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君恋ふる5

マリア


その知らせが入ったのは、たまたま事務所で椹のおじさまとお話している時だった。

話を中断して電話に出た椹のおじさまは、顔色をかえて慌てていた。

電話の相手の方の声は聞こえなかったから、どんな話かわからなかった。

ただ、お姉さまに何か起こったという事だけは理解が出来た。

椹のおじさまは、おじいさまに連絡すると、すぐに病院に向かうと言われた。

「お願い、私も連れて行って」

じっと待ってることなんて出来そうになかった。

必死でお願いすると、椹のおじさまは力強く頷いて、私を伴ってくれた。




ベッドに横になっているお姉さまを見たとき、涙がこぼれ落ちそうになった。

不吉なことを考えてはだめだと思うのに、不安が止まらなかった。

久しぶりに見たお姉さまは、明らかに様子が変わっていた。

一体お姉さまに何があったというのだろう………

「お姉さまはいつからこんな風に様変わりなさったの?」

意識のないお姉さまから返事なんてあろうはずもなかった。

「こんなに憔悴してるなんて知らなかった………」

椹のおじさまも、お姉さまの親友のモー子さんも驚いているなんて………

「こんなにお姉さまが憔悴しているのに、誰も何も知らなかったの?」

自分にそれを責める資格があるなんて思ってなかった。

私だって、お姉さまがこんな様変わりなさっているのをずっと知らなかったのに………

いつもお姉さまは私に優しくして下さるのに………

こんなに憔悴してるお姉さまに何の力にもなってあげれなかったなんて………

自分の無力を嘆いているのは、私だけではなかった。

モー子さんだって、握りしめた手が、力が入りすぎて白くなっていた。

椹のおじさまも言葉もなく俯いていた。

お姉さま、早く目を開けてくださらない?

マリアはお姉さまのためならなんでもします。

誰がお姉さまをこんな目にあわせたというの?

マリアに教えて下さらない?

ベッドに横たわるお姉さまの手を取って、そっと握りしめた。

その時肩を叩かれて、振り向くとおじい様が立っていた。

思わずおじい様にしがみついて泣いてしまった。

みんな我慢しているというのに、私には涙を止めることが出来なかった。

いつの間にか社さんも駆けつけていて、椹のおじさまと小声で何か話していた。

社さんもお姉さまの憔悴しきった顔に驚いていた。

こんなにもお姉さまを心配しているのに、誰もお姉さまの変化に気づいていなかったというのだろうか………

たまらなくなって、泣き叫んでしまった。

「お姉さま、お姉さま、お姉さま!お願い、目を開けて下さらない?マリアを見て!お姉さま!」

寝ているお姉さまを揺さぶっていたら、おじい様に止められてしまった。

「お願い………お姉さまを助けて………」

その場にいる人の顔を見渡すと、みんな俯いていた。

モー子さんも涙がこぼれてきたようだった。

「どうして?誰もお姉さまを助けれないの?社さん、蓮様は?蓮様はどこにいらっしゃるの?いつもマリアのお願い聞いてくれる蓮様なら、お姉さまを助けてくれるかもしれないわ」

社さんに取りすがったら、おじい様に抱きとめられてしまった。

「マリア。最上君が心配なのはみんな一緒なんだよ。蓮も仕事が終わったらここへ駆けつけてくるだろうから、今は疲れてる最上君を休ませてあげなさい」

おじい様の言うとおりにお姉さまを休ませてあげるべきなのはわかっていた。

ただ、このまま目が覚めないんじゃないかという不安が重くのしかかってきて、おじい様の言葉に頷けなかった。

「お姉さま!お姉さま!お姉さま!」

「マリア!」

おじい様に大きな声で名前を呼ばれて、驚いてしまった。

それ以上お姉さまを呼び続けることが出来なくて、ふらふらとお姉さまの傍らに立って手を握りしめた。

早く目を開けて私の不安なんて笑い飛ばして欲しかった。

その時、お姉さまの瞼がかすかに動いたような気がした。

ハッとしてお姉さまの顔を覗き込んだら、かすかに声を上げてお姉さまの目が開かれた。

「お姉さま!」

さっきまで不安で涙が止まらなかったのに、お姉さまが目を開けてくれて嬉しくて涙が次々とこぼれ落ちてきた。

お姉さまの周りにみんなが寄ってきて、順番に顔を覗き込んでいた。

「目が覚めたかね?具合はどうだ?」

「最上さん、大丈夫か?」

「キョーコちゃん心配したよ~」

「気分は悪くない?」

おじい様も、椹のおじさまも、社さんも、モー子さんも、お姉さまに声をかけた。

私はずっとお姉さまの手を握りしめていた。

「ここどこ?」

不安げにお姉さまが聞いてきた。

「最上君は階段から落ちて意識がなかったから病院に運ばれたんだよ」

おじいさまが簡単に説明した。

「どうして?」

おねえさまはすごく不思議そうだった。

「覚えてないのかね?」

おじい様の問いかけに、お姉さまは微かに頷いた。

「階段を駆け下りてきた子役の男の子とぶつかって、そのまま階段から落ちたそうだよ」

椹のおじさまが事情を説明した。

「そう………ですか………」

「キョーコ、気分は悪くないの?」

モー子さんの問いかけに、お姉さまはきょとんとしていた。

お姉さまはみんなの顔を見渡して不思議そうにしている。

お姉さまが目を覚ましたというのに、私の中には新たな不安がうまれてきた。

「お姉さま?」

小さく呼びかけたら、お姉さまは私を見てくれたけど、その瞳はまるで初対面の人と会っているようなそんな感じがした。

「キョーコ?」

問いかけに返事を返さないお姉さまに、モー子さんが訝しげに呼びかけた。

「キョーコちゃん目を覚ましたばかりだし、まだ意識がはっきりしてないんじゃ?」

社さんはそう言ったけど、私は不安が大きくなって、自分でも気付かないままに震えていた。

「誰?」

あまりにも衝撃すぎて、立っていることが出来なくなった。

気付いたら私は病室にへたり込んでいて、それはモー子さんも同様だった。

私はおじい様に、モー子さんは椹のおじさまに介抱されていた。

「お姉さまは私のことを忘れてしまわれたの?」

おじい様は辛そうに頷いた。

「おじい様のことは覚えて下さってるの?」

おじいさまも椹のおじさまも社さんも辛そうに俯いていた。

「おじい様!」

「マリア………最上君は記憶をなくしているようだ。ここにいる人だけじゃない。全部忘れてしまっているんだよ」

おじい様のその言葉に、自分の中で何かがプッツリと切れたような気がした。

「お願い、おじいさま。蓮様を呼んで。蓮様はマリアのお願い何でも聞いて下さるもの。きっとお姉さまの記憶も蓮様が取り戻して下さるわ。蓮様を呼んで、おじいさま」

「マリア………蓮は医者じゃないんだよ?」

おじい様の言葉なんて耳に入ってなかった。

「蓮様を呼んで」

ただ、それだけを繰り返した。




泣き疲れて眠いっていたようで、目を覚ました時には、蓮様がお姉さまの寝顔を見ていた。

「蓮様………」

いつもなら抱っことおねだりするのに、今日はそんな気分にならなかった。

蓮様はとても辛そうに私を見ていた。

「蓮様は、お姉さまがこんなに憔悴されているのをご存じでしたの?」

「俺も知らなかったからびっくりしたよ………ちょっと前に会ったときは、琴南さんが載ってる雑誌を楽しそうに見ていたのに………」

蓮様の隣に寄り添ってそっと手を握ると、蓮様も優しく握りしめてくれた。

「お姉さまとお話はされましたの?」

「少しね」

「なんてお話しされましたの?」

「気分が悪くないか聞いただけだよ」

「そうですの………誰もお姉さまを救って差し上げることは出来ないのかしら………」

繋いだ手から、お互いのやるせなさがさまよっているように感じた。

4へ   つづく

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