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君恋ふる4




愛しい彼女の親友に呼び止められ、彼女を弄ぶなと釘を刺されたその日の夕方、彼女に会いによった事務所で、求める姿はいつもの部室にはなかった。

仕方なく、一人になれる場所を求めて屋上に上がると、そこには愛しい彼女がいた。

「あれ?最上さん?」

彼女の背中から声をかけると、彼女は振り返って挨拶をしてきた。

「こんばんは、敦賀さん」

いつもと同じ挨拶なのに、どことなくいつもと違って感じるのは、君が俺の顔を見ようとしないせいなのか?

何故ずっと俯いたままなのだろう。

「こんなところで何をしてたの?」

「ただの気分転換ですよ」

彼女はそう告げて、俺に背中を向けた。

おかしい。

いつもの彼女なら、話をしてる相手に背中を向けたりしないはずだ。

「何かあったの?」

そう聞いてみたけど、彼女から返事があることは期待していなかった。

我慢強い彼女は、自分のことをあれこれと話したりはしない。

君がホントに辛い時、悲しい時、君の心を救ってくれる人はいるのだろうか?

いつもそう心配せずにはいられない。

演技の相談ならば、彼女は俺に頼ってくるけれど、演技に関係ない個人的なことは、無理に聞き出した時以外は、いくら親しいとはいえ聞いたことなどなかった。

もしかして、君はまたあの石――コーン――と話をしていたのだろうか。

「何でもないですよ?私がここにいたら変ですか?」

彼女は早口に告げる。

彼女の横に立って顔を覗き込んだら、涙の跡が見えた。

「もしかして、泣いてたの?」

「悲しいことがあったの?」

ねぇ、俺じゃ駄目なの?

君の支えにはなれないの?

彼女を慰めたくて、軽井沢の時のように、そっと抱き締めた。

「辛いことでもあったの?」

とめどなく流れ落ちる彼女の涙を指でぬぐっていると、突き飛ばされてしまった。

軽井沢の時は突き飛ばされたりしなかったのに………

「ごめんなさい………」

軽くショックを受けていると、彼女が謝ってきた。

「こっちこそごめんね、びっくりさせちゃて」

恥ずかしがり屋の彼女だから、抱き締められて涙をぬぐわれたことに驚いて反射的に突き飛ばしたのかもしれないと思った。

「そんなに優しくしないで………」

「ちょっと待って。どういうこと?最上さんが泣いてるのと関係があるの?」

好きな子に、『優しくしないで』なんて言われて冷静でいられるわけがない。

彼女が泣いてるのと何か関係があるのかと思うと、いてもたってもいられなかった。

駆け出そうとした彼女の腕をつかんだのも、事情を聞き出すためだった。

「離してください」

彼女が振りほどこうとするから、力を込めてしまった。

「離せない」

「モー子さんが誤解しますよ」

彼女の言葉に、頭の中でクエッションマークが飛び交ってしまった。

「琴南さん?彼女がどうかしたの?」

「隠さなくたっていいですよ。偶然聞こえちゃったんだから………」

彼女が何を言いたいのかわからなかった。

「何を言ってるの?」

俺にとって琴南さんは、愛しい君の親友というだけで、特別な感情なんてありはしなかった。

一挙一動で、俺を喜ばせるのも、俺を不機嫌にするのも、君だけだよ。

心の中でならなんとでも告げることが出来るのに、いざ君に告げようとすると、言葉が出ない。

「『好きだよ』って………モー子さんに『好きだよ』って告白してらっしゃったじゃないですか」

彼女の言葉に、あれを聞かれていたのかと驚いた。

思わず彼女をつかんでいた手の力が抜けてしまった。

「だから、モー子さんが誤解するといけないから、もう私のことは放っておいてください」

彼女はそう告げると、俺の手を振り払って駆け出して行った。

「俺が好きなのは君だよ」

姿が見えなくなった彼女に聞こえるはずもなかった。




あの日から彼女に会うことがなかった。

彼女は故意に俺を避けているんだろう。

どうしても彼女の誤解を解きたかったのに、彼女はその機会さえ与えてくれないというのだろうか。

彼女に会えない日が続いて俺はやきもきしていた。

席を外していた社さんが、慌てて撮影現場に飛び込んできた。

ちょうど休憩中だったこともあって、大きな物音も咎められることもなかったが、顔色の悪い社さんが気になった。

「蓮………落ち着いて聞けよ?」

「どうしたんですか?社さん」

普段とかけ離れた社さんの態度が不思議でならなかった。

「キョーコちゃんが階段から落ちて、意識不明で病院に運ばれた」

その言葉に、思わず立ち上がった拍子に、座っていた椅子を倒してしまった。

「すぐに病院に………」

仕事を放り出して駆けつけようとした俺を、社さんが止めた。

何故とめられるのかわからない。

「お前が行ってどうする。今のお前はただの事務所の先輩なんだぞ?」

社さんの言うことももっともだと思った。

ただの事務所の先輩が、後輩のお見舞いに仕事を放って駆けつけるのは明らかにおかしい。

例え俺が彼女を好きだとしても、俺と彼女は恋人でもないのだから………

俺が駆けつけることで、彼女に迷惑がかかってもいけない。

今の俺に出来ることは、ちょっとでも早く仕事を終わらせて、事務所で彼女の容体を確認することだと思った。

でも、どうしても彼女のことは気にかかる。

俺が社さんの顔を見つめると、社さんは何もかも心得た感じに頷いてくれた。

「俺がお前の代わりに行ってやるよ」

「お願いします」

社さんの好意に甘えて、仕事を必死でこなしていった。




仕事を終えて社さんに連絡を入れたけど、まだ病院にいるのか、携帯はつながらなかった。

仕方がないので、とりあえず事務所に向かった。

タレント部に向かったけど、椹さんも見当たらず、事情を聞けそうな人がいなかった。

一人でじっと連絡を待っているのも落ち着かなくて、自分でも気付かないままに先日彼女と出会った屋上に向かっていた。

まだ俺は彼女に何も伝えていないんだ!

お願いだから彼女をどこへも連れて行かないでくれ!

無意識に神に祈っていた。

こんなに彼女のことが心配なのに、ただの先輩の俺には、彼女のもとへ駆けつけることも出来ないなんて………

もしもこの先彼女に何かあっても、今と同じやるせない気持ちを持て余すだけなのか?

今すぐにでも彼女のもとへ駆けつけることの出来る特別な存在になりたいと思った。

その時携帯が鳴った。

慌てて出ると、社さんからだった。

「キョーコちゃんが目を覚ました」

その一言にホッとした。

緊張からとけたように、長い息を吐きだした。

「今から病院に来れないか?」

ただの先輩の俺には、そこへ行ける資格はなかったんじゃないのだろうか?

そんなことさえ考えなかった。

ただ、彼女のもとへ行けると思うと喜んでしまった。

まさか彼女があんなことになっているなんて思いもよらなかった………

3へ   つづく

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Re: No title

コメントありがとうございますm(__)m
衝撃でした?
すみません(^_^;)
だってどうしても3の最後の部分書きたくて、こんな展開にしてしまいました(^_^;)
今はこんな展開ですけど、最後はちゃんとハッピーエンドの予定ですので、お許しくださいませm(__)m
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