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君恋ふる8




マリアちゃんに頼まれたからと言って、すぐにどうこう出来るものでもなかった。

勝手に彼女をふらふら連れて行く事なんて出来ない。

社さんは、椹さんや社長と相談して、彼女を事務所の外に出す日を決めていた。

彼女が事務所で雑用をこなしているなら、事務所に来れば彼女に会えるかもしれないと、時間がある時には頻繁に事務所に寄るようになった。

ラブミー部の部室を覗いたけどお目当ての彼女は見当たらなかったので、仕方なく人気のない場所を求めて屋上に向かった。

仕事柄仕方ないとはいえ、四六時中人の視線を向けられているから、たまには息抜きに人気のない場所をふらふらするのが俺のストレス解消にもなっていた。

屋上に出ると、先客がいることに気付いた。

「キョーコちゃん?」

そこには愛しい彼女が立っていた。

声をかけると振り向いて以前と変わらぬ礼儀正しい挨拶をしてくれた。

「こんにちは、敦賀さん」

彼女は無邪気にニッコリと笑った。

その姿は、遠い夏の日の彼女を思い出させた。

「こんなところで何をしてるの?」

自分のことは棚に上げて彼女に問いかけた。

事務所中のアイドルと化している彼女が、人気のない場所にいるのは危険だというのに。

「何って………探検でしょうか?」

首をかしげてそういう彼女はこの上なく愛らしい。

他の男の前でそんなことすると君が危険だよ?

以前から自分のことには無頓着だった君だけど、今の君を狙ってる馬の骨は事務所だけでも数多といるのだから、もっと警戒してくれないと………

危ない目にあってからじゃ遅いんだよ?

力ずくでこられたら、君がいくらあがいても男にはかなわないんだからね。

ほんとに、目を離せないと言うマリアちゃんの言葉がしみじみと実感できた。

それでも君には人の汚い部分なんて気づいて欲しくないとも思う。

こんな風に思うのは君には侮辱に感じるかな?

「宝物は見つかったかな?」

心の中とは正反対に、明るい口調で聞いてみた。

彼女はぼんやりと辺りを見回して、一点で視線を止めた。

彼女の視線を追うと、そこには虹が出来ていた。

「きれい………」

彼女が吐息とともに呟いた。

事務所についたときには降っていた雨がやんで出来たのか。

彼女と一緒に虹を見ながら聞いてみた。

「あの虹が宝物ってところかな?」

彼女はキョトンとして俺を見つめた。

その澄んだ瞳に釘付けになった。

「そうかもしれませんね」

小さく笑って彼女が言った。

そしてまた彼女は虹を見つめた。

彼女の横顔に見とれてしまう。

今にも消えてしまいそうで、ホントに妖精のようだ。

「あの虹の向こうに、妖精の国があるのかな?」

メルヘン好きな彼女が喜びそうなことを聞いてみた。

「妖精の国?」

彼女は不思議そうに俺を見つめていた。

今は以前のようなメルヘン思考じゃないのかなと思いつつ告げた。

「記憶をなくす前のキョーコちゃんならそう言いそうかなって」

俺の言葉に、彼女は悲しげに微笑んだ。

その悲しそうな顔を見て、何か彼女の気に障る言葉だったんだろうかと心配になった。

「そこへ行けたら、こんな感情もなくなるのかな………」

ポツリと呟かれたその言葉に、胸を突かれた。

今まで自分が歩いてきた道を振りかえった時、突然道が消えていたら人はどう思うだろうか。

今立っているこの場所さえも消えてしまうんじゃないかと不安になるだろう。

彼女もそんな風に、何も覚えてない自分に不安を抱えているんじゃないだろうか。

記憶をなくす以前も、今も彼女が安心して泣ける場所はどこにもないのかもしれない。

そう思うとたまらなくなった。

せめて俺の前では無理をして欲しく無かった。

「ねぇ、キョーコちゃん。辛い時は我慢しないで泣いていいんだよ?辛い時は辛いって言っていいんだよ?少なくとも、マリアちゃんも、琴南さんも、社さんも、椹さんも、俺も、そんな君をみたからって嫌がったりしないよ?」

俺の言葉が彼女の心に届けばいいと思った。

彼女は俺をじっと見つめて、そしてポロポロと涙をこぼしだした。

そんな彼女をそっと抱き締めて慰めた。

彼女を怖がらせないように。

彼女の強張った心を解きほぐすように。

彼女の涙が自然と止まるまで優しく彼女を抱き締めて、髪をなでた。




「すみません」

しばらくすると、涙も止まったのか、照れ臭そうに笑って俺を見上げてきた。

「謝る事はないよ。俺のハンカチでよかったらいつでも貸してあげるからね?」

彼女を見つめて冗談めかしてそう言うと、ボッと音が出たかのように、彼女の顔が真っ赤になった。

こういうシャイなところは変わらないらしい。

そんな彼女が愛しかった。

腕の中から彼女のぬくもりが消えたことを寂しく思いつつ、頬を押えて去っていく彼女を見送った。


7へ   つづく

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Re: No title

は〜い、蓮頑張ってますよ〜
頼めば蓮なら貸してくれるんじゃないでしょうか?
そう思われませんか?
続きも頑張って書きますね。
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