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君恋ふる7




「誰もお姉さまを救って差し上げることはできないのかしら………」

マリアちゃんの言葉が胸に痛い。

彼女の記憶がなくなって、誤解を正すことも出来なくなったけど、何も覚えてないというのなら、最初の出会いからやり直そう。

今度はちゃんと彼女の支えになれるように。

彼女の心を救える存在になれるように。

眠る彼女の顔を見ながら、自分にそう誓った。





彼女にとってただの先輩でしかない俺は、あれから病院にお見舞いに行くことも出来なくなった。

彼女と俺のお互いの立場を守るために。

彼女をスキャンダルに巻き込みたいわけじゃないから、顔を見たいのもぐっと我慢した。

一日も早い彼女の回復を願って、次に会える日を心待ちにしていた。

マリアちゃんから送られてくる、彼女の様子を書いたメールには、身体の方は異常がみられないとのことだった。

その知らせに、ホッと胸をなでおろした。

退院した彼女は、社長の自宅に引き取られた。

記憶がないために、日常生活にも支障があるらしい。

彼女にとって今は何もかもがわからないことだらけのようだ。

そんな彼女の様子を見て、社長は彼女の記憶喪失による休職をマスコミに報告した。

彼女が階段から落ちたことは、場所がテレビ局だったこともあって、既に報道されていたし、療養中とするには、いつになったら回復するかもわからないということで隠さずありのままに報道してもらうことになったようだ。

昨日きたマリアちゃんからのメールでは、彼女は日常生活は徐々に困らなくなってきたらしい。

以前彼女と作ったことのあるお菓子を作ったんだと、作ったお菓子を写メールで送ってきてくれていた。

料理上手な彼女のことだから、キッチンに立っていると自然と身体が動くのかもしれない。

いつかまた彼女のおいしい手料理をごちそうになる日が来るのだろうか。





彼女が退院してしばらく経ったころに、マリアちゃんから呼び出しのメールがきた。

時間が取れる時に事務所によって欲しいという。

彼女に何かあったんだろうか。

不安にかられながらも、社さんにスケジュールを確認して事務所を訪れた。

マリアちゃんは空いてる会議室の1つにいるという。

言われた会議室に入ると、琴南さんもその場にいた。

「敦賀さんが来たし、もう話してくれるんでしょ?」

マリアちゃんはコクリと頷いて俺たちを見まわして言った。

「お姉さまを助けて欲しいんですの」





マリアちゃんの話によると、彼女はおとついから事務所でラブミー部としての仕事をしているらしい。

彼女が記憶喪失なのは知れ渡ってるから、事務所内の雑用に限られているそうだが、彼女に同情する感じで言いよる男が絶えないらしい。

記憶喪失以前に使ってた携帯は、オートロックのナンバーがわからないためにほぼ使用不可能らしく、その代わりに新しい携帯が支給されたらしい。

マリアちゃんがオートロックのナンバーを決めて彼女に携帯を持たせたら、おとついの晩から彼女にひっきりなしに電話がかかるようになったとか………

話を聞いているうちに、記憶がないのに、何をやってるんだと苛立ってきてしまった。

俺の顔色を窺がいながら社さんが言った。

「それってキョーコちゃんが携帯の番号を教えて回ってること?」

「そんなことありえませんわ」

マリアちゃんは即座に否定した。

携帯の番号を教えてなくて、どうして知らない番号から電話がかかってくると言うのか。

その矛盾にイライラしてしまった。

「お姉さまは携帯の使い方がわかってらっしゃらないの」

「それでどうして知らない番号から電話がかかるわけ?」

琴南さんも同じ考えなんだろう。

どうも腑に落ちない。

「携帯の使い方がわからないキョーコちゃんの番号が、どうして人に漏れるわけ?」

社さんも聞いた。

「わからないからですわ」

マリアちゃんの説明の方がわからなかった。

「どうしていいかわからないから、近くにいる人に聞いてしまわれるんですの。その時にお姉さまのナンバーが控えられちゃってるみたいで………赤外線を使えばすぐに登録出来てしまいますし………」

唖然としてしまった。

それなら不可抗力というものだ。

彼女に非があるわけじゃない。

「今のおねえさまは、人を疑うことを知りませんの。知らない番号からお姉さまに電話がかかるようになって、どなたかに携帯を貸したか聞きましたら、いろんな話が聞けましたわ」

そしてマリアちゃんは、彼女のことを話してくれた。

マリアちゃんが、自分と社長の番号を登録した携帯を彼女に持たせてすぐ、彼女は事務所で人とぶつかって携帯を落としてしまったらしかった。

「お姉さまとぶつかった方も心配されたようで、すぐに壊れてないか確認してくれと言われたそうです。使い方のわからないお姉さまは、途方に暮れられて、その方にどうすればいいか尋ねたそうですわ」

彼女の上目づかいに落ちたであろうその男の心境が、手に取るようにわかった。

「他にも、『俺の携帯充電切れてたから貸してくれない?』とか、『今キョーコちゃんの携帯なってなかった?確認した方がいいよ』とかお姉さまにおっしゃった方に携帯を渡して、オートロックのナンバーを教えてしまわれたそうですの。勿論、お姉さまが馬の骨にさらわれるようなことになっては嫌ですから、番号非通知だと着信拒否にしたんです。それで、表示された番号を全部着信拒否にしたら………今度は事務所からかかってきてしまって………事務所からの電話まで着信拒否にするわけにいかなくて………だから困ってるんですの」

彼女のために一生懸命になってるマリアちゃんに、笑みがこぼれた。

「あの子は今どこにいるの?」

琴南さんが聞いていた。

ここに彼女の姿がないから気になった。

「今は椹のおじさまについててもらってますわ」

以前とどれぐらい違うのかは見てもらった方が早いからと、マリアちゃんは彼女を呼びに行った。

マリアちゃんがいなくなってから、社さんと顔を見合わせてしまった。

「なんか妙なことになってるみたいだね」

社さんがため息とともに言った。

記憶喪失以前から、彼女を狙ってる馬の骨がいることは知っていたが、記憶喪失になってもっと馬の骨が増えたということだろうか。

マリアちゃんは彼女を助けてくれという。

一体どうやって助けるというのだろう………

自分の思考に陥っていたら、マリアちゃんが彼女を伴って戻ってきた。

会議室に入ってきた彼女を一目見て驚愕した。

社さんも琴南さんも同じように目を見張っている。

彼女は慈愛にあふれた瞳で、マリアちゃんに微笑みかけていた。

その姿は、不破のPVで見た天使そのものだった。

今の彼女は、愛したくも愛されたくもないラブミー部員には到底見えなかった。

「お姉さま、モー子さんと社さんと蓮様ですわ。今ここにいる人はお姉さまが信頼して下さって大丈夫ですわ」

マリアちゃんの言葉に、琴南さんがチラリと俺を見た。

琴南さんにしたら、俺さえも要注意人物だと言いたいのだろう。

そんな様子に苦笑せずにはいられなかった。

「久しぶりだね、最上さん」

彼女に声をかけると、不思議そうに見つめ返された。

「蓮様、お姉さまは『キョーコ』と呼んで差し上げて。名字で呼んでもわからないようですの」

申し訳なさそうにマリアちゃんが言った。

「ごめんね」

言われるまでもなく、そういうことに気づかなければいけなかったのにと落ち込んでしまった。

名前で呼ぶことにまだ抵抗があったので、ちょっとためらってしまった。

「蓮様?」

マリアちゃんを真似てそう呼んだんだろう。

首をかしげて俺を呼ぶその姿は、とても愛らしかった。

「なんて呼び方してるのよ!そんな風に呼んでるとスキャンダルになるわよ」

琴南さんが叫んだ。

「モー子さん」

彼女は無邪気に微笑んでいた。

その彼女の笑顔に、琴南さんが赤面していた。

隣で社さんが、眼鏡をかけなおしていた。

信じられないのは俺も一緒ですよ。

心の中で呟いた。

「お姉さまが一日も早く記憶を取り戻されるように、お姉さまが妙な馬の骨に連れ去られないように、助けて欲しいんですの」

マリアちゃんは真剣な顔でそう告げた。

マリアちゃんに頷いて見せた。

それは社さんも、琴南さんも同様だった。

6へ   つづく

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Re: No title


いらっしゃいませ。
コメントありがとうございますm(__)m
嬉しいお言葉ありがとうございましたm(__)m
そうなんですよね〜
私も来週が待ち遠しいんですが、ドキドキしてますよ。
君恋頑張って書いてますので、よろしかったらまたいらしてくださいませm(__)m
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