもわからない。

ここにいれば誰にも会うこともないだろう………

もう少し落ち着くまでここにいようと思った。

不意に背後で人の気配がした。

慌てて涙をぬぐったけど、泣いてる事を知られたくなかったから、振り返ったり出来なかった。

いつもなら誰も来ない屋上なのに、どうして誰にも会いたくないときに限って人が来てしまうんだろう………

「あれ?最上さん?」

今は会いたくないと思う筆頭の先輩俳優の声に、自分でも飛び上がってしまった。

顔を見られたくなくて、でも挨拶はしないといけなくて、俯いたまま振り向いて、いつものように挨拶をした。

「こんばんは、敦賀さん」

とてもいつものように、先輩俳優の顔を見ることは出来なかった。

だからずっと俯いていた。

「こんなところで何をしてたの?」

「ただの気分転換ですよ」

そう告げて、さり気なく先輩俳優に背中を向けた。

「なにかあったの?」

いつもカンの鋭い人だとは思ってたけど、今日だけは気付いてほしくなかった。

「何もないですよ?私がここにいたら変ですか?」

泣き声を悟られたくなくて、早口になってしまった。

いつの間にか自然に私の隣にいて、顔をのぞきこまれていた。

間近に先輩俳優の顔を感じて、思わず目をそらした。

「もしかして、泣いてたの?」

どうして私なんて放っておいてくれないんだろう。

そう思ったらまた涙が出てきた。

「悲しいことがあったの?」

そっと抱きしめられて、その胸に甘えてしまいたくなった。

自分にはそうされる資格なんてないのに………

あなたの優しさは残酷です。

心の中でそう告げたところで、聞こえるはずもなかった。

「辛いことでもあったの?」

我慢しようと思うほど、涙はとめどなく流れてきた。

こぼれ落ちる涙をその綺麗で長い指でぬぐわれたとき、思わず突き飛ばしてしまった。

一瞬敦賀さんの傷ついた顔を見て、後悔してしまった。

「ごめんなさい………」

私の謝罪に優しく微笑んでくれた。

そんな態度もとても辛かった。

あなたはどうしてそんなに優しくしてくれるんですか?

言葉で告げることが出来ない代わりに、敦賀さんの顔を見つめていた。

「こっちこそごめんね。びっくりさせちゃって」

優しいその言葉に、ますます涙がこぼれ落ちてきた。

「そんなに優しくしないで………」

ついこぼれ落ちた言葉に、過敏に反応されてしまった。

「ちょっと待って。どういうこと?最上さんが泣いてるのと関係があるの?」

居たたまれなくなって、屋上から逃げだそうとしたら、腕を掴まれた。

「離して下さい」

「離せない」

振りほどきたいのに、振りほどけなかった。

「モー子さんが誤解しますよ」

「琴南さん?彼女がどうかしたの?」

「隠さなくたっていいですよ。偶然聞こえちゃったんですから………」

「何を言ってるの?」

こんなにはっきりと昼間のことを話してるつもりなのに、どうしてわかってくれないんだろう。

言いたくなかったのに、言わざるを得なくなってしまった。

「『好きだよ』って………モー子さんに『好きだよ』って告白してらっしゃったじゃないですか」

敦賀さんは驚いて、私を掴んでいた手から力が抜けていた。

「だから、モー子さんが誤解するといけないから、もう私のことは放っておいてください」

その隙に、敦賀さんの手を振りほどいて屋上から立ち去った。

あんなことを言うつもりはなかったのに………

笑って『よかったですね』って言わなければならなかったのに………

親友が幸せになるのを祝福できないなんて………

いつもお世話になってる先輩俳優が幸せになるのを祝福できないなんて………

やり場のない、黒くドロドロとした感情が自分の中からあふれ出てくる。

醜い………

こんな醜い自分が嫌でたまらなかった。

こんな自分は消えてしまえばいい。

ここから消えてしまえば、二人が並ぶ姿を見なくてもすむ。

ここから消えてしまえば、二人に醜い自分を見られて嫌われることもない。

あぁ、お母さん、あなたは私の事を、こんなに醜い心を持つ娘だと見抜いていたんですね。

だから私は誰からも愛されなかったのか………

こんな醜い私だからコーンにも愛想をつかされたのか………

私はどこへ行けばいいんだろう………

私の居場所なんてどこにもない………

本当にこのまま人魚姫のように泡になって、私なんて消えうせてしまえばいいのに………

2へ   つづく

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