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恋すちょう

後編
「やめてください。嫌です。離して」
振りほどこうとしても振りほどけない蓮の手に、キョーコは怖くなった。
「言えないような相手なの?」
なおも蓮はキョーコに迫った。
「言えるわけありませんよ」
ついポロリと本音を口にしてしまったキョーコは、自分の言葉に青ざめた。
「ほら、やっぱりいるんだ、好きな人。本当にいないなら『言えるわけない』なんて表現使わないよね」
キョーコに想い人がいる事実が判明したために、蓮はますますやり場のない嫉妬に身を焦がした。
蓮の中で、いけないとどこかで止めようとする自分と、それがどうしたと報われない自分の想いにやけになりそうな自分がせめぎ合っていた。
「い、いないから言えるわけがないんです・・・・・」
キョーコは言い逃れしようとした。
キョーコにしてみれば、今の後輩という居心地のいい居場所までなくなる恐れがあるから、蓮に責めたてられても言えるはずもなかった。
「既婚者でないなら問題ないんじゃないの?」
自分の嫉妬で目がくらみ、キョーコの内心がわからない蓮は、ただキョーコを責めることしか出来なかった。
「どうしてそんなに問い詰めるんですか?敦賀さんには関係ないことですよね?」
普段のキョーコであれば、先輩へのあまりの言い草に真っ青になって土下座せんばかりの勢いで謝っただろう。でも、なぜ蓮がここまで執拗に大魔王と化して自分を責めるのかわけがわからないから、自然と口調もきつくなってしまっていた。
「俺の大事な後輩が、誰かに騙されてるんじゃないかと心配してるんだよ?君に相応しいか吟味してあげる」
「そんなことして頂く必要はありません。どんな人かっていうのは私がよく知ってます」
キョーコにとって蓮は、最初は意地悪だったけど、困ってるときはいつも助けてくれた人。芸能界のトップを走り続ける俳優なのに、どこにも気取ったところのない人。世間で取りざたされている見た目でひかれたわけではなかった。思わず目を奪われてしまったのは、圧倒的な演技力。心ひかれたのは、大人な考え方。あこがれたのは、どんなに熱でフラフラになっても、自分の好きなことに目一杯打ち込んでいる姿。ときめいたのは、優しい笑顔。空も飛べるほど身軽になれた魔法の呪文をキョーコにくれた人。
蓮と出会ってからのやりとりを思い出し、自分の思考にどっぷりとつかり、恋する乙女そのものの表情を見せるキョーコに、蓮は切なくなっていた。
「騙されてないとは限らないんじゃないの?」
「たとえ騙されててもいいと私が言ったら?」
その一言に、蓮はそこまでキョーコが相手を想っていることに気づき、かなう事のない自分の想いに絶望した。
ドアの向こうではそんな二人のやりとりを聞いたマリアが「蓮様はお姉様がお好きなのね」と呟いて、これ以上は聞いていられないとばかりに走り去って行った。
マリアちゃんにまでばれるなんて・・・・・と社は思わず天を仰いだ。
一方奏江は、あんな小さな子にもわかるのに、どうしてあんたは気付かないのよと焦れていた。

お互いに口に出来ない想いを抱えて、二人は見つめあっていた。
先に耐えられなくなって目をそらしたのは蓮だった。
「まだ君が傷つく事になるんじゃないかと心配なんだよ」
いい人ぶった自分の言葉に吐き気がしそうだと思っても、蓮は言わずにはいられなかった。
「だから心配して頂く必要はありません」
キョーコはきっぱりと言い切った。
「どうしてそう言い切れるの?」
「その人にはちゃんと好きな人がいるんだから・・・・・」
「君が想いをよせているっていうのに、そいつは君以外の人に目を向けてると?」
自分がこんなに恋い焦がれている彼女の想いに気付きもせず、他の女性に目を向けているというキョーコの想い人が蓮には許せなかった。
今目の前にそいつがいたら、キョーコの代わりに殴ってやるのにと蓮は思った。
「だから敦賀さんが心配されるようなことは何もないんです」
敦賀さんにとって私はただの後輩なんだから、放っておいてくれたらいいのに、とキョーコは思った。
優しくされればされるだけ、蓮への想いが募って断ち切れない。
「そんなやつを想うことなんてやめればいい」
どうか俺の想いに気付いてくれ、と蓮は祈らずにいられなかった。
「ひどい!どうしてそんなこと言うんですか」
想いをよせる相手から「そんなやつやめろ」と言われて、キョーコは傷ついていた。
「君だけを見つめてくれる相手と幸せになるべきだよ」
「敦賀さんが決めることじゃないでしょ?私のことです。もう放っておいてください」
「放っておけない。君だからこそ心配してるんだ」
ドアの向こうでは社が、「そこで『好きだ』と言えよ」と呟いていた。
そして奏江は「いい加減気付きなさいよ」と呟いていた。

「ホントに心配してくれなくて結構です」
「君は頑固だな」
もうキョーコには限界だった。これ以上隠し立てしてても、蓮が放っておいてくれないなら、今の後輩という居心地のいい居場所を捨ててでも想いを吐き出して、未練を断ち切ってしまえとやけになった。
「心配なんて・・・・・してもらう必要ないのに・・・・・。私があなた以外の誰を好きになるって言うんですか!満足ですか、これで!だからもう放っておいてください。ただの後輩としての居場所だけでも欲しかったのに・・・・・。一人にしてください」
思いもよらない告白に、蓮は喜ぶと同時に動揺していた。
「ごめん。君を追い詰めるつもりはなかったんだ」
そして、自分がキョーコに告げた言葉に蓮は落ち込んだが、こんな自分を好きだと言ってくれたキョーコを思わず抱きしめていた。
「離して下さい。一人にしてください」
告げるつもりのなかった気持ちを打ち明けてしまい、キョーコは蓮の顔が怖くて見れなかった。
「そんなこと出来ない」
そう言って蓮は離さないとばかりに、キョーコを抱きしめる腕に力を込めた。
「じゃあ私が出ていきます。だから離して下さい」
蓮に好きな人がいることを知っていたから、蓮を困らせたくなくて言いたくなかったのに、結局困らせるようになって、キョーコは蓮を恨まずにいられなかった。
「ここにいて。俺の腕の中にいて」
「どうして・・・・・どうしてこんなに優しくするんですか。突き放してくれた方が楽なのに」
あなたの腕の中にいられるのは私じゃないのに・・・・・そう思うとキョーコは胸が痛くなった。
そんな権利ないくせに、困らせて嫉妬して、キョーコは自分がいやになった。
「そんなこと出来るわけないだろ?やっと俺の想いが通じたって言うのに」
思いがけない蓮の言葉に、キョーコは何を言われたのか理解するのに時間がかかった。
「え?」
思わず蓮を見つめると、蓮は神々しい笑顔を浮かべてキョーコを見つめていた。
「俺も君が好きだよ」
「うそ・・・・・だって、好きな人がいるって・・・・・」
キョーコは呆然としていた。
「どうしてそれを知ってるのかわからないけど、それ君のことだから。ずっと君が好きだった」
「ほんとに?」
信じられなくて、キョーコの言葉は震えていた。
怖くて辛くて流していた涙が、今度は嬉しくてあふれてくる。苦しいぐらいに抱きしめられて幸せだとキョーコは思った。
「君だけを愛してる」
ドアの向こうでは社が「よかったよ~二人がまとまって」とうれし泣きをしていた。
一方奏江は、「私の親友を泣かせないでくださいよ」と呟いて、そっとその場を後にした。

前へ  おわり
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