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素直になろう 後編

こないだ彼女に告白してから、どうやら避けられているようだ。電話をかけても出てくれない、メールを送っても返事が来ない、事務所ですれ違うことすらなくなった。明らかにおかしい。
居てもたってもいられず、彼女と話がしたくて「きまぐれ」の収録がある日を調べて、かつて坊と遭遇したあの場所でじっと待つ。
別に約束してるわけじゃないから、ここにいれば必ず会えるという保証があるわけじゃない。それでも坊の時ならば、俺と話をしてくれるんじゃないかと淡い期待を抱いていた。
この前はからかったんじゃないんだということを彼女にわかってもらいたい。
どう話せばわかってもらえるだろうかと考えを巡らせていたら、シンと静まり返ったその場所に、あの着ぐるみの足音が響き渡った。
来た!
顔を上げると、待ち焦がれた坊の姿があった。
「また落ち込んでるのかい?敦賀君」
まだ俺が坊が君だと知らないと思っているからだろう、ゆっくりと歩み寄ってきた。
「君か・・・」
やっと彼女と話が出来る。
第一段階はクリアしたことに、ホッとした。
「ため息ついちゃって。僕でよければ話を聞くよ」
そう、君は以前も俺の悩みを聞いてくれたね。
逃げないで、この前の告白はいい加減な気持ちでしたわけじゃないことを聞いて欲しい。君はラブミー部員だから、俺の気持ちを押し付けようと思ってるわけじゃないんだ。無理強いしたいわけじゃない。だた、知ってほしい。俺の嘘偽りない気持を。
「前に君には話したよね?『どこにいても大切な人は作れない』って」
そう、大切な人は作れないからと、心に鍵をかけてきたのに、君は容易にはずしていくんだ。
「うん」
「俺には幸せになる資格がないからそう思ってたんだけど、彼女のことがどんどん好きになっていって、自分でもどうしようもないぐらい好きで、彼女が他の男と仲良く話してるの見かけるだけで嫉妬して、マネージャーに『さっさと告白してこい』って言われちゃってね」
君は俺が嫉妬してることをわかってなかっただろうね。俺が不機嫌になるとすぐに気付くくせに、その理由は思い至らない。
俺は君を怖がらせたくないのに、君が他の男と話してるだけで嫉妬してしまう。
「彼女に告白したんだけど・・・」
はっきり「好きだ」と言ったのに、それでもわからないの?それともわからない振りをしただけ?
君に嫌われてはいないだろうと思ってただけに、あんな風に逃げられて、その後も避けられると落ち込むよ。
「告白したならうまくいったんだろ?こんなに落ち込んでるのは喧嘩でもしたとか?」
君が逃げたからだよ。
「いや・・・ふられたというか逃げられた」
なぜ逃げたの?そしてなぜ俺を避けるの?
「敦賀君に告白されてそんなことする女の子いるの!?」
君だよ・・・
「いるんだよ」
「僕には信じられないな~。もしかしてその子あんまりびっくりしすぎて本当だと信じられなかったんじゃないのかい?」
それは君の本心?
「わからない」
「もう一回告白してみれば?彼女だって敦賀君が本気で言ってくれてるって気づくと思うよ」
もう一回告白したら、ほんとに君はわかってくれるのかい?もう一回告白してまた君に逃げられたらと思うと・・・。君がどう思ってるかは知らないけど、俺は自分に自信なんてないんだよ。
「いや、もういいんだ。どっちみち俺には幸せになる資格がないんだし」
そう、俺には君に俺を受け入れてもらう資格なんてない。ただ、今までみたいに話せなくなるのはいやだったから・・・。ただの先輩としてでも、君の中に俺の居場所が欲しいんだ。
「そんなこと誰が決めたの?そうやって決めつけるのおかしいよ」
君が励ましてくれるの?
「過去に人を傷つけたことがある俺には幸せになる資格なんかないんだよ」
そうさ・・・こんな俺が幸せになろうなんて間違いだったんだよ。
「人を傷つけたんだったら謝って償えばいいじゃないか。誰も君に言わなかったのかい?」
本当にそうなんだろうか・・・。
「だったら僕が君に言ってあげる。『敦賀君、君は幸せになっていいんだよ』」
出口のない暗闇に、一筋の光が差したような気がした。
「ほんとに?」
本当に幸せになっても許されるんだろうか。君を手に入れる夢を見る事も許されるんだろうか。
「もちろんじゃないか」
君の言葉はまるで魔法だよ。君にそう言われると心が軽くなるよ。
「ほんとにもう一回告白したら、彼女は俺が本気だってわかってくれると思うかい?」
今度はもう逃げない?
「敦賀君に告白されて、断る女の子なんているわけないからうまくいくと思うよ」
好きだから不安なんだよ。ましてや君はラブミー部員だし。
「ありがとう。君に勇気をもらったから今なら言えそうだよ」
心を落ち着かせるために深呼吸をする。
「よかったよ、お役に立てて」
着ぐるみの中で今、君はどんな顔をしているんだろう。着ぐるみの君も可愛いけど、顔が見たいよ。
「俺は君が好きだよ。最上キョーコさん」
嘘偽りなく、君が好きだよ。
「え~~~~~!」
そんなに驚かなくても・・・・。でも今度はちゃんとわかってくれたってことなのかな?
「とりあえず、もうばれてるんだからその頭とらない?」
しばらく避けられ続けて会ってないんだし、早く顔を見せて欲しいよ。自分で取らないなら、力ずくでも取ってしまうよ?
「う・・・・いつから知ってたんですか?坊が私だって」
彼女はしぶしぶといった感じで頭を取ったが、バレてたことが気まずいのか俯いている。
「つい最近」
社さんに教えてもらってたから、今日ここで君を待ち伏せすることが出来たよ。
「からかったんですか?今の話も」
なんでそうなる・・・。もう一回告白したら本気だってわかってくれるんじゃなかったの?
「今の話は全部ほんとのこと。君が俺以外の男と話してるとこ見かけるだけでおかしくなしそうなほど嫉妬もする。自分でもどうしようもないぐらい君が好きだよ」
彼女は黙って俯いている。
何も言われないからどんどん不安になって、彼女の顔を覗き込んだら、彼女は静かに涙を流していた。
「え?なんで泣いてるの? 俺からの告白・・・そんなにいや?」
そんなに俺は嫌がられていたのか・・・?
嫌われてはいないと思ってただけにショックを受けた。
「・・・これはいやで泣いてるんじゃありません」
いやじゃない?ほんとに?
人気はないとは言え、ここはまだ局内。泣いてる彼女の姿を誰かに見られないとも限らないから場所を変えた方がよさそうだ。
「とにかく着替えてきて。送っていくから」
彼女は大人しく着替えに向かった。




社さんは気を利かせて先に帰ってくれていたので、彼女を助手席に座らせて車を走らせた。
「俺は本気だよ」
二人きりになった車の中で唐突に会話を再開した。
君は俺のことをどう思っているの?君の気持ちを聞かせて?
「私怖いんです。私の中の敦賀さんがどんどん大きくなっていったら、今よりももっと敦賀さんに依存してしまいそうで。そしたらきっと敦賀さんは私が重たくなって・・・・私敦賀さんに嫌われちゃったら・・・敦賀さんにまで捨てられちゃったら・・・きっともう立ってられない・・・」
彼女は言葉を選んでいるのかポツリポツリと話してくれた。
不破~お前のせいで!
俺の心の中にドス黒い感情が生まれる。
彼女を怖がらせないようにしたいのに、俺の怒りはしっかり受信してしまったようで、隣からすすり泣きが聞こえてくる。
「俺は君が『うん』と言ってくれたら『離してくれ』って言われても離すつもりはないよ」
あぁ、泣かせてしまってごめんね。君に怒ってるわけじゃないんだよ。
運転してるから彼女の顔が見れない。
「敦賀さんは私のこと全部知ってるわけじゃないでしょ?私のこと全部知られたら絶対嫌われちゃう」
俺は不破とは違うんだよ?俺のことを嫌っていないならそれをわかってくれないか?
全てを不破と一緒にされたくない。
「なんでそう思うの?」
俺はほんとに君が大切で、好きなんだよ?
「だってお母さんだって私のこと嫌ってるのに・・・」
そう言えば、彼女がこんな風に愛される事に臆病になった原因は不破だけじゃなかったな・・・。
「俺だって俺の全部を君が知ったら、君が逃げていくんじゃないかと思うよ」
今まさに君は俺に怯えているだろう?ごめんね。
でも、この怒りはまだ治まりそうにない。
「そんなこと・・・どんな敦賀さんでも全部あなただから、私が敦賀さんから逃げるなんてありえません」
それは本当?
「そんな保証どこにもないよね?」
いじわるな言葉でごめんね。でも、君に不安があるように、俺にだって不安はあるんだよ?
「絶対逃げません!私の気持ちなんだから私が保証します」
嬉しい事を言ってくれるね。
「俺だって同じことだよ?俺の気持ちなんだから、どんな君だって嫌ったりしないって保証するよ」
不安も二人でなら乗り越えられると思わない?
いつも彼女を送ってくる場所についたので車を止めた。
「君が好きだよ」
彼女の目を見詰めて言った。
誰よりも君が大事だよ。
「私もです」
ポツリと彼女が告げたその一言に胸が熱くなった。
「君が『もうやだ』って言っても離さないから」
絶対離さない。
「ずっと傍にいさせてください」
俺には手に入れられないと諦めかけていた何より大事な存在を今確かに掴んだ。
異性に慣れてない彼女を怖がらせないようにそっと抱きしめた。



 * * *



「敦賀さん、坊が私だってこと黙っててごめんなさい」
彼女が腕の中でポツリと呟いた。
「謝らなくていいよ」
「でも、言い出せなくて結果騙す形になってしまって・・・」
彼女はひどく気にしているようだ。
「最初から騙すつもりでいたわけじゃないだろ?だから気にしなくていいよ。それに坊には助けてもらったしね」
彼女に微笑みかけたのに、彼女は浮かない顔をしている。
「でも・・・」
君がそんなに気にするのなら、俺も君に内緒にしてたことを打ち明けよう。
「それに俺も君に黙ってたことはあるし」
「え?」
彼女が不思議そうに見つめてくる。
告げる事は勇気がいるけど、ためらってる場合じゃない。
「随分かわってしまったからわからないかな?キョーコちゃん。妖精じゃなくてごめんね?」
「え?」
彼女は何を言われたかわかっていないようだった。
「あの石をずっと大事にしてくれてありがとう。嬉しかった。俺のこと覚えてくれてたのも嬉しかったよ。ありがとう」
彼女に微笑みかけた。
「うそ・・・まさか・・・そんな・・・」
彼女は驚きに目を見張っている。
「驚くのも無理ないよ。俺だって君があの夏の日の女の子だとわかったときは驚いたしね」
そう、ほんとに君があのキョーコちゃんだってわかったときは驚いたよ。
「コーン?」
彼女の呼びかけに頷いて見せた。
「だって、目も髪も色が違う・・・」
「目はカラーコンタクト。髪も染めてるんだよ」
「ほんとにコーンなの?」
彼女の目にみるみる涙があふれてくる。
「そうだよ。キョーコちゃん」
「どうして・・・どうして言ってくれなかったの?会いたかったのに。ずっと会いたかったのに。私のことわかってたならどうして言ってくれなかったの?」
彼女が俺の胸を叩く。
「ごめんね。キョーコちゃん。あまりにも昔の俺と変わってしまったから言い出せなかったんだよ」
そう、俺のこと妖精だと信じてる君が可愛くて、本当のこと知ってがっかりするんじゃないかと思うと言い出せなかった。
「どんなに変わってても、私にとって大事な人にはかわりがないのに」
そう言ってくれて嬉しいよ。
「泣かないで?」
そっと彼女の涙をぬぐってやった。
「会いたかったの。ずっと会いたかったの。よかった・・・・私が好きになった人が、私の大事な人でよかった」
彼女が小さく呟いた。
「ありがとう」
そんな彼女が愛しい。
「昔はだめだって言われたけど、これからは『キョーコ』って呼んでいいのかな?」
俺にとってはとっても重大なことだったから、確認せずにはいられなかった。
「はい」
彼女はまぶしいぐらいの笑顔で俺を見つめてくれた。
「コーンの石を持ってたら、いつかきっとまた会えると信じていたんです。私の好きな『シンデレラ』は、王子様がシンデレラを間違えないようにガラスの靴を持ってたけど、私にとってコーンの石は、王子様を間違えないための【ガラスの靴】だったんですね」
彼女の言葉に舞い上がり、きつく彼女を抱きしめた。

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